Web API成熟度モデル


はじめに

Web API成熟度モデルについてまとめる。

Web API成熟度モデルを解説した日本語のサイトはすでにいくつかある。

しかし、これらのサイトで解説されているモデルは2009年にRichardson氏が提唱したRichardson Maturity Model(RMM)だけ。

実は、2017年にAmundsen氏が新たな成熟度モデル、Web API Design Maturity Model(WADM)を提唱している。Amundsen氏は、O'REILLYでMicroservice Architectureを上梓した方で、マイクロサービスにも造詣が深い。

ここでは2つの成熟度モデルを紹介し、その違いをまとめる。

成熟度モデル

Richardson Maturity Model

Richardson Maturity Model(RMM)は、文字通りRichardson氏が2009年に提唱した成熟度モデルである。

しかし、悲しいかな原著よりMartin Fowlerの解説記事のほうがよく引用される。まぁわかりやすいので。

RMMの成熟度には、次の4つのレベルがある。

出典:Fowler, Martin. Richardson Maturity Model, 2010

これらの成熟度は、以下のように定義される。

Level 0 Plain Old XML(昔ながらの単純にXMLを返すやり方)
Level 1 URLでリソースを表すようにする(リソースを動詞でなく名詞で表す)
Level 2 HTTPメソッドGET, POST, PUT, DELETE等を正しく使い分ける
Level 3 レスポンスの中に関連するリンクを含める

出典:RESTとは何か

Amundsen氏いわく、Richardson氏はRMMを特定の技術(specific technologies)に着目して定義した、とのことである。前述のLevelの定義を技術の側面でまとめ直したものが、以下である。

  • Level 0 URLだけ
  • Level 1 URL + Resource
  • Level 2 URL + Resource + HTTP Method
  • Level 3 URL + Resource + HTTP Method + Hyperlink = HATEOAS

すなわち、Level 0はURLを使っていても中身は昔ながらのXML。
Level 1はResource別にURLを実装してはいてもHTTP Methodは使いこなせていない。
Level 2はHTTP Methodも使いこなせているが、HATEOASにはなっていない。
Level 3はHATEOASになっている。

Web API Design Maturity Model

Web API Design Maturity Model(WADM)は、2017年にAmundsen氏が提唱した成熟度モデルである。

当然、RMMを熟知した上で提唱しているモデルなので、大枠はよく似ている。

WADMにも、4つの成熟度のレベルがある。それは次の図で表される。

出典:Amundsen, Mike. Web API Design Maturity Model, 2017

これらの成熟度は、以下のように定義される。

  • Level 0 データベース中心:JSONなどのマナの内部用データをそのまま外部にさらす
  • Level 1 オブジェクト中心:XSDなどでデータ構造を定義した内部用データを外部にさらす
  • Level 2 リソース中心:リソース毎に整理した外部用データを外部にさらす
  • Level 3 アフォーダンス中心:内部データ構造とは完全に分離した外部用データを外部にさらす = HATEOAS

成熟度は、Level0,1とLevel2,3大別され、前者は内部用データをそのまま、後者は外部用に整理されたデータをAPIとして外部にさらす点が異なる。当然ながら外部用データにまとめたほうが、APIとしての成熟度は高い。

一方、Level0,1の違いはXSD等のメタデータ定義をしっかりしているかどうかの違いである。また、Level2,3の違いは、HATEOASになっているかどうかの違いである。

Amundsen氏によれば、WADMは設計に着目した成熟度モデルである。そこにRMMとの決定的な違いがある。

どういうことか。

たとえば、次のようなREST APIを考える。

Request
DELETE http://hogehoge/internal-data
Response
HTTP/1.1 200 OK 
Date: Wed, 21 Oct 2015 07:28:00 GMT

OK

RMM の観点で言えば、一応 Level2になっていると言えるだろう。形式的にはURLでResourceを表現し、HTTP Methodを正しく使っているからだ。

しかし、そもそも内部用データinternal-dataを外部から削除できてよいのだろうか?おかしくないか?

ここで登場するのがWADMである。WADMの観点でいえば、これはLevel 0と言える。なぜなら、これは単にマナの内部用データをそのまま外部にさらしているだけだからである。

このように、設計の観点からAPIの成熟度を考えたのがWADMである。

まとめ

2つの成熟度モデルをざっくりまとめると次のようになる。

項目 RMM WADM
成熟度レベルの数 4 4
Level 0 URL Only データベース中心
Level 1 Level 0 + Resource オブジェクト中心
Level 2 Level 1 + HTTP Method リソース中心
Level 3 Level 2 + Hyperlink アフォーダンス中心
完全に成熟した状態 HATEOAS HATEOAS
着眼点 実装 設計、思想

どちらのモデルも4段階あり、最終的な成熟段階としてはHATEOASを指向している点に共通点がある。

一方で、RMMはSOAPやHTTP等の実装技術に着眼し、WADMは設計に主眼をおいていた点が異なっている。

それぞれの成熟度モデルは相補的なものであり、両方の観点で良いAPIを作りたいものである。