2014年のオープンイノベーションを振り返る会 vol. 1


HACKATHON OF THE YEAR 2014の番外編として,日本最大級の開発コンテストMashup Awards(MA)10で出会った3人が「2014年のオープンイノベーション」について,高円寺「なんとかBar」で話しました(2014/12/11).

右:安本 匡佑(大学教員):VISTouchで優秀賞
中:ふうたりすと(個人事業主):抽選カンパでTwilioイケTEL賞とKampa!賞
左:五十嵐康伸(会社員):E2D3 ver. 0.2 (Excel to D3)でマイクロソフト賞

2014年,どうでした?

五十嵐:今晩は,進行の五十嵐です.今日のテーマは「2014年のオープンイノベーション」です.MA10でご活躍された安本さんとふうたりすとさんのお二人から意見をもらいたいと思います.まずは,今年参加されたハッカソンについてご意見お願いします.

安本:実は私,2014年のハッカソンには一回も出てないんですね.MAを最初知ったのは,大学内部の会議.一人の先生が以前から出していて「学生にも出させて下さい,一位は賞金200万です」って.会議そっちのけで,出してみようかなと妄想し始めました.そして,その時期に開発していた「VISTouch」をMAに出すことに決めたのです.VISTouchは,導電体の専用ケースを使って複数の携帯デバイス(例えば,スマホとタブレット)を動的かつ立体的に連携させられる仕組みです.

ただ,私の作品は正当なやりかたではない.なぜなら,APIを一つもつかっていないから.始めは「ハードウェア(HW)部門賞」を狙っていたのですが,HW部門賞は〆切が他の賞よりも早くて出せなかった.そうすると残る大きな賞金は優秀賞か最優秀賞しかない.だから,優秀賞を取れて本当によかったです.

ふうたりすと:私も,2014年は一回しかハッカソンには出ていません.4月に行われたTwilioのハッカソン(Smart Communication Award2014)です.ウェブ系でチーム開発の経験が無いので、チームビルディングが必須でないTwilioのハッカソンに参加しました。

MAには一昨年から応募し始めました.去年のMA9で企業賞を頂いた会社の社長が声をかけて頂き、現在私のアプリ開発を支援してくださっています.今年のMAに出したのは「抽選カンパ」含め6作品です.

「抽選カンパ」は何も実装していない段階でアイデアだけを投稿したんですね.なのに,企画を評価頂き投稿資料だけで「TwilioイケTEL賞」に選ばれてしまった.だから,受賞の連絡から2次審査でプレゼンするまでの1週間で作り上げました.プレゼンで無事動いて本当によかったです.

安本:私は出ていませんが,8月には武蔵美GameJam福島GameJamがあったんですね.1月にはGlobal Game Jamがあって毎年出たいけど,教員をしている大学の入試と被ってでられない.Global Game Jamは48時間でゲームを一本Playableなレベルにまで仕上げる,世界同時のデカイイベントで,お勧めです.

作品とは? そしてアートとは?

五十嵐: MAの作品には面白いものがありましたか?

安本:面白いものは沢山ありました.ただその一方,新しいHWを使ってやりましたっていうネタも多かった.使っているHW以外に目新しさがない.私は東京藝術大学の大学院にいたのですが,そのときの先生に怒られてよく言われたことは「それは技術デモだろ!作品を出せと言っているのに言っているのに,なんでデモなんだ.デモって言っているからダメなんだ.作品を作れ!」.だから,10年後,使っている技術が当たり前になっても価値が有るような作品を私はつくりたいと思います.

五十嵐:安本さんのVISTouchはアート作品ですか?

安本:VISTouchはアートではない,要素技術.MA10にアートっぽいものはなかったように思えます.でも,作品はあったとは思う.作品というのは,作者の手を離れて1人歩きしたモノであり,批評されるもモノ.作品という言葉も重い言葉なのであまり気軽に使える言葉ではないですね.

五十嵐:アーティストハッカソン3331α Art Hack Day 2014ではアーティストと技術者が一緒に作品を作っていました.アーティストと技術者が一緒に作品を作ったらアート作品になるのでしょうか?

安本:それは1960年代にあったArt & Technologyという運動で古い.そのころベル研究所がコンピュータを使ってアーティストと作品を作っていた.作品の仕組みとしてはシンプルなものが多い.人が通ったら光がつくとか.ただこういうのは,技術的な目新しさがなくなった今でも作品として残っている.

MA Hack!

五十嵐:私はアートについて全く勉強していないのですが,アートは好きです.どうやったらハッカソン参加者のアート性を高められますかね?

安本:そもそも日本ではアーティストという意味が違う意味で解釈されている.道端を歩いている人に「好きなアーティストは?」と聞くと,歌手の名前をあげることが多い.

五十嵐:今の日本の「アート」は「芸」という意味になっているのかもしれませんね.

ふうたりすと:MAの全作品に名指しでアートレベルをつけてランキングするのは?

五十嵐:MAの作品を全部,メディア芸術祭にエントリーするのはどうでしょう?

安本:メディア芸術祭にエントリー料は無料です.MAの全作品を自動的にメディア芸術祭にエントリーするソフトを開発しましょうか.そのソフト自体もメディア芸術祭にエントリーする.

五十嵐:逆もありですね,メディア芸術祭の全作品をMAにエントリーするソフト.ただ,人に迷惑をかけるのはあまりよくない.善意の形でうまくハッカソン参加者のアート性を高められないですかね?

ふうたりすと:そもそもMAの芸術性は高いのに,我々の感受性が低くて分かっていないだけの可能性もある.

安本:ヨーロッパにおける芸術作品の評価は,その人がいままでどういう作品を作ってきたかというバックグラウンドも重視される.だから,一見シンプルに見えるものでもその奥に深みというか,バックグラウンドや時代背景を鑑みて鑑賞すると結構すごいと思える作品も多い.

五十嵐:MAに申し込むためには,42.195km走らないとダメというのはどうでしょうか?頭をすっきりさせることで,出来上がる作品が全く変わるのでは?

ふうたりすと:MAにアート部門賞を作る!

五十嵐:アート部門賞を作るにはMA事務局に払うスポンサー料が必要ですね.Crowd foundingしましょうか?

安本:アート好きで,金があるところに頼みましょう.

ふうたりすと:高須クリニックですかね.

安本:アート系のCrowd foundingはINDIEGOGOがお勧めです.

五十嵐:では,来年のMAにはアート部門賞を作ることを我々の目標にして,「2014年のオープンイノベーションを振り返る会 vol. 1」は終了したいと思います,ありがとうございました!

(撮影:大川 香世子)

おまけ

店が混んでいて窓からトイレに行くふうたりすとさん.