油そばに学ぶユーザーエクスペリエンスの話


自己紹介

こんにちは。Works Human Intelligenceで給与開発やってます。
好きなものは糖質全般です。

油そばの話をする前に、どういう事をしてきた人なのか、軽く自己紹介させてください。
私は未経験から開発として入社して6年目になります。
同じくらいに入社した開発の方と比べると、新機能開発に関わらせていただく機会が比較的多く、弊社の新機能として推している機能群の一つ、「リードレス給与明細」というモノをリリースしたりしています。

リードレス給与明細のイメージは弊社公式ページから見ることができます。見切れちゃってて、本当は明細の上部にもっと工夫、あります。

ちなみに、公式ページだと「給与明細」としか書いてないです、一応正式名称は「リードレス給与明細」です。
リードレスは造語で、「Read(読む)」「Less(少ない、より少ない)」というなんちゃって英語で、
「グラフィカルで整理された情報を表示することで、詳細にすみずみまで読み込むことなく直感的に理解しやすい給与明細」を目指したことからこの名前になりました。
社内では「名前はダサい」とか、「leadless:無鉛」とか言われていたりして枕を濡らす日々です。
みなさんはどう思いますか。

さて、この度はアドカレを書かせていただけるという事で、弊社のパッケージ「COMPANY」の歴史と新機能開発に向き合う中で感じた私なりの「ユーザー体験をより良くする工夫と心持ち」について語りたいと思います。

油そば屋さんのアレ、すごくない?

「東京油組」という油そば屋に行ったことあるでしょうか。
いいですよね、油そば
私があのお店で一番好きなところは、「なんか色々なうんちくが書いてある紙」です。
行ったことある人はピンとくるかもしれません。

勝手に画像使うと怒られそうなので中身だけ軽く書くと、以下のようなことが書いてあります。

  • 麺は、小麦から6%しか取れない貴重な部位を多く使用しています
  • この貴重な部位がすごい、ビタミン・ポリフェノールなどを豊富に含んだ特別な麺です
  • 特別に調合した油は脂肪燃焼効果が高く、アミノ酸も豊富

油そばを貪りながらこのうんちく紙を読みます。というより、良い位置に貼ってあって、必ず目に入るようになってる気がする。
この紙を見ながら食べる油そばは一味違います。麺は一本一本しっかり味わってポリフェノールを探すし、油の脂肪燃焼効果を妄想する。ありがたみがすごい。 ※個人の感想です

何の話してるんだこいつ。。
もうちょっとお付き合いください。
「ありがたみがすごい」の部分が大事です。
この油そば、たぶん何も知らずに食べてもそんなに感動しないかもしれません。うまいけど。
「小麦のナントカ層を豊富に使ったすごい麺」と「特別に調合した油」を感じながら食べるこの一杯が最高なんです。 ※個人の感想です

これも一つの「ユーザー体験」です。しかも個人の体験としては最高の。
つまり、ここで「うまい油そば」+「うまそうな情報」=「」の公式が成り立ちます。
これを、人事システムで再現するにはどうすればいいか。

ちなみに、油そばはうまい前提だし、情報も本当である前提です。
「触れ込みの割にまずい」のは最悪です。今回の話は、「良いプロダクトを良いユーザー体験にするにはどうすべきか」というお話です。
「良いプロダクトにするにはどうするか」は@soepy先輩が書いた以下の記事など参考になるかと思います。今回はこれの続きみたいに捉えていただけると幸いです。

プロダクトの油そば化

どのようにしてプロダクトにこれを応用できるのか、いろんな工夫があるのかなと思います。
その中でも、私がある程度具体的に考えているのは二つです。
どちらもそんなに奇抜でもないし、やっているところも多いと思います。

1.開発者が運用チームを兼任する

弊社でははるか昔、図ってか図らずかこういう体制になっていたプロダクトがあります。
作った人が客先に出向いて、その機能を使えるようにする。お客様からのFBも開発がその場で受け、それに答えた機能追加をして、また出向く。
アジャイル開発なんて綺麗なものではなかったかもしれませんが、弊社のプロダクトが最も成長した時代だし、COMPANYの「ファン」が最も増えた時代だったのではないかなと思います。
それは、作った人と使う人が直接話す機会が多かったゆえに、「機能のこだわり、背景(≒うまそうな情報)」を体験してもらえたからだと思います。
同時に、機能を拡充させていく中で、ユーザーから見ても「この機能はワシが育てた」という体験を提供できています。
ベンチャーの面白味というやつでしょうか。

なお、現在のところ弊社では一部を除きこういった体制は見かけません。
ユーザー数も当時に比べ爆発的に増えた今、開発者が導入をやっていてはプロダクトの足が止まります。
この方法はスケールアップしていくのが難しいという課題がありそうです。

弊社が定期的に実施するユーザー満足度調査で、昔からのお客様から「COMPANYお前、変わっちまったな」的なFBを頂くことがあります。
これって、「一緒に良いものを作っていこう」という姿勢が、昔みたいにユーザーの体験に繋がりにくい状態となってしまったことが背景なんじゃなかろうかと思います。

2.ユーザーが見えるところでこだわりを語る

油そば屋ではこれをやっていますね。
1に比べると個々のユーザー体験は弱くなりますが、コストは圧倒的に抑えられ、ユーザー数が増えても問題ありません。
「ユーザーが見るところ」ってどこでしょうか、twitterやホームページ、などなど、、
ちょっと変わったところで私が思い浮かんだのは、操作マニュアルです。

例を書いてみます。

「カメラの性能を極限まで追求したハイエンドモデルスマートフォンのマニュアル(カメラの使い方項)」として、以下のどちらが魅力的でしょうか。

  • (A)メインメニューの「カメラ」ボタンを押すとカメラが起動します。シャッターボタンを押すと写真を撮ることができます。撮影モードの使い方については、P24.「カメラのモード」を参照してください。

  • (B)この機種では、hoge社製の高品質レンズを使用しています。
    3つのカメラを使って撮影された写真を弊社独自のfugaプロセッサの画像処理によって組み合わせることで、高級カメラのような写真を作り上げます。
    AIによるモード自動検出がデフォルトで有効なため、シャッターボタンを押すだけで被写体に応じた最適な撮影モードであなたの思い出の一瞬を最高の一枚に仕上げることができます。

(A)の方が短い文章で、カメラの起動経路や各モードの使い方への誘導ができていて、必要十分。「THE・使い方」って感じですね。

(B)は私が数年前、当時最先端のカメラ付スマホを買ったときに見たマニュアルをうろ覚えで書いたモノで、このマニュアルを読んだ私は写真を撮りたい!と感じたし、写真を撮る事が嬉しくなりました。アホほど単細胞なので。
単細胞はさておき、ユーザー体験が"良い"のはどちらでしょうか。

「(B)って商品カタログに書くことじゃね?」と言うのも正論ですが、マニュアルとカタログでは読む層が違うと思われます。システムの世界では実際に機能を触るユーザーはそこまでカタログ読まないので、私ならどっちにも書くと思います。

(A)は弊社の機能マニュアルのテイストを真似して書いたものです。ユーザーはこのマニュアルで必要な情報を与えられて機能と向き合うのですね。
ビジネス文章としてなら、短い文章で必要なことを伝えられていて、良いですね!(媚)

システムを使うユーザーの中でも、システムを実際に触る運用担当者が見る可能性が高い媒体であることを利用して、「機能を使う事が楽しい」状態にするチャンス、だと私は思います。ここでもっと機能の良さを語っていい。

マニュアル以外にも、リリースノート、社長のブログ/twitterなどで自社の機能愛を語る会社さんもありますよね。
ちょくちょく話題になっては見るのですが、見ていて思うのは、どれも必要な情報を届けるだけでなく、読んでいて楽しい文章になっていることです。
楽しいことは大切ですね。

弊社も取り組んでいることがあります。昨年より弊社では、「habanero」という発信媒体を始めました。
新機能をリリースしたら、ユーザー向けに機能の紹介を開発者が書くというサイトです。この取り組み、私とても好きです。弊社も油そば屋になれる!と感じました。
ん?うん。

まとめ

モノを作る人は少なからず作ったモノにこだわりと情熱を持っています。
それを見せることは恥ずかしい事ではないと思います。
「あなたが使っているこの機能、私たちはこのくらいこだわったし、このくらい考えて最高のものを作ったんです、どうぞ!」てな感じで。
まあ空ぶることも多々ありますが・・・
ユーザーは機械と向き合ってるのではなく、誰かが苦労してこだわった「製品」と向き合ってるんだ、という事は作った人が発信すべきだと思いました。

最後に

ユーザー満足度調査を読んだ夜に赤坂の東京油組食べていて思ったことをつらつら書いてみました。
たぶん、新しい価値観ではないし、油組だけではなくラーメン屋全般、飲食店界隈、なんならBtoCの世界では常識的な話だと思います。
でも自分はその夜まで考えた事が無かったし、言語化してより深めたいと思ったので書きました。
自分の作った機能を「便利」と言ってもらえるのも嬉しいですが、さらに「好き」と言ってもらえる機能開発者でありたいです。

少し前まで、弊社ひいては業界全体で、「これは良いモノだから。使えばわかる。多くは語るまい」という風潮あったんじゃないでしょうか。
でも、それでは「働くを楽しく」できていないと思いました。
私が麺のこだわりを読みながらニッコニコで油そばを食べるように、うちのユーザーにも「この機能のこういうところ好きなんですよね~」って言って使ってもらえると開発者としてこれ以上ないですね。

本当は稼働保証(社内デモ)の事とかもっと書きたかった。。
またの機会にします。

結論:プロダクト開発者は油そばを食べよう