ワークショップ よもやま話:02 "Tech is Fun"


この記事は littleBits Advent Calendar 2016 16日目の記事です。

Tech is Fun!

楽しさ全開のなんちゃらワークショップでも、学習要素の強いなんちゃら講座でも、いずれにしても "Tech is Fun" なストーリーは参加する子どもや大人にとてもとても力強く記憶されるわけですが、では、Fun なるものの正体ってなんだろうって思うわけです。

個人的には、完成予想図に沿って組み立てるだけじゃなくて、そのあと、ほかの機能や概念と(うっかり)結びついてしまうことや、ほかの参加者のつくっているものをみて(うっかり)浮かんでしまったアイデアを膨らませること、子ども向けイベントに保護者として参加してるのに(うっかり)子どもになってしまった大人が(これまたうっかり)本気で繰り出してしまったワザ(これこそがエンジニアリングそのものだったり)に、見惚れ、憧れ、自分にもできるかも!って思った子どもがさらに異次元の作品を繰り出してしまう、そういう予定調和の外側にあるものが Fun だったりするとも思うわけです。そして、その Fun を生み出す土壌として、littleBits をはじめとする、手触りとしてタンジブルで、アウトプットがビジブルなツールをつかったワークショップは適していると思うのです。

思いついちゃったんだから、仕方ない。

で、本稿では、幸いにもそんな 想定外な Fun な瞬間をつくることに貢献したモジュールを紹介しようと思います。
「思いついちゃったんだから、仕方ない。とりあえず作ってみるか」
そんな うっかりな情熱 に応えてきた珠玉のモジュール、ベスト3です。

情熱に応えるモジュール: 第3位 「 RGB LED 」

これはワークショップでも安定した人気があります。なぜなら光の色を変えられるんですから。

子どもも大人も光に触れる機会はとても多くて、光をコントロールして生活しているといってもいいくらいだと思います。
まあ、太陽系に生きている以上、Sun-shine の恩恵に預かって今があるわけですし、"カムチャッカの若者が..."という地動説的なことを知らないちっちゃい子でも、朝が来たら目が覚め、夜になったら眠ることが、どうやら"おひさま"というなにかの仕業らしいぞという認識はDNAレベルで刻まれているかと思います。

そういう身近な「光」ではありますが、子どもたちの身の回りでできることと言ったら、「真っ暗はこわいから"ちっちゃいでんき"にして眠る」(筆者幼少時の記憶)レベルの、On-Off、Max-Min くらいのことしかないわけです。
食肉売場に行くと赤い光が多いとか、家具屋さんには蛍光灯が少ないとかそういうことに気が付くのは Money を自分で動かせるようになって、経済こわい! がわかってきてからですよね。

で、話は戻りますが、そんな光の色を、R,G,B の3つのつまみをまわすだけでコントロールできるんです。こんなかんじで。

で、このモジュールの意味を説明するときのポイントをいくつかあげます。

  • 大前提として、光の色は変えられるということ → 子ども「まじすかー!!」
  • R,G,B, ちょちょっと回すと変わるよ → 子ども「変わったー!!」「あーるじーびーってなんすか?!」
  • 光の三原色の説明 → 子ども「で、あーるじーびーってなんすか?!」
  • 保護者に説明をゆだねる(それぞれが頭文字だというとだいたい大丈夫)「R は...」 → 子ども「まじすかー! 保護者すっげー!! もっと教えてー!!」

あるいは学年が上の子が多ければ、ふだんさわってるゲーム機も、テレビもパソコンも、画面という画面あらゆるものが基本的にこういう方法で色をつくっているという説明をするわけです。
そうすると
「じゃあ、マリオの色は何色? どうやってつくる?」
「じゃあ、ルイージは?」
「自分の机のライトの色は?」
「じぶんちの冷蔵庫の中の光の色は?」
「クリスマスのイルミネーションの色は?」
「眠るときは電気は何色? 消す?! 真っ暗?! こわくないの? あっそう。」
といったかんじで、Tech と自分の記憶や生活がどんどん近づいて、オーバーラップしていくわけです。そういうところにも子どもに Tech を教える意味がある気がしています。
また、大学生向けのワークショップとかでは、htmlの色指定のこと、色温度、色空間、カラープロファイル(sRGBとかAdobeRGBとか)のこと、同時にいかなるカラープロファイルでも人間の目には勝てないこと、逆にインクには、ブラックとリッチブラックというのがあって...とか。
そして、より精密にコントロールするなら Arduino モジュールが使えることにも展開しています。

本項のまとめとして、作例の写真をいくつか載せておきます。

情熱に応えるモジュール: 第2位「 PULSE 」

これも定番ですね。パルス。
前項と主旨はほぼ同じですが、キラキラ ピカピカ を自分の手で再現できることにとても価値があります。
身の回りで、なんらかの回路が On-Off を繰り返すことで意味を成していることは、光以上に多いでしょう。その点で PULSE がおもしろいのは、光だけではなく音や動きに対しても On-Off を繰り返すという効果を与え、いろいろなものを再現することができるところでしょう。

前項でいろいろ書きすぎたのでコンパクトにまとめますが、PULSE の盛り上がるポイントはこんなかんじです。

  • まぁ、光がピカピカするのはわかる。
  • On-Off のスピードが変えられるのもわかる。
  • ブザーのなる間隔を変えられるのもわかる。
  • 「じゃあ、高速でブザーをならしてごらん」 → 「ブーーブーー ブーブー、ブッブッ、あれ?! 光のピカピカほど高速にならない!! なんで?!」
  • 「そうかー じゃあ DCモーターはやってみた? サーボモーターは?」 → 「できないできない!!」

あるいは、

(YouTube などで踏切の映像を見たあとで)

  • 「踏切の警報ランプはいくつある? 作れる?」 → 「できた」(RGB LED や Inverter を使って)
  • 「じゃあ次に、警報音つくれる?」 → 「できた」(Buzzer や Pulse を使って)
  • 「じゃあ、映像をもう一度見て、警報ランプと警報音を組み合わせてみて」 → 「できた」 → きれいにシンクロしてる → 「ほんと? そんなにピッタリになってる?」 → 動画を見るとぴったりシンクロしているものはほとんどない → (車のウィンカーは光とカチカチ音が同期している) → それはなぜか。回路が別だからか。なぜ別の回路になっているのか。踏切という人の命を守る仕組みにおいて回路が複数あることのメリットはあるのか。あるとしたらなんだろうか。どういうときに効果を発揮するのか。

なんてかんじでツボに入っていくわけです。そしてその答えのようなものに至った時に Tech is Fun の扉がまたひとつ開かれるわけです。
そしたら PULSE を2つつなげたらどうなるんだろうとか思いついちゃって、実際にやってみて「そういうことかー! ぎゃふんぎゃふん!」ってなるわけです。 楽しいですね~。

情熱に応えるモジュール: 第1位「 FAN 」

これはですねー、Actuator(アクチュエーター・動作するもの)として、すごいポテンシャルがあるんです。本来の Fan という機能以外に。
これについては、作例を見てもらったほうがはやいです。

こちらは「風」を素直に使った作例。「風鈴

こちらも「風」。3連Fanの「しゃぼん玉マシーン

このあたりから想定外。ものを浮かせる

モーターを使わずに、Fanで 回す

こちらは「まわす」→「しゃべった声に合わせて こちょこちょする

そして、子どもたちのスイッチが入ったらこうなる

そういうことなんですよ。楽しいんです。自分のアイデアを活かすことは。
そしてそれは尊いし、シンパシーを生む。
この、Fan をろくろのようにして作った作品は、子どもたちみんな続々と真似して最後はものすごい数になりました。

前回も書きましたが、答えのないワークショップっていうのはこういうことなんだと思います。

以上、情熱に応えるモジュールベスト3の紹介でした!! Tech is Fun だぜ!!