日本の映像制作に期待すること


はじめに

こういう文章を書くと嫌われると思いますが、日ごろ日本の映像制作に携わる人たちに関して思っていることをまとめてみました。

日本はコンテンツ大国だと思います。仕事の合間を縫っていろいろ小説や漫画を読むようにしていますが、本当に面白い作品はいくらでもあります。それらを効率よく映像化できれば、この業界にはいくらでも稼げる余地があると思います。

しかし、現状ハリウッドと比べると映画は見劣りしますし、中国や東南アジアに比べてもあまり元気があるように見えません。皆が疲弊していて、明るい将来があるように思えないのです。果たして予算がないことだけがいい作品を作れない原因でしょうか? そんなことはないと思います。知恵を出せば乗り切れる問題はたくさんあるはずです。予算がないなら、効率よく作ればいいですし、センスを磨いて作品の価値を高めることが出来ます。おしゃれな配色にするのは時間がかかりません。

まず、会社にお願いしたいことです。

教育に力を入れる

プレゼンでは、いったいどうして、この色とこの色を同じ画面で使ってしまったのか? なぜこんな見栄えの悪いフォントやレイアウトを使うのか? と理解に苦しむものをよく見ます。映像制作会社が用意したスライドやホームページが一昔前の田舎のスーパーのチラシのようだったらどうでしょう。センスのいい人はそんな会社に入りたいとは思いませんし、せっかく頑張って作ったものも、アピールできるどころか、一気に魅力が無くなります。企業のイメージというのは思っている以上に重要です。株主、新卒の学生などはそういった外に出ている情報で会社を判断します。

例えば、ある程度の規模の外資系企業だと、大抵おしゃれなパワーポイントのテンプレートが用意されています。フォントや配色を統一することで、最低限の見栄えを保証することができますから、個人が行うプレゼンで会社のイメージを著しく損なうことを予防することができます。

こういったものを用意するためのセンスはどう磨けばよいのでしょうか? 生まれつき?育った環境?いろいろ思いつくかもしれませんが、配色パターンやレイアウトをきちんと学べばかなり良いものが作れるようになるはずです。

では従業員にどうやって、そういった勉強をさせるか、という話になると思います。例えば、資格受験の費用を出しても、どうせ辞められてしまうからやらないという意見も耳にしますが、社員のモチベーションを上げつつ、長く務めてもらえるよう工夫すればよいと思います。例えば資格取得の翌年と翌々年の給料が少し上がるであるとか、報酬を先延ばしにすればよいのです。そういった制度があると、面白いな、会社をよくしたいのだなと、皆が感じ取れます。

差をつける

事なかれ主義のためか、嫌われないためか、査定をしても、全員同じような給料の変化しかしない会社があります。それでは、頑張っている人が報われません。一円でも多く、成果を上げた人に給料を支払うべきです。これが一番難しいところですが、その評価は誰が見ても納得できるものでなければなりません。面倒くさい人や、意見の強い人ばかりが得をするようになっているケースがよくあります。査定は本人や、上司以外にも同僚数名に匿名で行ってもらう、またその人は毎回変えるなどとすることで、少し公平にできるかもしれません。

そして働いている人にお願いしたいことです。

きちんとした日本語を使う

きちんとした文章を書ける人が非常に少なくなってきているように思います。私が仕事で受け取るメールは、失礼であったり、過剰敬語であったりすることが多く、正しい日本語が使われているメールを見ると安心します。何もお願いしていないときにまで「宜しくお願いいたします」をつける必要なんてありませんし、プライベートで会ったことがあるにせよ、仕事のメールはきちんとした文章で書くべきです。

最近では一つの作品を作るのにたくさんの人がかかわると思いますが、印象の悪い人の依頼は優先順位が下がります。逆にきちんとした人には、力になってあげたい、何とかしてあげたいと思うのが人間です。ですので、文章の書き方ひとつでことがうまく運ぶなら安いものです。

おかしな日本語は採用でも不利に働きます。採用担当から砕けた文体のメールが届いたら、その会社に行こうと思う人は少なくなるでしょう。文末に「!」がついていたり、文章の始まりが「あ、」であったりするのは論外です。これらは実際に何度か目にしたことがあります。

見出しを「きちんとした日本語」としてありますが、上で書いたことは日本語に限りません。英語でも失礼な書き方はいくらでも出来るので、気を付けたほうが良いですね。相手を敬っているかどうかというのは、英語のライティングのうまさとは全く関係ありません。また、逆に過剰に丁寧にしても何が言いたいのかわからなくなるので、失礼にならぬよう簡潔に書くのがよいでしょう。

勉強をする

効率よく仕事をこなすには、知恵を使うしかありません。仕事に関連することを学ぶのもそうですが、数学であったり、語学であったり、デザインであったり職種に関わらず色々なことを学ぶのがよいと思います。

デザイナーであっても数学の勉強は役に立つと思いますし、技術職の人にもデザインの勉強は役に立つはずです。数学は論理的な思考のトレーニングですから、無駄なく仕事を進めるのに不可欠です。また、違うジャンルのものに触れることでいろいろな発想が生まれます。

技術職でいうと、募集要項に、国際学会での研究発表経験がある、と記載している会社は多いですね。ですが面接に出てくる人がそういった経験がない、なんてことが多々あります。優秀な人を採用したいなら、採用する側も優秀であるべき、もしくは、少なくとも努力するべきです。肩書が立派でも、英語もできなければ、論文も読めもしないし書けもしない、そういう人の下で働きたい人がいるか、ということを、面接をする立場であれば、考えてみるべきです。いまはプログラムなんて誰でも書けるのです。

勉強をして、効率よく仕事をこなし、できた余裕でまた勉強する、というポジティブな循環になれば、仕事は楽しくなってくるはずです。効率の悪い作業や、不勉強な状態で開発されたツールによって、みんなが疲弊していくというのは経営者にとっても良くないことです。

お金を意識する

頑張っても給料上がんないし、という気持ちもわかります。ただ、無駄が減らないことには会社に入ってくるお金は増えませんし、作品を制作した後に残るお金が無くなりますから、結局いいことはありません。給料を払いたくないね、と思う経営者も稀にいるでしょうが、ほとんどの場合無いから増やしてあげられないという状態でしょう。

ミーティングで何時間も話す人がいますが、ミーティングはお金がかかっています。会議室分の家賃、その間拘束される人たちの時給。参加人数を考えれば、一回のミーティングで何万円が消えていっているか分かるでしょう。

雑談をするなというのではありません。仲間内で仲良くなるのには適度な無駄話というのは必要です。ただ、過度の自慢話、武勇伝などは部下に好かれるためにも、辞めておいたほうが賢明かと思います。

最後に

いろいろ書きましたが、この業界に恨みがあるわけではありません。日本の映像制作会社や、この業界が魅力的に、もっと元気になってくれればいいなと思っています。