アジャイルソフトウェア開発宣言と協同組合と私
初めに
初めまして.新卒1年目の@zakiNSと申します.
// アイコンで分かる?通り,TrySailオタク(特にヒヨコ群2年目)です.
本記事はPERSOL PROCESS & TECHNOLOGY Advent Calendar 2021の12/23日分となります.
会社で「テーマは何でもよい」と言われていたため,今回は,アジャイルソフトウェア開発宣言と協同組合について考えたことをアウトプットしてみようと思います.
(アジャイルはわかるけど,協同組合原則って何?という人もいらっしゃると思いますが,あとで説明します)
「実際の開発現場ですぐに役立つ!」みたいな情報はほとんどないと思いますが,理念や理想を考えるのが好きな人は,少し覗いていただけたらと思います.
背景
私は大学生の頃,大学生協の学生委員会という団体で長く活動をしていました(学生委員会についてはこちらを参照).
その時の友人(今はエンジニア)と社会人になってから話す機会があったのですが,「アジャイルソフトウェア開発宣言を見たんだけど,協同組合の協同じゃん」と言っていました.
そのため,このアドベントカレンダーの執筆を機に,考えてみようと思った次第です.
この記事で伝えたいこと(目的)
- 長い歴史と実績がある協同組合とアジャイル開発を照らし合わせることで,考えを深める.
- 「初めに」も書いた通り,経験の少ない新卒1年目の考えることなので,意味不明だったり,夢見がちだったりしたら,ご意見いただけると幸いです.
アジャイルソフトウェア開発宣言と原則
「協同組合って何?」という方もいらっしゃると思いますが,まずアジャイルソフトウェア開発宣言について説明します.
そもそもアジャイル開発と聞くと,ペアプロ,スクラムなど思いつくかもしれませんが,アジャイルソフトウェア開発宣言とは,アジャイル開発を行うにあたって大切なマインドセットが書かれています.
手法だけまねるのではなく,このような考え方を理解することで,迷ったときの判断基準の1つになるのではと?,と個人的には思っています.
今回はそのアジャイルソフトウェア開発宣言の原文(Webサイトで公開されている)と共に,ICAが出している「アジャイルソフトウェア開発宣言の読みとき方」という資料を引用して,説明します.
アジャイルソフトウェア開発宣言の原文
上記の宣言より,文章の右側に,4つの価値「個人と対話」「動くソフトウェア」「顧客との協調」「変化への対応」が挙げられています.ただし,注意書きにもある通り,左記の事柄にも価値はあり,アジャイル開発には左記の部分を蔑ろにしないという前提があります.
アジャイル宣言の背後にある原則
- 開発宣言で挙げた内容を実践するための12個の原則があります.
- 以下の原則文章はIPAの出している「アジャイルソフトウェア開発宣言の読みとき方」という資料から引用しました
- この原則は,上記の宣言で説明された価値を実現するための行動規範です.本記事では一応,原則1,4,5,6辺りに関連はしているかなと思います.
- 顧客の満足を求め続ける
- 要求の本質を見抜き,変更を前向きに
- 成果物を2-3週間で,リリースし続ける
- 全員で共通の目標に向かおう
- 人の意欲は信頼から
- コミュニケーションは直接対話で
- 進捗も品質も現物で
- 一定のペースでプロジェクトにリズムを
- よい技術,よい設計,よい品質の追求
- 無駄=価値を生まない,を探してヤメる
- よいモノはよいチームから
- 自分たちのやり方を毎週,調整する
協同組合のアイデンティティに関するICA声明と協同組合原則
協同組合の概要・特長
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「協同組合って何?」と思う方も,農協や漁協,生協は聞いたことあるのではないでしょうか?また大学によっては,大学生協に加入して,食堂などを利用した人もいると思います.それら全ての正式名称は○○協同組合と呼ばれる組織で,世界中に存在しています.
- ex) 農業協同組合,漁業協同組合,生活協同組合,大学生活協同組合など…
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ざっくりと協同組合について説明すると,JCA(日本協同組合連携機構)では以下のように説明しています.
- 協同組合は、共通の目的を持った人同士が自発的に集まって作る経済組織です。出資金という形で自分たちで元手を出し合い、組合員となって事業を利用し、組合員として運営にかかわっています.(引用元:https://www.japan.coop/pr/means.php)
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企業との違い
- 特に株式会社と比較した場合,非営利組織であり,出資額に関わらず平等に意思決定へ参加できるなどの違いがあります.
- よく生協のスーパーがあると,組合員になったらお得に利用できるみたいな流れで組合員になることがあると思います.ただ本来の組合員の在り方としては,組合員は協同組合を利用するだけでなく,運営にも関わることが特徴としてあります.
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余談
- 2016年に,ユネスコ無形文化遺産に「協同組合」が登録されたことが話題になりました.これは協同組合が積み重ねてきた実績や考え方が世の中に認められ,期待されているのだと感じています.
協同組合のアイデンティティに関するICA声明
そのような協同組合ですが,1995年にICA声明と呼ばれるものが発表されています.その中で,協同組合の定義,価値,原則と呼ばれるものがまとめられています.このような定義は過去にも考えられて見直されてを繰り返されているのですが,重要な点として,世界各地の様々な協同組合の活動や想いを踏まえて,作られた枠組みだという点です(書籍では,世の中にある全ての協同組合の最大公約数だと説明されています).以下にICA声明で発表された定義,価値,原則について挙げています.
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協同組合の定義
- 協同組合は,共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ,共通の経済的・社会的・文化的なニーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人びとの自治的な組織である
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協同組合の価値
- 協同組合は,自助,自己責任,民主主義,平等,公正,そして連帯の価値を基礎とする.それぞれの創設者の伝統を受け継ぎ,協同組合の組合員は,正直,公開,社会的責任,そして他人への配慮という倫理的価値を信条とする.
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協同組合の原則:協同組合原則は,協同組合がその価値を実践に移すための指針である.
- 自発的で開かれた組合員制
- 組合員による民主的管理
- 組合員の経済的参加
- 自治と自立
- 教育,訓練及び広報
- 協同組合間協同
- コミュニティへの関与
アジャイル開発も協同組合も多数の人が協力し合って物事を成すことを重要視しているので,両方の宣言には似たような内容が並んでいるようにも見えます.そのため,今回は2つの宣言を比較して考えたことを3点挙げてみました.
アジャイルソフトウェア開発宣言を協同組合的視点から考えてみる
1. 共通する「人」に対する信頼
- 協同組合の価値の1つに,「自助」と呼ばれるものがあります.この価値を上記で引用した書籍では「人はすべて自分の運命を切り開くよう努力できるし,また努力すべきだという信念に基づいている.しかし協同組合人は,1人の人間が真に発達するためには他人との協同が不可欠であると信じている」と説明されています.つまり,自身で困難を乗り切る力は人に備わっているが,他人と協同することでより真価を発揮するということを主張していると考えられます.
- アジャイルソフトウェア開発宣言からも「人」に対する信頼を感じられます.
- まずアジャイルマニフェスト著者の1人であるDave Thomasの説明欄では,「プロジェクトの中心は方法論ではなく,人々であると信じている(Google翻訳)」と説明されています.
- 原則5「人の意欲は信頼から」では,環境やサポートを用意した上で信頼をし,気持ちよく働ける環境を作ることが大切であると述べられています.
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上記より考えたこと
- 協同組合でもアジャイル開発でも,「人は頑張ったら出来るはずだ」と信じる考えがあるのだと思います.また協同組合は協同することに重点を置いており,アジャイル開発でも原則4,6にある通りチームワークの大切さを説いています.ゆえに,この2つは分野は全く違うかもしれませんが,ノウハウとしては役立てることも多いのではと思っています.
2. 協同組合的視点から考える「顧客との協調」
- 顧客との協調において,IPAの出している資料だと,「お互いの立場を超えて協働することにより、よりよい成果と仕事のやり方を作ることができる。」と記載があります.この「お互いの立場を超えて」を協同組合の視点から考えてみます.
- 協同組合で考える協同
- 私が大学生の頃学んだ協同の解釈は,様々な人の中にあるニーズの共通項を考え,それを目的に添えて,協力して行動を起こすことを協同だと捉えていました.
- また「協同」する際は相手の立場に立って考えることが重要です.相手の立場になって考えて,どうしたら互いのニーズの共通項を見つけられて,両方に得があるのかを考えていきます.
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上記より考えたこと
- 上記の「協同」の考え方は,アジャイル宣言で挙げられている「お互いの立場を超えて協働する」という考え方と,ほとんど同じなのではと思います.また協同組合は非営利組織であるため,より組合員のニーズを満たすために,立場を超えやすいのではないかと思います.そのため,アジャイル開発においても,協同組合が行っている組合員活動が何かしらヒントになるのではと思います.
- 協同組合の組合員活動というのは,組合員が望むニーズ・願い(○○が欲しいや,健康になりたいなど)を叶えるために,様々な人達と協力しつつ,組合員自らが実施する活動のことです(具体例を知りたい方は「協同組合 組合員活動」で検索お願いします).
- 組合員は協同組合から供給を受けるだけでなく,組合員が組合員へ供給を行うこともあるため,アジャイルで言う「お互いの立場を超えて協働する」に近いのでは?と個人的に思っています.
- 上記の「協同」の考え方は,アジャイル宣言で挙げられている「お互いの立場を超えて協働する」という考え方と,ほとんど同じなのではと思います.また協同組合は非営利組織であるため,より組合員のニーズを満たすために,立場を超えやすいのではないかと思います.そのため,アジャイル開発においても,協同組合が行っている組合員活動が何かしらヒントになるのではと思います.
3. 協同組合的視点から考える「教育」の重要性
- 上記2点では協同組合とアジャイル開発の共通点を挙げていきました.ここでは,協同組合では活発に行われているが,アジャイル開発ではあまり行われていない点について書きます.
- 協同組合原則5:教育
- 協同組合では,協同組合の持つ価値観や思想を広める活動を活発に行っています.それは,組合員が適切に協同組合を活用することができるようにするためです.定義にもある通り,協同組合は組合員が自らのニーズをかなえるための組織でありますが,現実問題として,そのような考えが伝わらず,ただ利用するだけになっていることも多いです.そのため,積極的に協同組合の思想を伝える活動が行われています.
- また上記書籍での説明を引用すると,協同組合における教育とは,「理解の交換」であると述べられています.ただ一方的に情報提供をするのではなく,組合員は協同組合の思想などから適切な使い方を学び,組合員自ら協同組合に対して,建設的に課題提起出来るように,「教育」することが大切であると述べられています.
- 創設者の伝統を受け継ぐ
- 協同組合の思想に触れる際,協同組合の歴史に触れることが多いです.協同組合の価値の文章にも「創設者の伝統を受け継ぎ」という文章が触れられています.歴史や創設者の想いや行動に触れることで,協同組合に必要とされるマインドを学ぶことができます.また歴史に触れることで,手法は変わっていても,根本の願いは同じなんだということに気づき,自信にも繋がっていくのかなと思っています.
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上記より考えたこと
- 自身が経験したプロジェクトが少ないせいかもしれませんが,アジャイル開発の手法について学ぶことは多くても,創設者の考えなどに触れることは少ないのではと思いました.アジャイルソフトウェア開発宣言はマインドセットであるため,宣言の文章だけでなく,創設者が具体的に何を考えていたのかなどについて学ぶことも重要なのかなと感じた次第です.
まとめ
拙い文章 & 個人的な考察だらけで,あまり役に立たないかもしれませんが,理念とかそういうのを考えるのが好きな人がいらしたら,少しでも参考になればと思います.
個人的には,今後もアジャイル開発で動くことが多いと思うので,手法と共に理念についても考えて,時には協同組合で培った考え方を駆使して行けたらなと思います.
Author And Source
この問題について(アジャイルソフトウェア開発宣言と協同組合と私), 我々は、より多くの情報をここで見つけました https://qiita.com/zakiNS/items/a6871aa8a983b231dce5著者帰属:元の著者の情報は、元のURLに含まれています。著作権は原作者に属する。
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