『カメラを止めるな!』の視聴者ツイートを徹底的に調べてみた


先日、『カメラを止めるな!』がテレビで放映されました。僕は上映時に映画館で観たのですが、本当に面白く、そしてあれほど映画館全体が笑いに包まれる体験は初めてで、心から感動しました。まさか、ゾンビ映画を撮っていたらゾンビに襲われるなんてねぇ…。まだの人は是非見てほしいです。

視聴率は11.9%、今年の金曜ロードショーでは最高だそうです。個人視聴率1%につき約40万8000人らしいので(関東地区)、11.9%なら500万人近くが視聴したことになります。これは映画を観た人の2~3倍とのこと。

ということで今回は、『カメラを止めるな』のツイートを集計して色々調べてみました。この作品のツイート分析については軽く触れている記事もありましたが、テレビ視聴にフォーカスした記事は見たことなく、個人的に興味があったので。

『カメラを止めるな』ツイート抽出

ツイートの抽出には以前に作成したコードを使います。
検索APIでワード「カメラを止めるな」が入っているツイートを抽出。1人1人の純粋な感想ツイートを調査したいので、RTは除きます(公式/引用共に)。
※放送終了の1週間後ぐらいに取得しておいたデータを使いました。

集計対象のDataFrameはこんな感じ。

ツイート数推移

放送時間は21:00~23:04なので、まずは前後含む19:00〜25:00のツイート数の推移(15分単位)を見てみます。

放送開始直後(21:00)と放送終了直後(23:00)のツイートが圧倒的に増えています。
開始時にこれほど増えているのは少し意外でした。初回放送だけに「今から見る!」や「みんなも見て!」という強い思いと、「開始40分間ノーカット」が話題になったことあたりが理由でしょうか。そしてその期待を超えるように、放送終了時に盛り上がってます。

試しに昨晩の金曜ロードショー『名探偵コナン 世紀末の魔術師』と比較(5分単位)してみると、これだけの差がありました。(「世紀末の魔術師」を含むツイート数との比較)

総ツイート数

上記時間内のツイート数合計は68368件。

その中から、放送開始以降(21:00~)に絞ると60277件でした。

以降は、実際にテレビを見た感想をツイートしている人に注目するため21:00~のツイートを対象にします。

延べツイート人数

放送開始以降(21:00~25:00)にツイートしたユーザ数(同一ユーザを除く)の合計は、52083人

テレビ視聴者のツイート割合

ということは、仮にテレビ視聴者が500万人とすると、視聴者のうちTwitterで1回でもツイートした人数の割合
52083/5000000 ≒ 0.01
となり、約 1 %となります。

つまり100人に1人。映画鑑賞者は74%の人がTwitter利用していたらしいですが、テレビは1%。Twitterをよく使う人にとっては意外な数字かも?

ツイートの感情分析

単純にツイートと言っても、「面白かった」「つまらなかった」と意見は分かれます。そこで、1つ1つのツイート内容がポジティブなのかネガティブなのかを調べてみます。(ハッシュタグは分析対象外)

分析には、Googleの感情分析API(Cloud Natural Language APIを使ってみます。
このAPIでは、-1.0(ネガティブ)~1.0(ポジティブ)のスコアで感情が表されます。
※実際の結果は -0.9 ~ 0.9 の範囲でした。
ここここを見ながら作れば簡単。無料体験期間でない人は課金されるので要注意。

#Cloud Natural Language API 呼び出し
# content(文章)のスコアを返却する
def analyze_sentiment(content):
    client = language_v1.LanguageServiceClient()

    if isinstance(content, six.binary_type):
        content = content.decode('utf-8')

    type_ = enums.Document.Type.PLAIN_TEXT
    document = {'type': type_, 'content': content}

    response = client.analyze_sentiment(document)
    sentiment = response.document_sentiment

    return sentiment.score

analyze_sentiment('分析したい文章を入れる')

例えばこんなポジティブなツイートは0.9点に。

・カメラを止めるな結構いやかなり面白かった!!!!好き!!!
・カメラを止めるな、思ってた何倍もおもろい、感動。めちゃおもしろかった😶
・カメラを止めるなは映画を見に行ったことあるけど面白すぎて死にそうになった

逆にこんなネガティブなツイートはマイナス0.9点になります。

・カメラを止めるな、私には合わなかった
・カメラを止めるな全然面白くなかった
・ホラーの耐性すかすかなのでカメラを止めるなまじで無理です……

感情がうまく判定できない文章や、複数の文章になっていてトータルで打ち消し合うものは0点になることもあります。例えばこんなやつ。

・カメラを止めるな!は録画しました。
・カメラを止めるな、もちろん録画してるけど、まだジブリポジションな映画じゃねーんだかんなっ!
・カメラを止めるな!は確かに序盤はあれだけどメイキング好きなあたしとしては結構面白かった 逆に行うと、合わない人はとことん合わないな と思った

様々なツイートのスコアをザッと見てみたところ、「感情のスコア」という意味では、感覚的にはほぼ違和感のない数値が出ていました。人の感情も簡単に読み取れちゃう時代なんですね。

ポジティブ/ネガティブの割合

全てのツイートのポジティブ/ネガティブの割合はこうになりました。赤系がプラス、青系がマイナスです。

トータルではプラス寄りですが、話題になり過ぎたことや、前半の耐える時間帯のせいか、マイナスもそこそこあります。何も知らない人が、あの前半40分間をテレビの前で見続けるのは忍耐力が要るでしょうからね。。

ただ実際は、「映画の内容」に対してではなく、「番組を視聴できなかったこと」や「途中から視聴してしまったこと」などに対するネガティブなツイートもマイナスになっていたりするので、映画に対する感情という意味では、正確にはもっとプラスになりそうです。

例えば下のようなツイートも、前半の「期待してない」「つまらん」などの単語のせいか、最終的には褒めているのに全体としてはマイナス(この場合は-0.1)と判定されています。特にスコア「-0.3 ~ -0.1」のツイートにはこのようなパターンが凄く多いのですが、この辺は課題としてしばらく残り続けそうなので一旦許容します。

前半→後半 の感情の変化

この映画は、前半と後半のギャップが非常に強いのが特徴です。前半はネガティブ、後半はポジティブなコメントが多いことが予想されます。なので、時間帯によってポジティブ/ネガティブの数がどの程度変わってくるのか調べてみました。結果はこんな感じ。(ツイートの多い23:15までを抜粋)

やはり前半はマイナス(青系)のツイートが多く、後半になるに連れてプラス(赤系)のツイートが急激に増えていくのがわかります。見終わったときの感情がこの映画の価値だと思うので、そういう意味では最後の棒グラフに視聴者の感動が現れています。ある程度予想通りだけど、こうして数値として目に見えると面白い。

ちなみに最後の棒グラフの23:00~23:15だけに絞ったツイートのスコア割合を見てみるとこうなります。

「いいね」ランキング

これで調べたいことは調べられたので満足なのですが、最後はおまけ程度に、最も「いいね」を集めたツイートのトップ5を載せておきます。

1位のツイートはなんか深い。多くの称賛ツイートの中で、監督自身のツイートもこれだけ伸びています。製作者が視聴者から直に認められるのが見えて良いですね。

あと指原莉乃のあまりに普通すぎるツイートがこれほどファボられるのを見ると、改めて芸能人の影響力の強さを感じます。

あとがき

こうして見ると、まだテレビが(落ち目と言われつつも)こうしてトレンドを作る影響力を持っていることや、ツイートだけで素直な感情の動きが読み取れることやその課題などを感じられて面白かったです。あと、この映画そのものは、本当に素敵な作品なので、この記事がまだ観ていない人が観るきっかけになることがあれば嬉しいです。

※ちなみに後から思いましたが略称の「カメ止め」は抽出していないので、それも含めると実際のツイートはもう少し増えますね。