光速を越えて動く点Pを物理的に実現する方法


独り歩きする「光の速度は越えられない」

「光の速度を超えることはできない」というのは、現代の人類の間では、地動説の次くらいに有名な科学的常識となっている。
相対論を認める限り、それは覆せない。

けれど実は「光速を越えて動いているように見える」ものの存在は、相対論では禁止されていない。

ここで重要なのは、光速を越えて動いているように見えるものを使って「光速を越えて情報を伝えることができない」ということだ。
相対論で要請しているのは、真空中の光の速度を越えて「情報を伝えることができない」ということであり、情報さえ伝わらなければ、何らかの抜け道はあっても構わない。

クソデカレーザーポインタとクソデカ黒板

地球上に、回転台に載ったクソデカレーザーポインタを構築する。レーザーポインタ自体がクソデカである必要はないが、クソ遠くにあるクソデカ黒板に点Pを照らせるほどのレーザーを考えるので、それなりのデカさになるだろう。

この回転台は、1秒間に180度回転させることができるとする。
このようなレーザーポインターと回転台を作ることに問題があるだろうか。いや、ない。

さらに、宇宙にクソデカ黒板を置く。「置けるのか?」という疑問はあるが「原理的には可能」という回答になるのではないかと思う。
地球を取り囲むように、クソデカ黒板を置く。

黒板は、レーザーポインターから10万キロメートル離れたところに半円状に置く。途中でレーザーポインターを遮る邪魔な星々があれば、点Pを表示する上で弊害になるので、すべて除去して欲しい。これもおそらく、原理的には可能であろう。

ここで、黒板の全長はπ * 10万km ≅ 31.4万kmとなる。

つまり、こういう状況ができあがった。

光速を越えて動く点P

現在、黒板の左端には、点Pが煌々と輝いている。ここで、回転台を動かすときが来た。この回転台は、1秒間に180度動くのであった。つまり

点Pが動いた!!

1秒間で点Pが黒板の左端から右端まで、点Pは1秒間で31.4万km/sで動くのだから、これは光速を越えている。

点Pが光速を越えて動いた!!

もし「xxを考慮すれば、これでは少し足りないのでは?」などの疑問がある人がいれば、黒板をより遠くに置いたり、回転台をより早くしてもよい。
また、回転台の回転角を小さくして、黒板をより遠くに置くか、回転台をより速く回すことで、黒板はこのような半円状ではなく、近似的に平面にすることもできる。

いずれにせよ、光速を越えて動く点Pは、物理的に実現可能だ。

ただし、左端にいる人から右端にいる人に、何一つ情報を伝えることはできていない。
なので、光速を越えて動く点Pの存在が、相対論を脅かすことはない。

追記

超光速運動という、見かけの上で光速を超える現象が実際にあることをTwitterで教えていただいた。

全く関係のない話

光通信が「速い」のは、光の速度が速いからなのだろうか?

普段は、通信の速い・遅いはビットレート、つまりMbpsなどで測ることが多い。
Mbpsという単位は、「光の速度は越えられない」で言っている「時間あたりに進む距離」の単位とは関係がない、「時間あたり、どれだけの数のビットを運べるか」という単位だ。

なので、光通信よりも「速い」通信は作ることができる。
つまり、今、私は、トラックにSSDを満載して高速道路を爆走するという話をしている。

さらに関係のない話

なお、さらに余談となるが。光の速度は屈折率により変わる。
光速度不変の法則で言っている光の速度とは「真空中の光の速度」のことを言うので、例えば水の中で光が遅くても、水の中を光よりも速く動く物質があっても、そこに物理的な矛盾はない。
ところで、光通信には普通、光ファイバーが使われるが、光ファイバーはガラスでできており、ガラスの屈折率は1.5もある。
つまり、真空中の光の速度は秒速約30万kmであるのに対し、光ファイバーの速度は秒速約20万kmしかない!!

空気中の光の速度は、真空中の光の速度とほとんど変わらないので、km/sで測った意味の速度であれば、無線通信や、あるいは、文字を書いた紙を掲げる通信方法の方が、光ファイバーよりも1.5倍速いと言える。

紙はともかく、無線通信については、ゲーマーやトレーダーなどの回線の遅延を気にする人にとっては「光ファイバーより無線通信の方が速い」という時代は来る(あるいは来てる)かもしれない。

まとめ

光速は 場合によっては 越えられる