Salome-Meca2019による片持ちはりの曲げ解析(ソリッド要素)


解析対象

  • 矩形断面はり

全長 L = 300 mm
b = 100 mm
高さ h = 20 mm

  • 境界条件

先端面に均等分布面荷重 w = 0.5 N/mm2
荷重点の反対側を固定
※ はり要素でモデル化する際は自由端に集中荷重 P = wbh = 1000 N

はりの弾性理論解

  • 材料特性
    ヤング率 E = 200 GPa
    ポアソン比 ν = 0.3

  • モデル化と理論解

下図のようにモデル化し,z軸方向の直線が,曲げモーメントを与えた後にも直線を保つと仮定する(Bernoulli-Euler theory)と,自由端変位 v は以下のようになる.

断面二次モーメント I = bh3/12 = 6.6667×104 mm4
自由端たわみ v = PL3/(3 EI) = 0.67500 mm
固定端反モーメント Mmax = PL = 3.0×105 N・mm
曲げ応力 σb = (Mmax/I) ×(h/2) = 45.000 MPa

※ 曲げ応力(bending stress)とは,はりの断面での応力の分布が線形と仮定し,曲げモーメントとつり合うようにしたものであり,実際の表面応力とは限らない.

メッシュ

  • 長手方向,幅方向は10 mm均等分割(均等分割を行うため,長手方向のエッジ(SubL),幅方向のエッジ(Subb),板厚方向のエッジ(Subh)のグループを作成しておき,サブメッシュの分割数をそれぞれ指定できるようにしておく)
  • 板厚方向は1分割→2分割→4分割→8分割→16分割と倍にして細かくして行く,5通りのメッシュを作成し,影響を考察
  • 六面体ソリッド2次要素のみを用いる
  • はりの中央で幅方向2つにパーティション(固定端中央にz軸方向のエッジグループを定義するため)
  • 固定端中央に応力を出力するためのエッジ(lineZ)を定義

コマンドファイル

コマンドファイルは以下の通り.
荷重は,loadFにz方向の面荷重(FORCE_FACE,FZ=-0.5)で定義.
lineZに沿う応力分布をテキスト出力(IMPR_RESU).

DEBUT(LANG='EN')

mesh = LIRE_MAILLAGE(FORMAT='MED',
                     UNITE=20)

model = AFFE_MODELE(AFFE=_F(MODELISATION=('3D', ),
                            PHENOMENE='MECANIQUE',
                            TOUT='OUI'),
                    MAILLAGE=mesh)

mater = DEFI_MATERIAU(ELAS=_F(E=200000.0,
                              NU=0.3))

fieldmat = AFFE_MATERIAU(AFFE=_F(MATER=(mater, ),
                                 TOUT='OUI'),
                         MODELE=model)

fix = AFFE_CHAR_MECA(DDL_IMPO=_F(DX=0.0,
                                 DY=0.0,
                                 DZ=0.0,
                                 GROUP_MA=('fix', )),
                     MODELE=model)

load = AFFE_CHAR_MECA(FORCE_FACE=_F(FZ=-0.5,
                                    GROUP_MA=('loadF', )),
                      MODELE=model)

reslin = MECA_STATIQUE(CHAM_MATER=fieldmat,
                       EXCIT=(_F(CHARGE=fix),
                              _F(CHARGE=load)),
                       MODELE=model)

reslin = CALC_CHAMP(reuse=reslin,
                    CONTRAINTE=('SIGM_ELNO', 'SIGM_NOEU'),
                    RESULTAT=reslin)

IMPR_RESU(FORMAT='MED',
          RESU=_F(MAILLAGE=mesh,
                  RESULTAT=reslin),
          UNITE=80)

IMPR_RESU(FORMAT='RESULTAT',
          RESU=(_F(GROUP_MA=('lineZ', ),
                   IMPR_COOR='OUI',
                   NOM_CHAM=('SIGM_NOEU', ),
                   RESULTAT=reslin),
                _F(GROUP_MA=('loadF', ),
                   IMPR_COOR='OUI',
                   NOM_CHAM=('DEPL', ),
                   RESULTAT=reslin)),
          UNITE=2)

FIN()

結果

z方向変位は理論解に近い値が得られている.

考察

板厚方向の要素分割を変えたときの固定端中央に沿う応力分布(SIXX = σb)のグラフを下図に描く.
 理論解よりも高めの応力が得られている.この原因として,固定端を完全拘束としたことで,はりの理論で考慮されていない,ポアソン比に起因する応力(y方向応力など)が発生していることが考えられる.
 また,要素分割を細かくすると,壁とはりとの接合境界(形状としては直角)の特異点の応力集中が観察され,応力分布が非線形になる.点の応力など,カラーコンター上での応力の最大値に着目するとこうした現象が含まれた応力を見ていることになり,注意が必要.応力の許容性を判断する上では,「点の応力」でなく,ある程度の幅広い範囲での分布のトレンドを観察することが重要.

このため,ポアソン比をゼロとして,応力分布が線形になる1層分割のケースを試してみた.その結果,x方向応力の最大値は,はりの理論(45 MPa)に近くなった.
 本研究の一部は科学研究費補助金(18K02963,代表:藤岡照高)の助成を受けて実施した.