Debian noroot 環境に MATE を導入する


はじめに

Debian noroot とは、 Android OS 上において root 権限を取ることなく Debian 環境を構築するためのアプリケーションです。

CPU の性能とメモリ容量が潤沢にある Android OS 端末であれば、 Debian noroot の導入によって Android OS 端末上で非常に軽快な Debian 環境を実現することが出来ます。

Linux ディストリビューションの1つである Linux MINT において採用されている統合デスクトップ環境の1つとして、MATE が知られています。

ここで、 Debian noroot 環境においては、デフォルトの状態の統合デスクトップ環境として Xfce4 が導入されています。

本稿では、 Debian noroot 環境において、デフォルトの統合デスクトップ環境の Xfce4 に代えて、 Linux ディストリビューションの1つである Linux MINT において採用されている統合デスクトップ環境である MATE を導入する手法について述べます。

本稿では最初に、"MATE の導入" の章において、Debian noroot 環境へのデスクトップ環境 MATE の導入手法について述べます。

次に、 "設定の変更" の章において、 Debian noroot 環境の起動時に MATE を自動的に起動するための設定の変更手法について述べます。

そして、 "MATE の起動" の章において、Debian noroot 環境から、デスクトップ環境 MATE を起動する手法について述べます。

最後に、 "結論" の章において、本稿の結論について述べます。

MATE の導入

統合デスクトップ環境の1つである MATE は、コマンドライン上から apt-get コマンドを用いて、以下のようにして導入することが出来ます。

 $ sudo apt-get install task-mate-desktop

設定の変更

前章の通りにパッケージ task-mate-desktop をインストールした後は、以下のように、Debian noroot 環境の起動スクリプトの一つであるシェルスクリプト /startx.sh において、 dbus-launch 経由で xfce-session コマンドを起動している行を mate-session コマンドを起動するように書き換えます。

/start.sh
...
rm -f /var/run/dbus/pid
fakeroot-tcp /usr/bin/env PATH=/usr/local/sbin:/usr/local/bin:/usr/sbin:/usr/bin:/sbin:/bin dbus-daemon --system

sleep 1
#dbus-launch --exit-with-session sh -c 'xfce4-session ; setsid sh -c "cd /proc/ ; for f in [0-9]* ; do [ \$f = \$\$ ] || kill -9 \$f ; done"' &
dbus-launch --exit-with-session sh -c 'mate-session ; setsid sh -c "cd /proc/ ; for f in [0-9]* ; do [ \$f = \$\$ ] || kill -9 \$f ; done"' &

wait

MATE の起動

前章で述べた設定変更を行った後に Debian noroot 環境を再起動すると、以下の画像のようにデスクトップ環境 MATE を起動することが出来ます。

なお、デスクトップ環境 MATE 環境を使用している時に一定時間内に各種操作を行わなかった場合、 MATE 環境標準のスクリーンセイバーが起動し、スクリーンセイバーを解除する際にパスワードを求められる状況が発生する場合があります。

この時、予めデスクトップ環境 MATE 環境の導入直後に、 passwd コマンドによってユーザーのパスワードを以下の通りにユーザー以外に知り得ないものに変更しておくことで、そのパスワードによってスクリーンセイバーの解除を行うことが可能になります。

例えば、Debian noroot 環境上でのユーザ名が u0_a200 であるとすると、以下のようにして、ユーザ u0_a200 のパスワードを変更します。

  $ env LANG=C LC_ALL=C sudo passwd u0_a200
  Changing password for u0_a200
  New UNIX password:            # (ユーザ自身以外に知り得ないパスワードを入力)
  Retype new UNIX password:     # (前に入力したパスワードを再入力)
  passwd: all authentication tokens updated successfully
  $

結論

本稿では、Debian noroot 環境において、 Debian パッケージ管理システムより Linux MINT 等において採用されているデスクトップ環境である MATE を導入し、 Debian noroot 環境の起動スクリプトの一つである /startx.sh を修正することにより、デフォルトの統合デスクトップ環境の Xfce4 に代えて Debian noroot 環境の起動時にデスクトップ環境 MATE を起動させることが可能となりました。

デスクトップ環境 MATE は、デスクトップ環境 GNOME2 からフォークされたデスクトップ環境であるため、 Debian noroot 環境へのデスクトップ環境 MATE の導入によって、各種 Linux ディストリビューションを導入した PC 端末と同様な快適性を持つデスクトップ環境として使用できる事が示されました。

謝辞

本稿の記述に当たって、 Android OS 端末上で非常に軽快な Debian 環境を実現することを可能にした Debian noroot 環境の開発者である pelya 氏に心より感謝致します。

そして最後に、 Debian noroot 環境Android OS 及び Debian 環境の全ての事に関わる全ての皆様に心より感謝致します。