【CTRを上げれば検索順位も上がるのか?】SEO界隈長年の疑問に特許からアプローチ


CTRを上げれば検索順位も上がるのか?

こんにちは!エイチーム引越し侍SEO担当の@tatechiです。

突然ですが、皆さんは「検索結果でのCTRを上げればSEO順位も上がる」という話を聞いたことはありませんか?
SEO界隈では有名な一説ですが、この件に関してGoogleは公式に認めたことはありません

Google社員が公表している公式見解によると、CTRの数値は以下の2つの目的で活用されているそうです。

①アルゴリズム評価
新しいアルゴリズムを導入するときの検証や、2つの検索結果を並べて比較するときの手段として、CTRが使われているとのことです。
②検索結果のパーソナライズ化
検索結果をパーソナライズする際にもCTRが使われているそうです。 詳しいロジックについては言及されておりません。

上記の公表内容によると、GoogleはCTRの高いサイトの順位を上げるようなことはしていないように読み取れます。

しかし、本当にそうなのでしょうか…??
Googleはユーザーが求めているコンテンツを検索上位に表示したいはずです。
それならば、より多くのユーザーに支持されているページ、つまりCTRの高いページの順位を上げようとするのは当然のことではないでしょうか?

この件に関しては、SEO界隈でも長年議論の的になってきました。

ランド・フィッシュキンによるCTRと検索アルゴリズムのテスト

元MozでSEO界隈の有名人の一人であるランド・フィッシュキンは2014年に面白い実験を行いました。(以下、Queries & Clicks May Influence Google’s Results More Directly Than Previously Suspectedより)

"imec lab"という造語でページを作成し、4/30 18:03にTwitter上から「"IMEC Lab"と検索して自分のブログをクリックしてほしい」とアナウンスしたのです。
その結果、175~250名もの人が"IMEC LAB"と検索し、ランドが作ったサイトをクリックしてくれました。

アナウンスを行った18:03時点では、ランド・フィッシュキンのサイトは"imec lab"のキーワードで7位に位置していました。

そして、twitterからのアナウンス後の"imec lab"の検索結果は以下のようになりました。

なんと、たったの3時間で1位まで上がってしまっているのです
ランドはこの研究結果をもって、「やはりCTRは検索アルゴリズムの要因の1つとして使用されている」と断定しました。
しかし、Google側はその後、再度この仮説を一蹴しています。

では、GoogleはCTRを検索結果に反映する取り組みに着手してこなかったのでしょうか?
そういうわけではありません。
なぜなら、CTRを検索結果に反映させる特許が2014年時点で公開されているからです。

ここからは、CTRなどのユーザー行動指標を検索結果に反映される仕組みを説明した"Modifying search result ranking based on a temporal element of user feedback "の特許をテーマに挙げて説明していきます。

CTRなどのUX指標を検索結果に反映させる仕組み

今回取り扱う特許は、ユーザー行動の履歴をログとして残し、検索結果の品質改善を行う目的としています。
ユーザーが検索結果上で取る行動の、何をログで残し、どうやってその行動を評価し、経年によるシグナルのウェイト減退をどのように行うか、が書かれています。


この特許を読むときの注意

  1. 今回取り上げている"Modifying search result ranking based on a temporal element of user feedback"という特許は、Googleが取得した特許ではありますが、検索エンジンだけを対象にした特許ではありません。イントラネットや書籍の検索システムなど、幅広い検索システムを対象としています。
  2. この記事内で登場する数値は、すべて特許内の数値と同じものを使用しています。しかし、現在もGoogleがその数値をそのまま検索システムに適用しているとは考えづらいです。あくまでGoogleがどのようなUX指標をポジティブ・ネガティブと捉えるのかを理解するだけの参考にとどめてください。
  3. この特許が申請されたのは2006年11月です。当時の検索システムと現在の検索システムの質は違うことを前提にお読みください。

それでは、CTRを含めたUX指標はどのように検索結果に反映されるのでしょうか?
ここから詳しく説明していきます!

UX指標を検索結果に反映させる基本的な流れ

下の図は、システムがユーザーに検索結果を返すまでの一連の流れを表しています。

(参照:Modifying search result ranking based on a temporal element of user feedback

ユーザーがスマホやパソコンなどのデバイスから検索クエリを入力すると、ネットワークを介して検索システムにリクエストが送信されます。
そして、水色で色を付けたインデックスエンジン1020とランキングエンジン1052で検索結果を生成し、検索結果を返します。

ここまでが、基礎的な検索システムの仕組みでした。
今回の特許で新しく登場したのが、オレンジ色のRANKING MODIFIER ENGINE(ランキング修正エンジン)1056です。
このランキング修正エンジンが動くときのフローを詳しく説明していきましょう。


下の図は、検索システム内の機関とそれぞれの流れを表したものです。

それぞれに附番されている数字に沿って、流れを説明していきます。

  1. 2010インデックスエンジン・2020スコアリングエンジン・2030ランキングエンジンを介して、2040検索結果が生成されます。
  2. その検索結果上に、2050トラッキングコンポーネントが記録処理を行うタグを埋め込みます。
  3. 2050トラッキングコンポーネントによって集約したデータは、2060行動結果ログに格納されます。
  4. 2060行動結果ログのデータが2070ランキング修正エンジンに送信されます。
  5. 2070ランキング修正エンジンから、検索結果の修正に使うべきシグナルを最低1つ以上2030ランキングエンジンに送信します。

これが今回の特許で登場するランキング修正エンジンの流れです。

ここで興味深いのが、検索システムが検索結果の改善のために、ユーザー行動をログとして収集しているという点です。
具体的に、どのようなデータをログとして集めているのでしょうか?

今回の特許内で例示されているデータは以下のとおりです。

  • 検索クエリ
  • ユーザーが流入したページ
  • ページの滞在時間
  • インターフェースの言語
  • クリックされたページのスコア
  • クリックされたページの表示位置
  • ユーザーの国籍
  • ユーザーがどのページも選択しなかったときの検索結果
  • ユーザーが最後に閲覧したページ

上記のデータは、クエリ&ページのセットごとに格納されています。
そして、これらのデータの中で特徴的なシグナルがあれば、ランキング修正エンジンはそれをランキングの改善要素として、相対的に大きな係数をつけるようにランキングエンジンに返すそうです。

ページの滞在時間の評価方法

この特許内では、以下の前提条件のもとでコンテンツの評価を行います。

  • 閲覧時間が長いページ:高品質
  • 閲覧時間が短いページ:低品質

そしてユーザーのログデータをもとに、滞在時間を短い・普通・長いの3つのグループに区分します。

(※上の図では便宜上3等分のグループにしておりますが、特許内に等分との記述があるわけではありません。)

そして、ユーザー行動1クリック当たりに対して、下記のルールに基づいて点数をつけていきます。

  • 滞在時間が短いものは1クリックごとに-0.1点
  • 滞在時間が普通なものは1クリックごとに+0.5点
  • 滞在時間が長いものは1クリックごとに+1.0点

また、検索結果に戻らずに、最後にユーザーが閲覧したページは良いコンテンツであると判断し、+0.9点の加点があります。

(※ただし、クリックのウェイトはその前のクリック情報に基づいて調整される場合があります。例えば、もし他のクリックが最後のクリックに勝る場合、最後のクリックは良いページであると認識されない場合があり、まあまあのウェイトしか与えられないことがあります。(0.3とか))

上記と同様のフローに沿って、CTRもランキングの修正シグナルの一つとして用いられる場合があります。

時間経過によるシグナルの減衰

このユーザー行動シグナルによるランキング修正は、1クエリ当たりのユーザー行動のサンプル数が100を超えた時点で発動します。
しかし、2000年にニーズが高かったコンテンツが、今もニーズが高いとは限らないですよね?

このように、古いユーザー行動は時間が経つとともに価値を失うこともあります。

そのため、時間の経過によってシグナルのウェイトが減衰するようにこの特許では設定されています。

  • 2~4週間の時間が経過した選択に対して少なくとも15%以上の減少加重を適用する
  • 4~6週間の時間が経過した選択に対して少なくとも50%以上の減少加重を適用する
  • 6~8週間の時間が経過した選択に対して少なくとも70%以上の減少加重を適用する
  • 8週間以上の時間が経過した選択に対して少なくとも90%以上の減少加重を適用する

この時間的要素の優先順位付けは、文書が頻繁に変更されるWeb検索のコンテキストでは特に価値があります。

これが今回取り上げた特許、"Modifying search result ranking based on a temporal element of user feedback"の内容です。
前述のとおり、この特許が申請されたのは2006年です。
なんと10年以上も前からGoogleがCTRをアルゴリズムに反映させる仕組みを持っていたことがおわかりになったでしょうか?

現在もGoogleは公式には、CTRをランキングアルゴリズムの要因として認めてはおりません。
しかし、今回の特許を読んだ個人的な感想としては、やはりCTRはランキングアルゴリズムの一つではないかと思っています。

WebマーケティングにおけるCTRの価値

今回はCTRがGoogleの検索結果にどのように影響を与えるかを分析してきました。
GoogleはいまだにCTRがアルゴリズムの一つだと認めているわけではありません。

しかし、CTRを上げるための取り組みをしなければならないのは、ランキングアルゴリズムになっていなかったとしても同じでしょう。

意外と忘れがちですが、Webマーケティングにおいて最も追うべきKPIの一つであるCV数は以下の計算式から成ります。

CV数=IMP数×CTR×CVR

そして、それぞれの要素は以下のように説明することができます。

  • IMP数:SEOで上位化する力
  • CTR:キャッチコピーの作成力
  • CVR:ユーザビリティやサイトのデザイン性

上記のCTRがIMP数に関わらなかったとしても、CTRそのものがCV数の計算式の要素のひとつです。
CV数の最大化のためには、どちらにしても最適化しなければいけないものになるでしょう。
その最適化をすることで、もしかしたら結果的にIMP数増加にも寄与する可能性もあるということです。


今回はGoogleらしからぬ具体的数値の多い特許を扱いました。
現在の検索アルゴリズムはより複雑で、様々な指標を見ながらサイトの評価を行っています。

「今こんな特許を読んでどうするの?」という方も多いのではないでしょうか?
しかし、Googleの基礎を理解してこそ、行うことができる施策も多々あります。

SEO担当がこんなことを知ってどうなるの?と思った方!
エイチーム引越し侍では現在様々なサイトを運営しています。
そして、この論文でグーグルの構造を理解して、そこから得た仮説を施策に落とし込み、
実際の検索結果に影響が出るかどうかの検証を日々行っています。

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