データサイエンティストになるための(一変数)複素解析入門-第二回-


コーシー・リーマンの関係式

定義

前回の話は正則性についてお話ししました.
今回はコーシー・リーマン関係式からお話しします.
まずは,定義を書くと,
$f(z)=u(x,y)+iv(x,y)$ (3)
に対して,
$\frac{\partial u}{\partial x}=\frac{\partial v}{\partial y}$,$\frac{\partial u}{\partial y}=-\frac{\partial v}{\partial x}$ (4)
のような式をコーシー・リーマンの関係式という.

ただし,ここで$u,v$は$z=x+iy$の実部と虚部を構成する実数から構成される.

性質

コーシー・リーマン関係式が成立し,かつ,$f(z)=u+iv$が全微分可能であることは$f(z)$が正則であるための必要十分条件である.
必要性と十分性の証明は様々な教科書やネット上の記事に譲るとして,ここではこれぐらいで次の章に移る.

複素積分

複素積分の定義

複素積分の定義は複素平面上の二点$(a,b)$に関して,
$\int_a^bf(z)dz$という線積分で与えられる.
もちろん,$a,b$をひっくり返せば$-$が全体に付くのは初等解析の場合と一緒である.

一つの疑問

さて,察しのいい読者ならここで気づくと思われるが,
$(a,b)$の間で線積分を行うとき,その途中経路はどうなっているのだろうか.
今までやってきた積分というのは直線上の軸の上で積分を行うので,区間を二つ定めれば積分区間は自ずと決まった.しかし,複素積分は複素「平面上」,すなわち,二次元平面において二点間を定めて積分を行う,
ならその途中経路(積分を行う区間のこと.今回の場合,$a$と$b$を結ぶ線)は無数にあるではないか!?
そして,無数に経路があるなら,答えも無数にあるではないか!?
積分を行うと無数に答えがある?
このおかしな事実,もちろん誤りがあるのですが,どこが誤っているのか.
次回まで考えてみてください.

次回は今回の解答とコーシーの積分公式からはじめます.