アイドルの睡眠データを3Dプリンタでオブジェ化して日本武道館で展示する


概要

5月6日に日本武道館で行われる、1000人のアイドルを集めた大交流会『アイドル博』。
この博覧会に、アイドルグループの・・・・・・・・・は『ねむりオブジェ』を展示しました。

ねむりオブジェは、4月22日の・ちゃん(・・・・・・・・・メンバーのこと。今回用いたデータは、その中の一人のもの)の睡眠データを3Dプリントで出力したものです。
2017年4月22日。この日は、・・・・・・・・・がはじめて沖縄で過ごした夜。
寒暖差が引き起こす体調の変化、見知らぬ土地への不安と期待、ライブを終えたあとの疲れと高揚感……睡眠データから、そんなことが読み取れるかもしれません。

手順は以下のとおりです。

1.Fitbitで・ちゃんの睡眠を記録する。
2.Python-Fitbitで、記録した睡眠データを取得する。
2.Illustratorで睡眠データを折れ線グラフに起こす。
3.Photoshopで折れ線グラフを3Dデータにする。
4.印刷所で3Dデータをプリントする。

制作

睡眠の記録

睡眠の記録にはウェアラブル機器のFitbitを使いました。Fitbitを付けて眠ると、睡眠の質が1分刻みで記録できます。そのデータ3Dに起こし、プリントして「モノ化」します。

ねる前の・ちゃん

Python-Fitbitで1分ごとの睡眠の質を取得。

get_sleep_level.py
import fitbit
import datetime

FITBIT_CLIENT_ID = ""
FITBIT_CLIENT_SECRET = ""
FITBIT_ACCESS_TOKEN = ""
FITBIT_REFRESH_TOKEN = ""

fitbit_authd_client = fitbit.Fitbit(FITBIT_CLIENT_ID, FITBIT_CLIENT_SECRET, access_token=FITBIT_ACCESS_TOKEN, refresh_token=FITBIT_REFRESH_TOKEN)

date = datetime.date(2017, 4, 23)
sleep_level_array = []

try:
    data = fitbit_authd_client.get_sleep(date)["sleep"][0]

    for minute_data in data["minuteData"]:
        sleep_level_array.append(int(minute_data["value"]))

except IndexError:
    print("IndexError")

1分ごとの睡眠の質

グラフ化

Illustratorで睡眠の質を折れ線グラフ化。①覚醒、②寝返り、③熟睡の三段階で、高い山が覚醒、低い山が寝返り、平地が熟睡。
折れ線グラフになった睡眠データ

3D化

円弧状に変形。Photoshopの『3D押し出し』で3D化。stlファイルとして出力。
3Dになった睡眠データ

3Dプリント

3Dプリントは、秋葉原にあるナノラボに依頼しました。

現代アイドルの「チェキ会」は事前準備が大変💦
徐々に姿を現してきました…完成まで残り約20時間!#武道館アイドル博2017 pic.twitter.com/ORuTb6Ft77

— ・・・・・・・・・運営 (@tokyo_tsukurou) 2017年5月4日

プリント中
プリント中

最後に、半透明のチューブをループさせてオブジェに接着、頭から被れるようにしました。
この中に頭をいれて、・ちゃんの睡眠データのなかで、すやすや眠るイメージ。

当日のレポート

なぜ、こんなモノをつくったのか?

睡眠という、目に見えないぼんやりとした概念を、手に取って触れる「モノ化」したかった。

なぜ「モノ化」したかったのか?
それを説明するには、アイドル史を遡らなければなりません。

その昔、アイドルはテレビ越しに見るものでした。どんなに近づいても、ステージと客席まで。当時のアイドルは、遠く離れた場所におり、神秘のヴェールに包まれた、手の届かない存在。

そこにAKB48が登場しました。AKBは「会いにいけるアイドル」をコンセプトに、小規模な劇場や握手会といった、至近距離でアイドルと接触できるシチュエーションを提供しました。

その接触を推し進めたのが、現代の地下アイドルです。AKBよりも頻繁に交流会が開かれ、その内容もディープになりました。SNSでのオタクとのやり取りも濃密に、頻繁になり、Twitterでリプライを飛ばせば、返事が貰えるような超至近距離の時代。

・・・・・・・・・は、アイドルをもう一度、お天道様のような存在に戻そうというプロジェクトです。
もっとも、ただ距離を遠くするだけでは、ただの先祖返りにすぎず、何の面白みもありません。現代のテクノロジーを用いることで、昔には不可能だった「遠く離れて居るのに、親密な関係」を実現する。そのために我々が選んだのが、モノ化した生体情報です。意思によってコントロール不可能な身体のシグナルを、言葉ではなく、イメージでもなく、触って感じる。

アイドルの進化は、メディアの進化と歩みを同じくしてきました。・・・・・・・・・は、まったく新しい表現媒体をつかって、アイドル史を更新します。

P.S.

ねむりオブジェの他にも、・・・・・・・・・は・ちゃんの心拍に合わせてリアルタイムにスマホが震えるHeartSyncというアプリや、五感を感じる交流会『五感チェキ』(・ちゃんの匂い・声・姿・味・触感を味わえる)を展開しています。最先端の技術で、原始的な情動を呼び起こす………!



後日談:abemaTVで紹介されました(2018.7.26)