CubeSAT の電波を受信する SDR アプリは何が良いか


初めに

めでたく人工衛星になった RSP-01 、通常は CW でビーコンを送出しており、衛星の状態を知らせてくれる。受信したテレメトリを見ていると、ちいさな衛星がけなげにがんばっているふうが見えて楽しい。RSP-01 は24時間以内にアップリンクが無ければ CW ビーコンは自動的に停止するようになっている。運用メンバーは文字通りサラリーマンがメインでの開発・運用なので、日中の時間帯に合わせての運用が難しく CW ビーコンが停止していることも多い。

RSP-01 など CubeSAT の CW ビーコン電波を受信するのはハンディトランシーバーでもできる。やはり SDR がベストだと思う。衛星が日本上空に飛来したときしか電波を受信することはできない。パスの時間は10分間ほど、時間はまちまちである。SDR では
受信機にもよるが 250KHz~ 2MHz の帯域を IQ ファイルの形式で録音することができ、あとで再生して受信状態を再現することができる。

手持ちの SDR 受信機 RTL-SDR、PlutoSDR、RSP1A が使える SDR ソフトを比較してみた。

SDRsharp

 もっともポピュラーでシンプルで SDR 初心者には分かりやすい。いろいろな追加の機能は Plugin が用意されコミュニティパッケージとして入手できる。

 Airspy の傘下になってから同社の AIRSPY SDR 専用化がすすめられているようである。Rev.1716 までは FrontEnds.xml のファイルに定義することで PlutoSDR も使用することができた。最新版 Rev.1811ではそのような機能が無くなっており PlutoSDR は使用できない。RSP1A はかなり前の Rev では使用できたが今は対応していない。使用できるのは AIRSPY、Funcube Dongle、RTL-SDR、HackRFone というところ。
 Rev.1800 以降 dotNet 5.0 が必要である。SDR# はもともと 32Bit 版で作られており dotNET 5.0 も 32Bit 版となる。私の PC は Win10 64Bit なのでなんの疑問もなく 64Bit 版をインストールして動かず、ずいぶんはまってしまった。
 このソフトの一番の弱点は録音再生機能だろうか。録音は受信時に録音ボタンをクリックして手動で行う。予約録音は標準ではインプリメントされていない。IFrecorder という予約録音の Plugin があるが、きわめて使いにくい上に録音したファイルが当の SDR# で再生できない。どうやったら再生できるのか情報がない。
IQ 録音したファイルを再生すると、前述のように受信時の状態を再現する。PAUSE 機能が無く STOP して PLAY すると常に頭から再生するので非常に使いにくい。またタイムスタンプは録音された時刻や開始からの経過時間などを表示するのではなく、現在時刻を表示するのであまり役に立たない。こんなふうであるが PC の前に座って操作するソフトとしては、これが一番わかりやすいと思う

HDSDR

SDR# と並ぶポピュラーであり、古くから幾多のバージョンアップを繰り返して洗練されてきたソフトである。初期のものはかなりの CPU パワーを消費するものであったが、今はそうでもない。多数のハードに対応しており、RTL-SDR はもちろん、RSP1A も使用できる。なぜだか PlutoSDR は指定された ExtIO_Pluto を認識できずに使用できない。予約機能は充実しており、画像のように複数の予約が可能で HDSDR を PLAY モードにしておかなくても設定時刻になれば自動的に録音を開始する。

再生がうまくいかない。ファイルを指定して再生すると、なぜだか、かなりの高速で再生してしまう。どこかに設定があると思うが見つけきれない。PAUSE 機能はあり、再生を止めて再開することはできる。タイムスタンプは、再生時からの経過時間を表示する。IQ 録音ファイル形式が SDR# と互換なので HDSDR で予約録音して SDR# で再生することができる。

SDR Console

以前はインストールしてから使用できる期間が1年くらいと、限られていたのであまり使っていなかったが、今はそのようなことはない。多くの SDR ハードウェアに対応しており非常に機能が豊富で予約録音機能もある。

画像は予約を設定して受信中の様子。画面の下側に経過時間、ファイル容量などの進行状況が示される。予約は一個だけのときにはSDR Console を PLAY 状態にしておかないと設定・録音できない。

複数の予約を行うときには REC/PLAY プレーンから Schedule をクリックすると上の画像のように Window が開き、中心周波数、開始時刻、収録時間を設定することができる。
録音したものを再生するときに PAUSE 機能あるので CW のビーコンを見ながら解読することもできる。

こうやって見ると、CubeSAT の受信に限って言えば、予約録音と再生機能が良くできている SDR console がベストだと思う。録音機能は便利であるが IQ 信号を録音する際に 受信帯域 500Khz、16bit の時 110MByte/分くらいの DISK スペースを消費するので注意が必要である。