第4回 EIGRPとOSPFをパケットトレーサー で再配布してみた


今まではクラウド中心に記事を書いてましたが、今回はちょっと内容を変えてネットワーク現場でよく見かける定番のルーティングプロトコルのOSPFとEIGRPの再配布に関してパケットトレーサーの仮想環境も添えて構築していきます!

再配布とは?

異なるネットワーク領域に対し、プロトコルの内容を変換して送信する技術です。
大企業では全国にネットワークを構成するためWAN内ではEIGRPやBGPなどのプロトコルを使用し
社内などの中規模LAN内ではOSPFを使用するなど、一つのプロトコルのみを使用してネットワークを構成するのはほぼ不可能になっています。
そういう時に、LANからWANに向かってプロトコルの変換を実現してくれる技術が
再配布(redistribute)です。

OSPF

Open Shortest Path Firstの略語で、RFCで標準化されている
小規模から大規模ネットワーク向けの※リンクステート型ルーティングプロトコルです。
IPv4アドレス対応のOSPFv2とIPv6アドレス対応のOSPFv3の2種類があります。

リンクステート型
どのルータとどのルータが隣接(リンク)しているかという接続情報(リンクステート)を交換し合い、この情報の集合に基づいてどこにパケットを送るかの経路を選択する方式です。

EIGRP

Enhanced Interior Gateway Routing Protocolの略語で
ディスタンスべクト型とリンクステート型の両方の利点を備えた、シスコ独自のルーティングプロトコルです。
もちろんIPv6にも対応しており、名称はEIGRP for IPv6と言います。

ディスタンスべクタ型
ネットワーク内でほかのルーターに対してのディスタンス(距離)ベクタ(方向)の要素を加味して最適なルートを選択する方式です。

パケットトレーサー で実際に環境を作ってみよう

完成図

IPアドレス設定時の注意

ルータは異なるネットワーク (ネットワークアドレスが異なるネットワーク) を接続するものなので、同じネットワーク帯のIPアドレスをFa0/1とSe1/0など異なるインターフェイスに設定することはできません。

RouterA~RouterBの間で11.0.0.1~11.0.0.254までのアドレス帯を使用してしまったので、RouterA~PCの間でIPアドレスを設定する際は11.0.1.1~11.0.1.254を設定します。

セグメント 使用可能最小IPアドレス 使用可能最大IPアドレス
RouterA~RouterBの間 11.0.0.1 11.0.0.254
RouterA~PCの間 11.0.1.1 11.0.1.254

同じくRouterB~RouterCの間では192.168.1.1~192.168.1.254までのアドレス帯を使用してしまったので、RouterC~PCの間でIPアドレスを設定する際は192.168.11.1~192.168.11.254までのをアドレスを設定します。

セグメント 使用可能最小IPアドレス 使用可能最大IPアドレス
RouterB~RouterCの間 192.168.1.1 192.168.1.254
RouterC~PCの間 192.168.11.1 192.168.11.254

投入コンフィグ

RouterA
interface FastEthernet0/1
 ip address 11.0.1.1 255.255.255.0
no shutdown

interface Serial1/0
 ip address 11.0.0.2 255.255.255.0
no shutdown

router eigrp 100 ←EIGRPを設定
 network 11.0.0.0
RouterB
interface Serial1/0
 ip address 192.168.1.1 255.255.255.0
no shutdown

interface Serial1/1
 ip address 11.0.0.1 255.255.255.0
no shutdown

router eigrp 100
 distance eigrp 90 100
 redistribute ospf 2 metric 100000 100 255 1 1500 OSPFRouterAに再配布
 network 11.0.2.0 0.0.0.255
 network 11.0.0.0

router ospf 2
 router-id 3.3.3.3
 log-adjacency-changes
 redistribute eigrp 100 metric-type 1 subnets EIGRPRouterCに再配布
 network 192.0.0.0 0.255.255.255 area 0
RouterC
interface FastEthernet0/0
 ip address 192.168.11.1 255.255.255.0
no shutdown

interface Serial1/0
 ip address 192.168.1.2 255.255.255.0
no shutdown

router ospf 2 ←OSPFの設定
 router-id 2.2.2.2
 log-adjacency-changes
 network 192.0.0.0 0.255.255.255 area 0

コンフィグ設定の結果

RouterA
RouterA#show ip route 
C - connected 直接つながっているルーティング
D - EIGRP EIGRPの設定
EX - EIGRP external
EIGRPが外部から再配布により外部柄取得した外部エリアのルーティング情報
Gateway of last resort is not set
→デフォルトルートが設定されていないですという意味
 11.0.0.0/24 is subnetted, 2 subnets
C 11.0.0.0 is directly connected, Serial1/0
C 11.0.1.0 is directly connected, FastEthernet0/1
D EX 192.168.1.0/24 [170/20537600] via 11.0.0.1, 00:02:37, Serial1/0
D EX 192.168.11.0/24 [170/20537600] via 11.0.0.1, 00:02:37, Serial1/0
viaは次に経由するのルーターのアドレス
RouterB
RouterB#show ip route 
C - connected 直接つながっているルーティング
D - EIGRP 
O - OSPF OSPFの設定
省略
Gateway of last resort is not set
11.0.0.0/24 is subnetted, 2 subnets
C 11.0.0.0 is directly connected, Serial1/1
D 11.0.1.0 [90/20514560] via 11.0.0.2, 00:03:15, Serial1/1
C 192.168.1.0/24 is directly connected, Serial1/0
O 192.168.11.0/24 [110/65] via 192.168.1.2, 01:06:11, Serial1/0
RouterC
RouterC#show ip route 
O - OSPF 
E1 - OSPF external type 1 
省略
Gateway of last resort is not set
 11.0.0.0/24 is subnetted, 2 subnets
O E1 11.0.0.0 [110/84] via 192.168.1.1, 00:00:19, Serial1/0
O E1 11.0.1.0 [110/84] via 192.168.1.1, 00:00:19, Serial1/0
C 192.168.1.0/24 is directly connected, Serial1/0
C 192.168.11.0/24 is directly connected, FastEthernet0/0

RouterAとCはRouterBを経由して外部の経路情報を受け取ったことがルーティングテーブルに記載されているので構築成功です。

次回予告

次回は現場で行われたペーパーレス化に関して投稿予定です。