回答とは目線を合わせること


「ねえおかーさん、『い』と『こ』っておなじだよね」
「ねえおかーさん、『6』と『の』っておなじだよね」

みたいな質問をチビッコから受けることがあります。「おなじだよね」と言われてハッとするのですが紙の向きを変えるとたしかに大体同じです...

Long, long ago.

それと同じと言えるか難しいですが、昔も今も、質問の意図について気づき、目線を合わせて回答する力はカスタマーサクセスエンジニアの醍醐味です。ここでは、1つの事例を見ながら回答する側の「回答力」について書きます。

具体例を引用しながらの説明になりますがもちろん質問者を責める意図はなく、むしろ有意義に引用できる良い事例だなと恐縮しつつの記載です。

アンチパターン例

質問頂いた最初の状態

実際の例から少々整形したもの
トラブル対応
参照URL: https://example.com/

回答期限: 
2021-12-xx (←今日とか明日とか)

機能名(例): ***サブシステム
Version: x.x

(中略)

発生事象:
(画面名A) にて下記エラーが発生
「サーバでエラーが発生しました。システム管理者にご連絡下さい。」
その他、(画面名B) にてnow loadingから進まないという事象が発生

頻発して検証が進められないと伺っており、
お手数をおかけしますが原因調査をお願いできますでしょうか。
※具体的に何分に1回などは分かっておりません。

確認したこと:
**チームにて、インフラ上に問題が見受けられないこと回答を頂き、
(以下略)
参考: https://example.com/

その他:
同様の事象が他の画面でも発生していると伺っております。
具体的に教えて頂いた画面が (画面名A) でしたのでこちらに依頼しました。

内容はお客様から聞いた情報になります。
あまりにも曖昧な箇所が多いので一度確認する予定です。
もしその際に画面ログ以外に必要な情報があれば (以下略)

発生日時:
2021/11/30 9:00以降

例を見てわかるとおりなんとなく埋めていただきたい項目は用意しているのですが、埋めて頂いた結果、結局欲しい情報が埋まっていると言うより余計わからないように見えることがあります。

内容はお客様から聞いた情報

って、そんな伝聞で言われてもというのがプログラムと向き合う者には本音です。

質問への回答1 (アンチパターン)

- エラーが発生した時の画面キャプチャ
- 発生時刻(時刻までできれば)
- ログインユーザ
- 発生画面名
- ご利用のブラウザ

を控えておいていただいたうえで、
***.log と照合などしたいところです。

考えた結果、返答するだけ有り難いと思っていただきたいという気持ちで、少し意地悪目にこんな返答をするのが大体余裕のないときの私です。

質問への回答1への回答

さてそうするとこうなります。

2021/12/02 14:10~15:00
この期間使用しておりましたが、絶え間なく発生していました。

>- ログインユーザ
user1、user2

>- 発生画面名
画面1
画面2
画面3
その他複数

ひとまずlog添付があるが、エラーなどは出ていない。

2往復目に突入しつつも、結局具体的なことがまだわからない... となるわけです。

アンチパターンへの典型的な声

開発側ではこんな声になります。
電話 がなくなった昨今はこの時点でSlackに連絡が飛び込むわけですが、自分もこの夕方の保育園の迎えに出ている時間に何を言っとるんじゃあ等とスマホ片手に膝が崩れる思いなことがあります。

  • 対顧客側の発想は、「状況や表面的なエラー内容などから、ログにどんなエラーが出るか開発は分かっていて、発生時刻が細かく分からなくても検索できるはず」なのですよね。この食い違いは非常によくありますね。

  • もっと詳細をヒアリングしてほしいというのはありますね。
    「こういう報告ありました、ログファイルは多分これだと思います、調査よろしくお願いします。足りないログがあれば教えて下さい」じゃなくて、何月何日何時何分から何月何日何時何分くらいまで、どの範囲で、どういう問題があって、どう困っているのかという確認をしてくれ、それは開発にはできない、という話

アンチパターンを断つ対策

回答者側も冷静にならなければなりません。どういう目線でこの質問に至っているのかを確認します。

1. 顔を合わせることを約束してしまう

2往復目に突入した時点で腹をくくり、Web会議で1度すり合わせる旨を約束します。
とりわけ リモートワークのための質問力向上研修を実施しました - Classi開発者ブログ を読み、質問の仕方はもちろん、回答者の心得、すなわち「回答力」になるほどと思いました。以下画像は引用。

回答とは個人、組織の育成... なのです。
自分も時間を確保することで腹をくくるのと同時に、相手にもアタマをすっきり、リセットして一緒の方向を向いてもらえる効用があります。

2. 顔を合わせるために準備する

事前にテンプレートに沿う形でまとめます。この部分は開発者でなくても多少コードが読めなくてもできるので、得意な人がひとりいるとかなり助かります。
効果的に質問をしたい人のための質問テンプレート、不吉なワードチェックリスト、15分ルール - Qiita
その際にできる範囲で共同編集と、共有できるファイルに纏められるようにしておきます。以下だとGoogle Sheets等。

3. 次のアクションをまとめる

確認事項 事実 推測
画面キャプチャ 画面Aでエラー
画面キャプチャ 画面Bでエラー
**.logを取得 エラーは出ていない サーバーに届いていない可能性

事実と推測をまとめつつ話します。期限もあれば合意しておきます。必要ならマネジャにも共有です。

これにより ** チームに聞くべきだ、などとなった場合そのままこのGoogle Sheetsを転送です。場合により 2 を繰り返しつつ事実関係を整理します。実はこういう作業一つ一つが開発チームと、対顧客フロントチームとの信頼関係でもあると思う。ここで気づきます。回答とは個人・組織の育成。個人の育成とは自分の育成でもあるのだと...

4. できたらお礼のサイクルを回す

結末を追いかけることはもちろんなのですが、最近はこのようなポイント贈りあいサービスもありますね。チームを超えて助け合った後はもっと感謝をぶつけ合っていいよなと改めて書いておきます。

Now.

「ねえおかーさん、『い』と『こ』っておなじだよね」
「ねえおかーさん、『6』と『の』っておなじだよね」

たしかに同じだねえ~!とか、目線を合わせて話してみることが結構大事だったりします。そこから「おちついて」と返しつつ一緒に協力していくんだよな、など改めて考えてみました。

以上です~。