arXiv adminから怒られた話
3行で
- arXivはTeXソースファイルで論文をアップロードする
- arXivは自動TeXコンパイルシステム (AutoTeX) を使っているが、どうしても正しくコンパイルできなかった
- しょうがないから既製PDFファイルを貼り付けただけのTeXソースでarXivに投げたらadminから怒られた
1. arXivとは
arXiv(あーかいぶ と呼ぶ) https://arxiv.org は有名なプレプリントサーバーです。査読を受ける前の原稿や、とりあえず英語でまとめた研究の原稿などが毎日投稿されるところです。数学や物理、情報系の人たちがよく使います。
似たようなものに bioRχiv (ばいおあーかいぶ https://www.biorxiv.org )、ChemRxiv(けむあーかいぶ https://chemrxiv.org )などがあります。
プレプリントサーバーに論文を投げる意図はいろいろありますが、先に公開することで先取権を主張できる、論文誌だと読むのにお金がかかるがプレプリントならタダ、など、いくつかメリットがあります。もちろんデメリットもあります。詳しくはぐぐってください。
2. TeXとは
TeX(てふ とか てっく と呼ぶ)は、組版システムのことです。普通はMicrosoft Wordを使って論文を書きますが、数学や物理、情報系の人たちはTeXを使って論文を書くのが普通です。
3. arXivの論文投稿ルール
arXivでは、TeXで書かれた論文はソースをアップロードすることというルールがあります。TeX以外の、Wordとかで作った論文の場合はPDFでアップロードします。
arXiv先生はプロなので、TeXで作ったPDFをアップロードすると「お前このPDF、TeXで作ったやろ!ソース寄越せや!」と言ってrejectします。
4. TeXをarXivにアップロードする
arXiv先生に怒られてしまったので、仕方ないのでソースを投げます。TeXのソースはこんな感じ。
\documentclass[a4paper]{article}
\usepackage{graphicx}
\begin{document}
\section{Introduction}
ron bun dayo
\end{document}
これを paper1.tex
とか付けてarXivに投げると、arXiv先生がAutoTeXというシステムを走らせて自動的にPDF化してくれます。
これは正しくコンパイルできた例です。正しくコンパイルできないと下の画面から先に進めません。
ただ、TeXで論文を書いてる人はそもそも手元で正しくPDFが生成されるようにちゃんとしたTeXソースを書いているはずなので、問題があるとすればだいたい、
- 画像のパスが間違っている(全部カレントディレクトリ指定じゃないとダメ)
-
\usepackage{graphicx}
じゃない何かにしてる(\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}
はダメ) - マイナーなクラスファイルを使っている(一緒に使っているクラスファイルもアップロードすれば問題無し)
とかの理由です。しかしエラーが出てしまうと解決がなかなかにめんどい。ハマると何が原因かわかりません。
5. そうだ、PDFをアップロードすればいいじゃないか
なかなかエラーが解決しないと、手元で作ったPDFをアップロードしたい衝動に駆られます。しかしarXiv先生は賢いのでTeXで作ったPDFは絶対に通してくれません。
そこで思いつくのが、TeXソースの中でその既製PDFを呼び出すようにすれば良いという発想です。これは結構簡単で、
\pdfoutput=1
\documentclass{article}
\usepackage[final]{pdfpages}
\begin{document}
\includepdf[pages=1-last]{paper.pdf}
\end{document}
という感じで main.tex
を作り、すでに準備した paper.pdf
と一緒にアップロードしてやれば良いわけです。
6. arXiv先生激おこ
さて、これでarXivにsubmitできたぞ、と思った矢先に、arXiv先生(arXiv admin)からメールが届きました。
Dear arXiv user,
Your submission appears to be a PDFLaTeX wrapper using pdfpages. This is an inappropriate submission, as it circumvents our TeX system. As a result, we have moved your submission to “Incomplete”.
Instead, please submit your TeX source. If there is a particular problem that you are encountering, please request assistance and include the specific error messages you receive, as well as your submit id.
Further submissions of this type may result in the loss of your submission privileges.
For more information about our TeX system and policies, see the following pages:
http://arxiv.org/help/submit
http://arxiv.org/help/submit_tex
http://arxiv.org/help/submit_pdf
http://arxiv.org/help/faq/whytexRegards,
arXiv admin
日本語に直すと、「てめぇふざけんな、rejectや。次やったらBANすっぞ💢(意訳)」という感じです。arXiv先生が怒っています。
補足しておくと、arXivの投稿は誰でもできるわけではなくて、大学等の研究機関のEmailアドレスによるアカウントか、そうでない場合は既存arXivユーザーから承認を得たアカウント、である必要があります。
これが your submission privileges
(投稿権限)です。
7. おわり
投稿権限を剥奪されてしまうととても困ってしまうので、すぐにごめんなさいして、ちゃんとTeXソースをアップロードしてなんとかしてエラーを取り除いて投稿しましたとさ。めでたしめでたし。
arXivのTeX自動コンパイルが通らない?そんなときは、
— 大上雅史|M Ohue (@tonets) June 30, 2019
\pdfoutput=1
\documentclass{article}
\usepackage[final]{pdfpages}
\begin{document}
\includepdf[pages=1-last]{paper.pdf}
\end{document}
を書いたmain.texと既成PDFを黙ってアップロード。
これやったらarXiv adminから「てめぇふざけんな、rejectや。次やったらBANすっぞ💢(意訳)」というメールが飛んできた。 https://t.co/UfCOEt558d
— 大上雅史|M Ohue (@tonets) July 4, 2019
Author And Source
この問題について(arXiv adminから怒られた話), 我々は、より多くの情報をここで見つけました https://qiita.com/tonets/items/b90a5be64252f4619a14著者帰属:元の著者の情報は、元のURLに含まれています。著作権は原作者に属する。
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