回路の合成抵抗R:対称性による開放と短絡について|電気回路Ⅰ


先日、後輩からこんな質問がありました。

「この図形の回路で、AB間とEA間の合成抵抗を求めろって問題なんですけど、どう解くんですか?あと、AB間とEA間ってどういういみですか?」(各辺が1[Ω]の回路)

電気回路について少しでも学んだ方なら大抵出くわす問題ですね。答えも特別な公式とか使わないで抵抗の直並列接続の計算さえできれば、十分に解ける問題だと思います。

だけど、この問題で必要になるテクニックで、「回路の対称性」という考え方があるんですよね。やり方さえ覚えれば簡単に使いこなせるけど、「なんで対称やったら切り離せると?」とか「なんで短絡できると?」とか思ったことがないですか?。(自分がそうでしたwww)
この後輩君もそんな昔の自分と同じ道を歩んでいるということで、少しほっとした気持ちになりながら、ぜひこの問題について悩みぬいた答えを伝授したい!

と、いうわけで今回は「回路の対称性」と「同電位点の開放、短絡」について、自分の解釈の範囲ではありますが解説したいと思います。(そんなん知ってるわ!って人には少し物足りないかもしれません)

目次

  • 「回路の対称性」
  • 「同電位の開放」
  • 「同電位の短絡」
  • 5面体の合成抵抗
  • 後輩「AB間とEA間ってどういう意味?」

「回路の対称性」


上の図で示したものが大まかな「回路の対称性」についての説明です。(解説にはわかりやすいよう、この回路【一辺が1Ω】を使用して説明していきます)
やり方は、対称線について折り曲げてみて、同じルートをたどる電流どおしをイコールで結び、対称線上の回路の交点、同電位点を切り離す。または、短絡させるって感じですね。

でも、ここで疑問が生まれるはずです。そう、「なんで対称やったら切り離せると?なんで短絡できると?」ですね。

ここからは、回路に流れる電流の動きを見てその原理を(わかった気分になるぐらいには)説明していきます。

「同電位の開放」


上の図「同電位の開放」についてはこんな感じです。
例として1と1’についてみてみると、

例)左右について対称である場合
1 = 3 + 4
3' + 4' = 1'
3 = 3'は自明であるから 4 = 4'、1 = 1’が成り立つ

というように計算できます。
つまり、「なんで対称やったら切り離せると?」の答えとして「3、4に分かれる1と3’、4’が集まってできる1’は同じ電流と考えていいよね?また、それが成り立つなら2,5,6にも適応できて、5と4の電流が流れ込む交点を離した回路(右図)と考えても等価な回路として成り立つよね?」ってことです。(前提として各辺[抵抗]同じものを使います)

これにより右図の「回路の開放」ができます。(間違っても左右で切り離しちゃだめですよ‼ 4!=5ですからね)

さらに!

「4,4'や5,5'が同じになることはわかったけど、実際の回路じゃ導線で接続されているわけだし、4の電流が5’に流れたり5’の電流が4’に流れたりするんじゃないの?そしたらやっぱり切り離せなくない??」ってめんどくさい思考ループに入るひともいるかも?…(*´Д`)

ここで役に立つのが回路に関する次の性質です。

  1. 電流の流れていない枝を開放すると、開放端子間の電圧は零であり、開放することによる他の部分への影響はない。

これを使うことにより、いいですか皆さん?!電流4と電流5が流れ込む交点を縦に細長くして、これを枝と考えてみてください!(YとYを上下反転させたものを重ねたような)。
4=4',5=5'って言う事は先ほど証明したので、これをキルヒホッフ第一法則に適応したらどうですか?枝に電流は流れませんよね。だったら上記の性質で枝をちょっきんしてもいいですよね!(かなり強引ですが…)という事なんです。

つまるところ、今まで説明したことはこの回路の性質を理解してもらうためだったのです。これさえ理解していれば対称性による開放も、論理で理解しながら解くのも楽になりますよ~。

「同電位の短絡」

次は、「同電位の短絡」ですね。これは、回路の対称性と比べてものすごく簡単です(図も必要ないでしょう)。次の性質だけで簡単に理解できます。

2.同じ電位にある2点間には、どのような抵抗Rを接続しても、とりわけ短絡(R = 0)しても電流が流れず、したがって回路のほかの部分に影響を与えない。

説明といっても、この通りですね。電流というのは電圧(電位差)があって初めて流れるので、どのようにその2点間を結んだとしても、同電位(電位差なし)なら短絡しようが開放しようが抵抗による電圧降下が起きません。よって回路に影響を及ばすことがないのです。

5面体の合成抵抗

さて、ここまで「回路の対称性」と「同電位の短絡」について説明してきたわけですが、ここで、後輩君の質問である5面体の回路のAB間とEA間の合成抵抗を先ほどの解説を用いて解いていきましょう!。

・AB間の合成抵抗

  1. まずは、考えやすいように平面になるよう回路を描きます。
  2. 次に、この回路の対称線を探し、適切な場所を開放します。(注意:ここでは2つの端子(点A,B)に対しての対称線ということです)
  3. そしたら、この図から回路の作図をしてみます 五面体(回路図).png
  4. ここまで出来たらあとは抵抗の直並列回路の計算をするだけです。 例として…
(R_7+R_6)//R_5=\frac{2\times1}{2+1}=\frac{2}{3}…R'_5\\
R'_5+R_8+R_1=\frac{2}{3}+1+1=\frac{8}{3}…R'_1\\
(R_3+R_4)//R_2=\frac{2}{3}…R'_2\\
R'_1//R'_2=\frac{\frac{8}{3}\times\frac{2}{3}}{\frac{8}{3}+\frac{2}{3}}=\frac{8}{15}\\

となるのでAB間の合成抵抗は8/15[Ω]です。

・EA間の合成抵抗

次は、EA間の合成抵抗ですがこれも似たように計算するだけなので図と回路だけで説明します。

(この回路では「回路の短絡」を用います)

(220Ωではなくて1Ωと考えて下さいm(__)m)
この回路を計算するとEA間の合成抵抗は8/15[Ω]となります

後輩「AB間とEA間ってどういう意味?」

これで、「回路の対称性」については、説明し終わりました。最後に、後輩君の質問である「AB間とEA間の意味」について考えを述べて終わりたいと思います。
この質問に対して、「同じ回路なのにどうして見る端子の場所を変えて合成抵抗を求めるのか。見る端子の場所を変えるとどうして値が異なるのか」ということを考えます。

答えとして、この出題は「異なる端子間での入力インピーダンスを求めなさい」という風に書き換えることができます。これで、見る端子を変える意味も理解できると思います。また、入力インピーダンスを見ているという事なので、見る端子を変えることで値が変わります。これで納得できますね!

つまり「電子回路はどこからどこに至るまでの電流の動きを見るかによって全く違う回路になる」ということを言いたいわけです。

最後に

いかがでしたか?まだ投稿初心者で分かりずらいところもあるかもしれません。でも、自分がわからなかったものについて、いま悩んでいる人のためになるようにわかりやすく、を意識して書いてみました(なので厳密には説明が間違ってるかもしれません)。もしなにか質問や間違えがあったら教えていただけると有難いです。
最後まで閲覧、ありがとうございました!