【退職エントリ】中国系仮想通貨取引所に立ち上げ期からジョインして、2年半働いて退職しました
この記事に関して
私は2020年11月(最終出社日は10月末)をもって、約2年半働いたOKCoin Japanを退職しました(職種はフルスタックエンジニア)
年末年始のお休みで時間があるので、退職エントリというものを書いてみようと思います。
フリーランスから正社員へ
入社前、私はフリーランスのJavaエンジニアとして活動していました。2年ほどフリーランスを経験したのですが、正直、正社員に転向したいなと感じていました。フリーランスは裁量が小さく、仕事のやりがいが少ないと思ったからです。
フリーランスとしていくつかの現場で正社員の方と一緒に働きましたが、正直、気楽でした。業務委託・準委任契約なので、成果に対してはコミットする必要はないですし、面倒な仕事だったり、スケジュールに影響しそうなクリティカルなタスクは正社員の方が巻き取ってくれます。
「効率よく仕事して高い報酬を得たい」「自分の興味ある技術スタックの案件を選んでスキルアップしたい」と考えるスペシャリスト志向の人には最適な働き方なのではないかと思います。
私はそれよりも、正社員としてのやりがいを感じたいな、と思い正社員に転向することを決めました。
入社の経緯
たまたま登録していた転職エージェントからOKCoin Japanの会社を紹介されたのがきっかけです。
自分が魅力的だと感じていた点は、
- 立ち上げの段階での募集だったこと
- ブロックチェーン・暗号資産に技術者として興味を持っていた
- 中国系の会社という点(外国人スタッフと働くのも良い経験になるかな、と思った)
です。
選考の結果、内定を頂くことができたので2018年5月1日からOKCoin Japanで働くことが決まりました。
入社してからの業務
私はフルスタックエンジニアとして、取引所システムの開発に携わりました。
入社時点では、全社員は4名。エンジニアは私とCTOという二人の状況でした。(なんと私の社員番号は4番だったのです。。。)その状況から、サービスインに持っていけたのですから、非常に感慨深いものです。
その過程で、中国出張にも行きましたし、採用活動(面接とか)にも携わったり、開発フロー考えたり、社内ツールの管理者業務やったり、、、etc
徐々にメンバーは増えていったので、雑多な業務は減っていき、最終的にはコーディングに専念するようになりました。ただ、こういった色々な仕事したのも良い思い出です。今となっては。
取引所プラットフォームは北京の親会社が既に構築済みでした。このソースコードをベースに日本用のシステムへ改修することが、私を含めた日本法人のエンジニアのミッションでした。
ベースとなるソースコード既に存在していたものの、日本と中国の法規制や慣習が異なるため、改修ポイントは多岐に渡りました。特に顧客管理の点で改修が多かったです。
その中でも、特に私はKYC関連の機能開発を担当していました。社内での仕様調整、反社DBをするベンダーとのMTG、設計・実装....といった具合に特定の機能に関して幅広く経験することができました。
スタートアップだからこその裁量の大きさだと感じています。
様々な困難を経てのライセンスの取得
暗号資産取引所(=暗号資産交換業者)を日本で運営するには、金融庁からの認可が必要になります。私が入社した段階では国内取引所のCoincheckでのハッキングが問題になっており、規制が一層厳しくなっているような状況でした。
そのような状況下で、OKCoin Japanの認可取得の道程は非常に長いものでした。そして道程は必ずしも順調ではありませんでした。
エンジニアの中では退職する人は少なかったのですが、他部署で多くの人が会社を去り、そして新しく人が入ってきて、、、というのを繰り返していました。
中国系企業ということで外国籍のスタッフが多い上に、暗号資産取引ライセンス取得というチャレンジングことを目指している、そしてメンバーのバックグランドもバラバラでした(金融機関出身の人もいれば、そうでない人もいたり)
エンジニアは裁量労働制ということで、比較的自由な時間に出社していたのですが、金融機関出身の他部署のメンバーの中にはそれを良しとしないと考える人もいたり、、、、
そのような”一般的でない”状況だったので、考えが会社と合わない人は会社を離れていきました。特に、上層部と馬が合わなかった一部の法務部門のメンバーは、喧嘩別れするかのように会社を去りました。彼らの一部は全社員の所属するチャットルームで堂々と会社を批判するなどと、一時期会社の雰囲気は最悪でした。
特殊な状況だったんだと思います。特に問題を起こさず辞めた人に関しては責める気持ちはありません。
色々ありましたが、最終的には2020年3月30日に金融庁から認可を得ました。私が入社してから2年弱経過してのことでした(★)
新型コロナウイルス下における会社の対応と退職の決意
2020年4月7日、政府からCOVID-19の感染拡大に伴う緊急事態宣言が出されました。それを踏まえて「原則、半分のメンバーが交代交代で出社」という会社の決定が社内チャットツールに展開されました。つまりは、日数の半分は出社ということとなりました。
私は正直「え、仕事は自宅でもできるし、なんで出社するの?(むしろ私の場合、自宅の方がコーディングする環境良いし。モニタとかデスクとか。)」と思いました。
私は、上記の決定に対して「なんでそのような決定になったのでしょうか? 決定の経緯を教えてほしいです。他の社員の方も同様に感じています。」という旨のリプライをしました。(実際、私以外にも反応した人は数名いました)
最終的に会社の決定であれば従うのが社員ですが、ただ単に説明・理由を聞きたかっただけです。
その後、そのメッセージにリプライはなく、上層部に直接呼び出しを受けました。
そこでこのように言われました。
「在宅勤務は生産性を下げるので基本的に会社としては出社を要求する」
「これが会社の決定なのだから、従えないのであれば会社を辞めた方が良い」
「君が会社の決定に対して、色々と意見を言うのは会社の雰囲気を乱す行為である」
「自分とは考え方が違うな」というのが正直な感想です。
私はコロナ云々関係なく在宅勤務賛成派ですし、在宅勤務は生産性を高めると思っています。また、「会社の決定」というのも、(良いか悪いかはさておき)一方的だなと思いました。なにより悲しかったのは会社の意思決定に関与はおろか、質問や意見すらできないということでした(正確に言うと質問や意見はできるけど、それらをすると”雰囲気を乱す行為”と烙印を押されてしまう。。。。)
上記は私がそう思っているだけのことで主観的な意見です。会社の対応が客観的に良いか悪いかを論じたいわけではないです。この出来事は、考え方の相違が明確になっただけの話です。
だから、会社を退職することを決めました。あくまで円満退社で。
サービスインからの退職
退職を決意したからといってすぐに退職はしませんでした。まだ、サービスは本格稼働していなかったからです。(2020年3月30日にサービスは開始しましたが、取引はできない状態だったのです。)
初期に入社した身としては、サービスが本格稼働するまでは在籍したいという思いでした。
緊急事態宣言解除後は原則全員が出社という方針になりました。この決定に対しても内心不満はありましたが、その不満は吐露することなく粛々と出社して業務を行いました。
2020年8月11日、ついに現物資産の取引サービスが開始しました。(★)
正直、嬉しかったです。2年超働いて、ようやく本機能をリリースすることができたのです。
それと同時に、「もう思い残すことはない!」そう思いました。
本機能リリースから少し経過した後、上司に退職の意志を伝えたのです。
そして、2020年10月30日に最終出社日となりました。
ありがたいことに、同日に送別会を開いていただきました。コロナ禍という状況でありながら、部署関係なく人が集まってくれました。色んな人とたくさんの思い出話をしました。
2年半.... 一般的な日本人的には短い在籍期間、なのかもしれません。ただ私にとっては濃厚であり、色んなことがあった2年半でした。
送別会後、帰宅し、私はめちゃくちゃ泣きました。
泣いた理由はわかりません。喪失感から来る悲しみなのか、達成感による喜びだったのか。はたまた解放感を感じたのか。なんとも形容し難い気持ちだったのを覚えています。
入社して良かったこと
退職の経緯をつらつらと記載しましたが、入社してよかったなと感じたこともあります。以下が主に入社してよかったな、思う点です。
- 中国企業の勢いを感じることができた
- 暗号資産の可能性を強く認識することができた
- エンジニアとしてモダンな技術スタックでWebアプリケーションの開発経験が積めた
OKCoin Japanは中国発祥のOKグループに所属しており、OKグループはBinance・Huobiに並ぶ中国発祥の暗号資産取引所の一角です。
世界中に関連企業が存在しています。グループに所属する社員が年一回集まるパーティに参加したこともありますが、「世界中の才能のある人材が、中国発祥の、クリプト関連企業に集まっているなー」と強く実感しています。
退職理由
退職理由は得てして、会社の批判になりがちですが、私の退職理由はあくまで「自分と会社(業界)の考え方が違った」だけです。
「こういう会社にならなかった」などと記載もしていますが、私は初期メンバーである以上、半分は「自分の努力不足でそうなってしまった」とも考えております。
会社を批判するというよりは、あくまで自分の気持を整理するという意味で退職理由を述べます。
(理由1) 上層部のコンプライアンス意識の低さ
会社としてのコンプライアンス意識の低さを感じています。全社的にというよりは、意思決定を行っている上層部の一部のコンプライアンス意識の低さが問題だと感じています。
上述の通り、同社のシステムは北京の親会社が開発したソースコードをベースとしておりました。また、日本用の機能改修に関しても北京の親会社のエンジニアのリソースを存分に活用にして開発を行っていました。
しかし、会社としては対外的には100%自社開発と謳っています。社内では対外的には北京に開発を委託していることは口外してはいけないという指示が上層部よりありました。私はこの点に関して、公明正大ではないな、と内心感じていました。
そのような対外的に虚偽の説明を行っている企業が、金融庁の認可を得て、ビジネスを行っていることが恐ろしいと感じています。1社員として問題点は積極的に指摘していたつもりなのですが、自分の力不足もあって改善は見られませんでした。ある瞬間に、同社働くことに限界を感じました。だから、退職しました。
また、社内の規定上、私は退職後に同社の株を取得できる予定だったのですが、その約束が一方的に反故にされてしまいました。呆れて物も言えません.....
(理由2) 私が定義する”良いスタートアップ”ではなくなった
私が考える良いスタートアップとは以下の2点です。
1. 全社員が同じ気持ちで、同じゴールに対して努力している。
2. 社員1人1人が課題や問題点を提起でき、全社員で改善を行う組織。
最終的にこのOKCoin Japanはこれらの条件を満たさなくなったという点が、自分が辞めた最大の理由です。簡単に言ってしまえば、私的にはこの条件を満たさないと働いていて楽しくない、からです。
会社の意思決定方法が、完全にトップダウン(一部の役職者が意思決定する)となっており、チーム全体で仕事を進めていこう、という組織ではなくなりました。私のようなメンバークラスの人間が改善点や問題点を指摘しても、それが全体に反映されることがなくなりました。
入社の経緯でも説明しましたが、私は”裁量を持って働きたい”という思いでフリーランスから再度正社員に転向しました。なので、この状況は自分にとっては辞める理由になり得たのです。
正直、退職する直前数ヶ月は、仕事に対するモチベーションを維持するのが非常に難しかったです。最低限の仕事は当然こなしていましたが、「会社を良くしよう!」「良いアウトプット出そう!」という思いは皆無であり、あまり良い状態ではありませんでした。
あくまで「”自分が考える”良いスタートアップではなくなった」ということなので、この点が悪いどうかを言いたいわけではないです。
自分の志向と組織の考え方が違っただけのことだと思います。トップダウンである分、メンバークラスの責任が少なくなるわけで、そういった環境で仕事をしたいと考える人の気持ちも理解はできます。
私は主体的に働けないのであれば、正社員として働く(=時間を投資する)意味はないな、という考えの人間だったということです。
(理由3) 自分自身の成長・スキルアップとの方向性の違い
私は成長やスキルアップには主に2つの方法があると思っています。
1. 未知の課題に対して、自分なりに試行錯誤して成果を出すことで得られる成長。
2. 経験値が高かったり、自分とは異なる経験を積んだ同僚・上司とコミュニケーションしていく中で得られる成長。
私はこの2年半、主に1の点でエンジニアとして成長ができたと思っています。
金融・Webサービス・ToC・ブロックチェーンという部分は自分にとって未経験の分野であり、自分なりに勉強してキャッチアップしてきました。
しかし、2の部分での成長というものがあまりなかったかな、と思います。
2の部分での成長ができない、という点が退職の理由の1つです。
決して「スキルが高い人がいない」ということを言っているのではないです。知見を共有するという文化がなかった(また自身もメンバーとしてそうゆう文化を醸成できなかった)ことが原因だと思っています。
私自身はエンジニアとして、社内の勉強会を主催したりしていたのですが、
中々追随して主催してくれる人が現れませんでした。もうちょっと周囲の人を巻き込めたらなー、と少し後悔しています。
(理由4) 暗号資産(仮想通貨)業界に対する思い
私が暗号資産業界に興味を持った理由の1つに、ビットコインの目指す世界観、が挙げられます。
2009年にサトシ・ナカモトという人物が匿名でビットコイン・ブロックチェーンのホワイトペーパーを公開しましたが、彼はその中で、「既存の金融システムは不安定であるため、ブロックチェーンで、全世界の人が信頼できる経済圏を実現する」という旨の発言をしています。
私はこの点に非常に感銘を受けました。「テクノロジーの力で、世の中が変わる!」と本気で思いました。この点が、暗号資産業界に入ろうと思った理由の1つです。
しかし、現在、暗号資産取引所は、「お金に余裕のある人がマネーゲーム(≒ギャンブル)を楽しむ場所」になっているというのが私の考えです。取引所としてはユーザーにいかに取引してもらって、手数料を頂戴するか、ということが大事になってきます。
ブロックチェーンやビットコイン(を含めたその他の通貨)が、将来的には大きな役割を果たすだろう、という思いは入社前から今に至るまで変わりません。
ただ、暗号資産取引所の事業と、自分の携わりたかったことはギャップがあるな、と感じたのです。
退職後フリーランスに
2021年1月1日時点では、フリーランスとして業務委託で仕事をしています。(実は「会社を辞めよう!」と決めた2020年5月頃に開業届は税務署に提出していたのですw)
とあるWebアプリケーションの開発なのですが、フロントエンド(ReactJs)・バックエンド(Golang)での開発です。Golangは個人的に勉強しており、是非とも業務経験を積みたいな、と思っていたので、渡りに船の案件でした。
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この問題について(【退職エントリ】中国系仮想通貨取引所に立ち上げ期からジョインして、2年半働いて退職しました), 我々は、より多くの情報をここで見つけました https://qiita.com/Kohei-Sato-1221/items/27bdabe158ebefa816f7著者帰属:元の著者の情報は、元のURLに含まれています。著作権は原作者に属する。
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