M5StackでもTTFフォントが使いたい


追記(2021/08/18)

M5Stack 以外のマイコンにも対応した OpenFontRender をリリースしました。
今後はこちらの利用を推奨します。使い方はほとんど同じです。

はじめに

皆さん,M5Stackシリーズ使っていますか~?
お手頃なお値段で豊富なIOがあり,開発ペースも早くコミュニティが活発,
更に Arduino IDE が使える(=豊富なライブラリが流用可能)という
素晴らしい おもちゃ ガジェットですが,一つだけ不満なことがありました.

そう,フォントです.

多くの偉大な先人達のおかげで M5Stack でも任意のフォントを使う方法はあります.

しかし,これらの方法には以下のような制約が少なくとも1つは存在しています.

  • VLWフォントファイルを用意する必要がある.
  • フォントサイズが固定.
  • SDカードが必要.
  • アンチエイリアスが効かない.

特にフォントサイズが固定というのが厄介だなぁと思っていました.
しかし,2020年11月25日に転機が訪れます.

M5Paper では TTFフォントが使える

このツイートを見たときはとても興奮しました.
M5Stackのフォント周りの不満がすべて消し飛ぶ可能性を感じました.

M5Paperの発売後にGithubのコードを眺めていると,どうやら FreeType という有名なフォントレンダリングライブラリを組み込んでいるようでした.
2020年12月現在,公式がサポートしているのは M5EPD (M5Paper) だけのようですが,
これを M5Stack に移植すれば M5Stack でも TTFフォントを扱えるようになるはずです.

そう思っていたら早速 M5Stack Core2 に移植した方がいました.

素晴らしい!!!!
しかし,どうやら esp-idf で作っているようです.
私は Arduino IDE で使いたいので,Arduino IDE 用に M5EPD を移植して(ついでにちょっと改造もして)みました.

M5FontRender

今回作成した M5Stack / M5Core2 用 TTF 描画ライブラリはこちらです.
https://github.com/takkaO/M5FontRender.git

準備(インストール)

上記のリポジトリから Arduino IDE のライブラリフォルダへクローンします.
Windowsであればデフォルトは ドキュメント/Arduino/libraries の中です.

SDカードからフォントを読み込む

M5FontRender/example/load_from_sd/load_from_sd.ino の中身です.
プログラム中の /JKG-M_3.ttf が SDカード内のフォントファイルへのパスです.
/JKG-M_3.ttfload_from_sd ディレクトリ内に同梱されています.

#include "M5Core2.h"
#include "M5FontRender.h" // Include after M5Stack.h / M5Core2.h

M5FontRender render;

void setup() {
    // put your setup code here, to run once:
    M5.begin();
    M5.Lcd.fillScreen(BLACK);

    if (!render.loadFont("/JKG-M_3.ttf")) {
        Serial.println("Render initialize error");
        return;
    }

    render.setTextColor(WHITE);
    render.printf("Hello World\n");
    render.seekCursor(0, 10);
    render.setTextSize(30);
    render.setTextColor(GREEN);
    render.printf("完全なUnicodeサポート\n");
    render.seekCursor(0, 10);
    render.setTextSize(40);
    render.setTextColor(ORANGE);
    render.printf("こんにちは世界\n");
}

void loop() {
    // put your main code here, to run repeatedly:
}

プログラム内に埋め込んだフォントを読み込む

M5FontRender/example/load_from_binary/load_from_binary.ino の中身です.
binaryttf.h の中に展開されたTTFファイルが格納されています.
binaryttf.h の作成方法はページ下を参照して下さい.

#include "M5Core2.h"
#include "binaryttf.h"
#include "M5FontRender.h" // Include after M5Stack.h / M5Core2.h

M5FontRender render;

void setup() {
    // put your setup code here, to run once:
    M5.begin();
    M5.Lcd.fillScreen(BLACK);

    if (!render.loadFont(binaryttf, sizeof(binaryttf))) {
        Serial.println("Render initialize error");
        return;
    }

    render.setTextColor(WHITE);
    render.printf("Hello World\n");
    render.seekCursor(0, 10);
    render.setTextSize(30);
    render.setTextColor(GREEN);
    render.printf("完全なUnicodeサポート\n");
    render.seekCursor(0, 10);
    render.setTextSize(40);
    render.setTextColor(ORANGE);
    render.printf("こんにちは世界\n");
}

void loop() {
    // put your main code here, to run repeatedly:

}

実行結果例

サンプルプログラムを実行した結果が下の画像です.
アンチエイリアスも効いており、とても綺麗にフォントを描画できています.
今回は私の独断と偏見で,勝手ながら「かわいいフォント箱」様が配布している「JKゴシックM」というフォントを使用させていただきました.この場を借りてお礼申し上げます.

まとめ

これで任意のフォントファイルを好きなだけ使い倒すことができますね.
もちろんフォントサイズの変更は自由自在です.もうフォントサイズごとにフォントファイルを用意する必要はありません!
フォントファイルをプログラム中に埋め込むことも可能なので,複数台運用する場合でもSDカードを用意せずに済みます.また,TTFフォントを圧縮して必要な文字だけのファイルを作成すればメモリの節約もできます.

おまけ

フォントファイルの圧縮方法

TTFファイルの圧縮(不要文字削除)ソフトはたくさんあるので,
お好きなものを利用して下さい.
私は「武蔵システム」様の「サブセットフォントメーカー」をオススメします.
基本的には使いたい文字をひたすら打ち込んで,生成ボタンを押すだけです.
よく利用しそうな文字一覧を下に用意したので,適宜ご利用下さい.


アルファベット/数字/記号(ASCII)
abcdefghijklmnopqrstuvwxyz
ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ
0123456789
!"#$%&'()*+,-./:;<=>?@[\]^_`{|}~



ひらがな
あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわゐゑをん
がぎぐげござじずぜぞだぢづでどばびぶべぼぱぴぷぺぽ
ぁぃぅぇぉっゃゅょ



カタカナ
アイウエオカキクケコサシスセソタチツテトナニヌネノハヒフヘホマミムメモヤユヨラリルレロワヰヱヲン
ガギグゲゴザジズゼゾダヂズデドバビブベボパピプペポヴ
ァィゥェォッャュョ



常用漢字(2136字)
亜哀挨愛曖悪握圧扱宛嵐安案暗以衣位囲医依委威為畏胃尉異移萎偉椅彙意違維慰遺緯域育一壱逸茨芋引印因
咽姻員院淫陰飲隠韻右宇羽雨唄鬱畝浦運雲永泳英映栄営詠影鋭衛易疫益液駅悦越謁閲円延沿炎怨宴媛援園煙
猿遠鉛塩演縁艶汚王凹央応往押旺欧殴桜翁奥横岡屋億憶臆虞乙俺卸音恩温穏下化火加可仮何花佳価果河苛科
架夏家荷華菓貨渦過嫁暇禍靴寡歌箇稼課蚊牙瓦我画芽賀雅餓介回灰会快戒改怪拐悔海界皆械絵開階塊楷解潰
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轄且株釜鎌刈干刊甘汗缶完肝官冠巻看陥乾勘患貫寒喚堪換敢棺款間閑勧寛幹感漢慣管関歓監緩憾還館環簡観
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矢旨死糸至伺志私使刺始姉枝祉肢姿思指施師恣紙脂視紫詞歯嗣試詩資飼誌雌摯賜諮示字寺次耳自似児事侍治
持時滋慈辞磁餌璽鹿式識軸七叱失室疾執湿嫉漆質実芝写社車舎者射捨赦斜煮遮謝邪蛇尺借酌釈爵若弱寂手主
守朱取狩首殊珠酒腫種趣寿受呪授需儒樹収囚州舟秀周宗拾秋臭修袖終羞習週就衆集愁酬醜蹴襲十汁充住柔重
従渋銃獣縦叔祝宿淑粛縮塾熟出述術俊春瞬旬巡盾准殉純循順準潤遵処初所書庶暑署緒諸女如助序叙徐除小升
少召匠床抄肖尚招承昇松沼昭宵将消症祥称笑唱商渉章紹訟勝掌晶焼焦硝粧詔証象傷奨照詳彰障憧衝賞償礁鐘
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埋め込みフォントファイルの作成方法

埋め込みフォントの作成には binary2ttf.py を利用します.
binary2ttf.pyは M5EPD のライブラリで提供されており,同じプログラムを M5FontRender 内のtoolsに同梱しています.
使用方法は binary2ttf.py があるディレクトリで以下のコマンドを実行するだけです.

python3 binary2ttf.py your_font_file.ttf

実行後、同フォルダ内に埋め込み用のCヘッダファイルが生成されます.

参考文献