Blackmagic Design の TICO を検証してきました


はじめに

先日 Blackmagic Design の東京オフィスで Teranex Mini IP Video 12G を見させてもらったので簡単にまとめておきます。

オフィシャルサイトはこちら

TICOとは

この製品で使われている TICO とは、intoPIX 社が開発&ライセンスしている映像ネットワーク伝送用のプロトコルのようです。詳しくはこちらから。

Teranex Mini IP Video 12G は TICO を伝送プロトコルとして使いつつ、コーデックはオリジナルのものを使っているらしいです。なので、TICO だから他の製品と互換性があるかというと、そうではないとのこと。NDI のようにはいかないのね。ちょっと残念。

性能

この製品のスゴイところは、遅延と画質のクオリティが優れている点です。
遅延はモードによって変わりますが、モードによる画質の違いはありません。

遅延

遅延は使うモードによって変わります。

モード 遅延
Low Latency 12 Lines
Clean Switch 2 Frames

Low Latency モードだと僅か 12 Lines! 1フレも遅れない!?
公式HPに "0.00094 sec - Can we say ZERO latency?" と書くだけのことはあるね。

Clean Switch モードでは2フレの遅延があるけど、画質を落として高速にしているとかではなく、画質(ビットレート)は同じだけど、受信側でバッファリングするかしないかの違いだけのようですね。
映像ソースを切り替えた時に Low Latency モードは一瞬黒味が表示されるけど、Clean Switch モードはそういうのが発生しない。それだけの違い。
なので、垂れ流し系でよければ Low Latency、スイッチングするなら Clean Switch といった使い分けになるのだと思います。

画質

ビジュアリーロスレスを謳っているだけあって、ソース映像との差はほとんど感じられません。
422 10bit 4:1圧縮の固定ビットレート(CBR)です。例えるなら ProRes 422 HQ とか DNxHD 440 がストリーミングされてくるような感じ。画質は NDI と比べるとかなり綺麗。その代わりアルファがないので、NDI のようにそのままキーイングして使う事はできません。

オーディオ

これ、すっかり聞くの忘れてました。
仕様をみると 48KHz/24-bit と書いてあります。オーディオの情報量は映像にくらべて圧倒的にすくないので、非圧縮PCMか可逆圧縮じゃなかと思います。

確認しました。やはり非圧縮のリニアPCM(48KHz/24bit)との事です。業務用として全く問題ないですね。

ネットワークインターフェイス

1Gbps 用と 10Gbps 用の2つのネットワークインターフェイスがあります。1Gbps でカバーできる範囲、つまり HD 3G の範囲までであれば 1G のイーサネットケーブルで問題なし。
4K 30p/60p はそれぞれ 6G, 12G となるので 1/4 圧縮しても 1G を超えるので、別売の SFP モジュールを使って 10Gbps のポートから伝送することになります。

電源

電源はAC 100Vです。PoE(DC 48V)を使う事もできます。内部ではインバータを使い DC 12V に変換してるらしいので、解体すればバッテリー運用の可能性もありあそうですね。(解体するとメーカー保証がなくなりますので、自己責任でお願いします)

API

ネットワークAPIを使って設定を切り替えることができるようです。受信側でソースをスイッチする場合はターゲットの IP アドレスを変更する必要がありますが、それをリモートから設定できるようです。
ただ、どのSDKを使うのか聞き忘れた & 調べても直ぐには出てこなかったので、これも分かり次第ご報告します。

これも確認しました。Videohub SDK を使うことで API アクセスが可能になるようですね。Windows or Mac に Videohub をインストールし、コントロールサーバー上で IP Videohub を作り SDK を介してコマンドを送ると、コントロールサーバー経由で IP Video 12G を制御できるようです。
この辺の詳細は、実際に動かしてから改めてレポートします。必要なアプリとドキュメントは以下の通り。

Videohub 及び Videohub SDK のダウンロード
Teranex IP Video 12G のドキュメント

まとめ

画質、遅延は NDI と比べると圧倒的にアドバンテージがあり、ライブ映像制作の本線として十分なポテンシャルがあると感じました。
ただ、PCから直接送受信することができないので、システムとして組み込むことはできても、アプリケーションとして実装するのは難しいのが残念なところ。

TICO が NDI のような立ち位置になって、色んなアプリケーションから使えると良いですね。TouchDesigner 的には TICO In/Out TOP とかあると嬉しい。Unity, Unreal でもプラグインとかで GPU Encode/Decode できるといいな。

最後に

検証の場を頂いた Blackmagic Design 東京オフィスの皆さん、ありがとうございました。
検証時に録画した映像について許可を得ていないのでここでアップすることはできませんが、暫くは iPhone に保存しておきますので興味がある方は会った時にでもお声がけ下さい。

GlassValley の TICO に関するドキュメントも見つけたので、こちらもご参考までにどうぞ。
GV Node Datasheet