330 円テンキーで作る 20% キーボード (ハードウェア)

5914 ワード

20% キーボード

好みにあった部品を揃え、自分のためのキーボードを作り上げる自作キーボード。
キットを使うにしても、部品を揃えて組み立てるには手間もコストも掛かるのがネックです。
しかし既存のキーボードを流用して作れるとしたら、コストの大部分が解決します。[1]

今回、格子状の 4x5 配列で 20% キーボードを作ります。
最も適した形状は、横に向けたテンキーです。
19 キーの市販品を改造して作成します。

筆者はこれまで 40% キーボードに惚れ込んでキートップがかすれるまで使い込んできました。
たまにノート PC のキーボードを使って Enter キーの遠さに途方に暮れています。

330 円テンキー

メンブレンの安価なキーボードなら 1,000 円も出さずに買える時代です。
その中でも断とつで安く、入手性がいい百均のテンキーを使います。


2022 年現在、キャンドゥやダイソーで取り扱っています。

メンブレンシート

多数を占めるメンブレン式キーボードは、キーマトリクスにダイオードが入っていません。
交差する 3 個以上のキーを同時押しされたときに原理的にキーゴーストが発生します。
実用的に入力するには、ファームウェアで頑張って吸収する必要があります。

回路図

全体の回路図を既に解析してくださっている方がいらっしゃるので、詳しくは参考文献[2]に当たってください。
キャンドゥとダイソーで一部の回路が異なっていることを確認していますが、利用したい部品は共通です。

結線表

コネクタ Pro micro
1 10 (PB6)
2 16 (PB2)
3 14 (PB3)
4 15 (PB1)
5 A0 (PF7)
6 9 (PB5)
7 8 (PB4)
8 7 (PE6)
9 6 (PD7)
LED (抵抗) 4 (PD4)

メンブレンシートのコネクタの 1〜9 ピンと LED を Pro micro の端子に接続します。
コネクタは向かって一番右が 1 番です。
それぞれのピンは基板に対応するテストポイントが用意されています。そこから結線します。
元のチップにつながる回路はすべて切断します。

製作

用意するもの

  • Pro micro ×1
    元の基板と筐体の隙間にピッタリと収まることを確認しています。
  • 抵抗 (330〜1kΩ) ×1
    LED に使います。無い場合でも、Pro micro から不要な抵抗を流用可能です。
  • ポリウレタン銅線 (0.2mm)
  • はんだ線
  • ホットボンド
  • 工具類
    プラスドライバー、はんだごて、ピンセット、カッター、拡大鏡など

micro USB コネクタ除去

コネクタの高さが邪魔なので、除去して端子に直接はんだ付けします。
端子の横の穴にコテ先を突っ込み加熱しながら、剥がす方向にゆっくり力を加えると接着面が離れます。左右の端子を浮かせた後に五連の短い端子を外します。

5 つある端子の 4 つに結線します。
ピッチが細かいのでポリウレタン銅線を使います。
端子の並びは、Pro micro の USB 端子を左向きに置いたとき、向かって上から VCC, D-, D+, (未使用), GND です。
導通に問題がなければ、力が加わっても外れないようにホットボンドで固定します。

LED 抵抗

LED のアノードと Pro micro の 4 (PD4) ピンの間に直列に抵抗を入れます。
基板の LED の傍にテストポイントがあり、抵抗の一端をはんだ付けします。反対側は空中配線です。
もし手持ちの抵抗がなければ、Pro micro の電源 LED 用の 1kΩ が取り外せるため流用します。


組み立て

元のチップを回路から切り離すため、カッターで基板に切れ目を入れます。
残った配線をつなぎます。
基板を一箇所折ってから配線して終わってからテープで繋ぐと、作業がしやすくなります。

元のケースとの隙間に Pro micro を置き、上から基板を載せます。
後述するファームウェアの書き込みができたら、元通り組み立ててください。



注意: 改良する前に撮った写真のため、本文と細部が異なります。

ファームウェア書き込み

このキーボード handwired/keypad12 は個人リポジトリで公開しています。
クローンしてブランチ keypad12 を参照してください。

$ git clone -b keypad12 https://github.com/tryjsky/qmk_firmware.git

ファームウェアは定番の QMK Firmware を使います。
初めての場合は、セットアップガイド[3]を参考にビルド環境を作成してください。

$ qmk setup --home qmk_firmware/

準備ができたらビルドして書き込みます。

$ qmk flash -kb handwired/keypad12 -km default

ビルドに成功してしばらく待つと Waiting for USB serial port - reset your controller now (Ctrl+C to cancel) と表示が出ます。
その状態でテンキーの USB ケーブルを開発機に接続して、Pro micro の RST ピンと GND ピンをピンセットなどでショートさせます。
成功すれば数秒後にファームウェアが書き込まれ、新しいキーボードとして認識されます。

Pro micro 設定

  • Pro micro の bootloader は catalina が初期値です。

  • 3.3v 8MHz でもおそらく利用できます。その場合は、rules.mk に一行追加します。

F_CPU = 8000000

おわりに

この記事は、キーボード handwired/keypad12 キーマップ shuttle19 で書きました。

脚注
  1. 先駆者の例: BUFFALOの USB テンキーを Pro Microと QMKを使って VIAカスタマイズ キーボードに改造する方法 (BUFFALO USB 10-Key keyboard BSTK100 modification by Pro Micro and QMK firmware VIA) ↩︎

  2. 【100均ガジェット分解】(25)キャンドゥの「USBテンキーボード」|ThousanDIY (Masawo Yamazaki)|note ↩︎

  3. Setup ↩︎