チームに「こうなってほしい」を実現する


今年度に入ってから、我々のチームは自己組織化が進み、チームとしていかにして目標を達成するかを考えながら動くようになってきた気がします。その中で、私がエンジニアリングマネージャーとしてチームに「こうなってほしい」と考えたことがどうやって実現したのかについて語りたいと思います。

きちんと体系化せず、自分の想いだけで書くのでポエムと思って読んでいただければ幸いです。

課題例

かつて私がチームに「こうなってほしい」と考えたことの例を一つ挙げてみます。

企画者がある機能の要件を検討し、開発者がそれを実装するシーンを思い浮かべてみてください。企画者は詳細に要件を検討したつもりでしたが、どのようなエラーケースがありえるかをすべて洗い出すことはできておらず、いくつかのエラー時のUI表示に関する要件を決めきれていない状態で開発者に実装を依頼しました。企画者は実際に開発を行うわけではないので、このようなことはしばしば発生すると思います。しかし、実装者は要件定義されていないエラーケースがあることに気づきながらも、その部分は適当な処理にして実装を完了させました。リリース後、そのエラーケースが発生した際のUIを目にした企画者は、これはUXを大きく損なうものだと気づき、頭を抱えました。

このようなことがしばしば発生していたので、私は開発者に、企画者が検討した要件に抜け漏れがあった場合には、素晴らしいUXのプロダクトをユーザーに提供するために、企画者に報告をし、もし更に可能なら、こういう要件・仕様にしたらどうかという提案をしてほしいと考えました。

どうやったら「こうなってほしい」が実現したか

結論から書いてしまうと以下のようなことをしたところ「こうなってほしい」が実現したように思います。

  1. なりたいチーム像を共有する
  2. なりたいチーム像になるための望ましい行動をチームメンバーがしたときに感謝の意を示す
  3. どうしたら、なりたいチーム像に近づけるかをチームメンバーと話す
  4. チームみんなで感謝し合う

感謝って大事。本当に。
人間の原動力です。

具体的にどうやったかを一つずつ説明します。

1. なりたいチーム像を共有する

タイトルの通りなのですが、自分が考えている、なりたいチーム像を思う存分チームの前で語ります。思っているだけでは伝わらないので、ちゃんと言語化して伝えるのが大事。

例えば私は以下のようなことを語りました。

  • このチームが結成されている目的はなにか
  • 目的を達成するためにチームとしてどうあるべきか

「このチームが結成されている目的はなにか」はインセプションデッキの質問の1つと同じです。チームが同じ方向を向いて開発を進めるために語ります。

最初に挙げた課題例のようなことは、例えば開発者が「ある機能の開発を期限までに終わらせること」を目的としていた場合には起こってしまうと思います。しかし、本来チームが結成されている目的はそれほど小さなことではなく、「プロダクトをユーザーや自社にとってより価値あるものにすること」くらいには大きいものだと思います。目的がはっきりしていると、何かに悩むたび、チームはその目的に立ち返り、本当に目的のために正しいことをしているかを考えられます。

「目的を達成するためにチームとしてどうあるべきか」は具体的にチームとしてどういう動きをしてほしいかを伝えました。

「プロダクトをユーザーや自社にとってより価値あるものにすること」を目的とした場合、課題例では、開発者が「この機能の要件満たせているし、企画者から要件が来ていないところは適当な実装で済ませて完了にしよう」ではなく「ユーザーにこのエラーがそのまま出てしまうとUXを損ねるから、こういう表示にするのはどうか提案してみよう」と考え行動するほうが、チームの目的にはあっているはずです。

こういうことをいくつか素直にチームに伝えてみました。

2. なりたいチーム像になるための望ましい行動をチームメンバーがしたときに感謝の意を示す

なりたいチーム像を共有したら、その後誰かが少しずつ「こうなってほしい」を実践し始めてくれました。このとき大事なのが感謝の意を示すことでした。

例えば先程の例で、開発者が「ユーザーにこのエラーがそのまま出てしまうとUXを損ねるから、こういう表示にするのはどうか提案してみよう」と考え、実際に提案をしてくれたとします。その時はまず提案をしてくれたことに対してとにかく感謝の意を示します。もちろんその提案が企画者によって採用されない場合もありますが、その場合もまずは「ありがとうございます。提案してもらえてとても嬉しいです。おかげチームが課題に気づけました。また課題を見つけたら積極的に提案していただけるとありがたいです」のように感謝をきちんと伝えます。

これには次のような効果がありそうです。

  • やってみた行動が正しかったことを伝えられる
  • 次もやってみようというモチベーションを与えられる
  • 他のメンバーにもその行動が評価されることを伝えられる

3. どうしたら、なりたいチーム像に近づけるかをチームメンバーと話す

トップダウンで理想のチーム像を語り、こうなってほしいと伝えてもうまく行かないことももちろんたくさんありました。そういう場合はメンバーに、なぜうまく行かないのか、どうやったらうまく行きそうかを直接聞いてみるのが手っ取り早いと思います。私は特に1on1の場で個々人に相談するのが好きです。

相談してみると、「そもそもそんな話があったことを忘れてて普段意識していなかった」と言われて継続的な呼びかけが不足していることに気づくこともあれば、「実行するのにこういう部分で障害を感じてしまう」と言われて、では解消方法を一緒に検討しましょうとなる場合もあります。このときどんな返事が返ってくるかはもちろん大事なのですが、それよりも、なりたいチーム像に近づくためにどうすべきかを定期的に考える機会があることがもっと大事だと考えています。

4. チームみんなで感謝し合う

我々のチームでは毎週レトロスペクティブを実施しています。レトロスペクティブではチームメンバーにその週良かったことや、課題に感じていることなどを挙げてもらいます。良かったことには、チーム全体での試みとしてうまく行ったことも挙がりますが、誰かが何かをしてくれたことへの感謝も挙がってきます。この、チーム内での感謝をレトロスペクティブの場で伝えあえたことが非常に良かったです。

「Aさんがエラーケースのハンドリングの要件漏れを伝えてくれたおかげでUXを損なわずに済んだ」みたいなことをチームメンバー同士で言い合うことによって、お互いが更にチームに貢献してプロダクトを良くしていこうというモチベーションにつながったと思います。

まとめ

長々と書きましたが、我々にとって大事だったことは本当に少しだけでした。

  • なりたいチーム像を共有すること
  • 望ましい振る舞いに対しては感謝を伝えること
  • なりたいチーム像に近づくためにどうすべきかを継続的に考えること

この一年は感謝によって回りだしたように感じます。
今後もチームに感謝しながら仕事できたら幸せです。