WWDCで公開された情報のNDAについて


そろそろ WWDC 2021 6月7日午前10時(日本時間6月8日午前2時)が近付いているので NDA について調べてみた。
これまで記事を公開することなどなかったので、あまり NDA について調べたことがなかったが、最近 Qiita を始めたので、これを機にきちんと調べてみることにする。

結論

結論としては、素人判断では WWDC で開示された情報は秘密保持条項に拘束されないらしいが、(私は)スクリーンショットは公開しない方が手堅そう。
どなたかスクリーンショットの扱いがどうなるのかご存知の方がいらしたら記事にしてください。

なお、内容は2021年5月時点のものです。


そもそもNDAとは何?

Wikipedia によると以下になる。

秘密保持契約 - Wikipedia

秘密保持契約(ひみつほじけいやく、(英: non-disclosure agreement、略称: NDA)とは、ある取引を行う際などに、人の間(法人や自然人)で締結する、営業秘密や個人情報など業務に関して知った秘密(すでに公開済みのものや独自にないし別ソースから入手されたものなどを除外することが多い。)を第三者(当該取引に関連する関連会社や弁護士、公認会計士などを除外することが多い。)に開示しない(行政庁や裁判所の要求する場合、その他法律上開示義務がある場合などが除外されることが多い。)とする契約。

NDAとは「non-disclosure agreement」(秘密保持契約書)の略になり、翻訳すると「non-disclosure」は「非開示」、「agreement」は「契約、合意」となる。


過去の大変参考になる記事

ベータ版の iOS について WWDC の資料などを元に記事を書くのは NDA 違反か調べてみた - Qiita

ベータ版の iOS について WWDC の資料などを元に記事を書くのは NDA 違反か調べてみた - Qiita

まさに私が知りたいことはこちらの記事に大変よくまとまっているが、内容は2014年時点のものですと記載があり、もしかすると2021年現在では少し内容が古いかもしれないので、念のために自分でも調べてみる。
@uasi さん、素晴らしい記事をありがとうございます。

iOS - Appleがbata版として公開しているもののNDAについて|teratail

iOS - Appleがbata版として公開しているもののNDAについて|teratail

ベストアンサーにAppleデベロッパ契約 (日本語)のリンクがあるが、2015年6月18日 版なのでちょっと古いかも。


2021年5月時点の「Apple Developer Program License Agreement」

自分のAppleアカウントで同意した「Apple Developer Program License Agreement」

まずは自分のAppleアカウントで同意した「Apple Developer Program License Agreement」を確認してみる。

■確認手順

  1. 自分の Apple Developer サイトから Membership -> Account ページを開く
  2. Account ページの最下部に "Show Agreements" があるので、クリックして Agreements を表示させる
  3. Agreements から「Apple Developer Program License Agreement」(英語版)をダウンロードする
  4. PDF を開いてみる(当然だが英語なので読む気にならない)

英語版の日付は 6/22/2020 となっているので、2014年度版から更新されている。

Google検索で見つけた日本語資料

Google先生で日本語資料を見つけたので、こちらで確認する。

20200622版の日本語版「Apple Developer Program License Agreement」

日本語版の日付は 2020 年 6 月 22 日 になっている。

日付は英語版と同じで、ドメインも developer.apple.com なので、おそらくAppleの正式資料と思って良いだろう。
私の方から大丈夫とは言えないので、各自でご判断ください。私では一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。(一応それっぽく書いとく)


「Apple Developer Program License Agreement」を読んでみる

「9.1 秘密とみなされる Apple 情報」

今回のテーマで一番重要なところは 9.1 秘密とみなされる Apple 情報 になる。

Apple は、デベロッパがプレリリース版 Apple ソフトウェア、Apple サービスまたはハードウェアのスクリーンショットの掲載、パブリックレビ ューの記載または再配布をしてはならないことを除き、デベロッパが、WWDC(Apple のワールドワイドデベロッパカンファレンス)で Apple により開示されたプレリリース版 Apple ソフトウェアおよびサービスに関する技術情報について前記秘密保持条項に拘束されないことに同意します。

ここに WWDC で開示された技術情報について前記秘密保持条項に拘束されないと明記されているが、スクリーンショットの掲載は禁止されている?
この文面だと、スクリーンショットは「プレリリース版 Apple ソフトウェア、Apple サービスまたはハードウェア」だけが禁止されているように読めるが、セッションビデオは「Apple サービス」に含まれるのかな?

「Apple サービス」とは

セッションビデオは「Apple サービス」に含まれるのかよく分からないので、「Apple サービス」とは何なのかを「Apple Developer Program License Agreement」で調べてみた。

「Apple サービス」または「本サービス」とは、デベロッパの取扱製品と共に使用するためまたは開発のため、Apple が提供または Apple ソフトウェアを通じてもしくは本プログラムの一部として利用可能にすることがあるデベロッパサービスをいい、本プログラムに基づき Apple がデベ ロッパに提供する場合には、それらのあらゆるアップデート(該当する場合)も含むものとします。

うーん、どうとでも解釈出来る気がする。セッションビデオが「Apple サービス」に含まれるのか私には判断出来ないな。

英語版の確認

日本語訳が分かりづらい(特にスクリーンショットの扱い)ので、念のために英語版の確認もしておく。

Further, Apple agrees that You will not be bound by the foregoing confidentiality terms with regard to technical information about pre-release Apple Software and services disclosed by Apple at WWDC (Apple’s Worldwide Developers Conference), except that You may not post screen shots of, write public reviews of, or redistribute any pre-release Apple Software, Apple Services or hardware.

翻訳

さらに、Apple は、Apple が WWDC (Apple の Worldwide Developers Conference) で公開したプレリリース Apple ソフトウェアおよびサービスに関する技術情報に関して、前述の機密保持条件に拘束されないことに同意します。ただし、次のスクリーンショットを投稿することはできません。 プレリリース版の Apple ソフトウェア、Apple サービス、またはハードウェアの公開レビューを書いたり、再配布したりすること。

うーん、that You may not post screen shots of, の of がどこまでかかっているのか、私には判別しづらいな。
スクリーンショットの掲載は明確に禁止されているが、何のスクリーンショットがダメなんだろう?

追記
@MTageshi さんからコメントを頂き、「カンマで区切って並べられている部分は全部並列」となることが分かった。
つまり、You may not post screen shots of any pre-release Apple Software, Apple Services or hardware. となる。
@MTageshi さん、ありがとうございます!

だけど、他の有名サイトの記事ではキーノートのスクリーンショットをバンバン使っているから、セッションビデオのスクリーンショットなら掲載しても良さそうが気がするが、ちょっと私には判断出来ないな。

とりあえず、(私は)スクリーンショットは掲載しないのが手堅いだろう。

「9. 秘密保持」全文

以下「9. 秘密保持」全文

 9. 秘密保持

9.1 秘密とみなされる Apple 情報

デベロッパは、プレリリース版 Apple ソフトウェアおよび Apple サービス(プレリリース版ドキ ュメントを含む)、プレリリース版 Apple ハードウェア、FPS 導入パッケージ、プレリリース版 機能を開示した本契約に定めるあらゆる条項および条件、並びに別紙2および別紙 3 に定める条項および条件が、「Apple 秘密情報」とみなされることに同意するものとします。但し、Apple ソフトウェアが一旦市販された場合、Apple ソフトウェアあるいはサービスのプレリリース版の機能を開示した条件は、秘密性を喪失します。上記にかかわらず、次の情報は、Apple 秘密情報 には含まれないものとします。(i) デベロッパの違反によらずして、合法的に公知となった情報、 (ii) Apple が一般に開示した情報、(iii) デベロッパが、Apple 秘密情報に頼ることなく単独で開発した情報、(iv) デベロッパに対して情報の譲渡あるいは開示を制約を受けることなく行う権利を 有する第三者から正当に入手した情報、あるいは、(v) Apple ソフトウェアに含まれているフリ ーオープンソースソフトウェア(FOSS)で、その利用あるいは情報開示について秘密保持義務を ライセンス条件に課していないもの。さらに、Apple は、デベロッパがプレリリース版 Apple ソフトウェア、Apple サービスまたはハードウェアのスクリーンショットの掲載、パブリックレビューの記載または再配布をしてはならないことを除き、デベロッパが、WWDC(Apple のワールドワイドデベロッパカンファレンス)で Apple により開示されたプレリリース版 Apple ソフトウ ェアおよびサービスに関する技術情報について前記秘密保持条項に拘束されないことに同意します。

9.2 Apple 秘密情報に関する義務事項 デベロッパは、デベロッパ自身の同等の重要性を有する秘密情報を保護する場合と少なくとも同じ注意をもって Apple 秘密情報を保護するものとし、いかなる場合にも善管注意義務を遵守します。デベロッパは、本契約に基づくデベロッパの権利の行使と義務の履行のためにのみ、Apple 秘密情報を使用するものとし、Apple の書面による事前の許可を得ることなく、他のいかなる目 的にも、また、デベロッパあるいは第三者の利益のために、Apple 秘密情報を使用してはならないものとします。さらに、デベロッパは、Apple 秘密情報を次に掲げる者以外には開示しないものとします。(i) デベロッパの従業員または請負業者、またはデベロッパが教育機関である場合にはその教職員で、Apple 秘密情報を知る必要があり、Apple 秘密情報の無断使用や開示を禁止す る契約を交わした者、あるいは、(ii) その他 Apple が書面をもって合意または許可した者。法令 により Apple 秘密情報を開示することが求められた場合、開示要求されている限度において、開示できるものとします。但し、デベロッパは、Apple 秘密情報を開示する前にかかる要求があった旨 Apple に報告し、Apple 秘密情報の保護措置を講ずるための合理的な措置を取らなければならないものとします。デベロッパは、Apple 秘密情報を不適切に開示した場合の損害は取り返しのつかないものであること、したがって、Apple は他の救済措置に加え、差止命令、その他の衡 平法上の法的救済措置を発動する権利を有することを了解します。


おわりに

WWDC で公開された技術情報は記事にしても良さそうなので、セッションビデオで見た内容は Qiita にメモしておくことにする。
やる気だけはあるが、どこまで出来るかは不明。