新規事業でターゲットとなる市場を見極める


 
スタートアップや新規事業開発で最初にやるべきことはアイデアの磨きこみです。

そして、すでに顧客の痛みを解決できるアイデアや技術を持っていて、それらを提供できる潜在市場が複数ある場合、市場を絞り込む必要があります。

また、提供できる市場が限られている場合でも、その市場をターゲットにするのが適切かどうか見極めなければなりません。

そこで今回は、潜在市場を絞り込むための7つの判断ポイントと、その先の市場の1次調査についてまとめました。まずは判断ポイントから説明します。
 

1. 顧客には十分な資金があるか

顧客が製品・サービスを購入できる資金がなければ、キャッシュフローを黒字化できず、事業を継続できません。当たり前ですが、非常に大切です。

関連して、足がかり市場のTAM(Total Addressable Market、対応可能市場)は100億円以上が望ましいとされています。TAMは「想定ユーザ数」に「そのユーザが製品/サービスに年間に支払うであろう金額」を掛けることで求めることができます。

2. 顧客は簡単に製品を手に入れられるか

短期間で開発サイクルを繰り返して製品を改良するには、顧客からの直接のフィードバックが欠かせません。
そのため、起業当初は市場開拓や製品販売を第三者に任せるより、顧客と直接取引する方が望ましいです。
 

3. 顧客が製品を購入(サービスを利用)するもっともな理由があるか

顧客は現在使用中のものに満足しているだろうか。他の製品ではなく、あなたの製品を買う理由は何だろうか。
多くの場合、最初に戦うべき相手は「何もしない顧客」と言われています。
 

4. パートナーの協力を得てすぐにでも完成品を提供できるか

これはハードウェア製品を提供する場合に特に顕著です。
顧客は完成品を求めています。
つまり、他の業者やメーカーに働きかけて、あなたの製品を顧客の製品やシステムに組み入れて貰う必要があります。
 

5. 市場に定着しているライバルはいないか

ライバルは顧客の目から見てどれほど強いだろうか。顧客との関係を築く妨げにならないだろうか。
あなたの製品の競争優位性は何だろうか。
 

6. 足がかり市場で収めた勝利を新たな分野に参入するための力にできるか

ある市場で支配的シェアを確保するのに成功した後、隣接する市場に参入するには製品や販売戦略を少し変えるだけでよいか。あるいは思い切った変更が必要か。
足がかり市場(エントリー市場)を拠点に事業を拡大できそうになければ、別の足がかり市場を探す必要があります。
 

7. 市場はチームの「価値観」「情熱」「目的」に合っているか

創業者の目的は、ここで示したいずれの判断ポイントより優先されるべきです。
ちなみに、創業者と、創業者が取り組んでいる課題との間に必然性が見いだされる状態(その課題が創業者の自分ごとになっている状態)を「Founder Problem Fit(ファウンダー・プロブレム・フィット)」といいます。
もしその状態にない場合は、潔く解くべき課題を変えたほうが良いとされています。

 

市場の1次調査

市場を絞り込んだら、その市場の1次調査に取り掛かります。
顧客と話したり、顧客の動向を観察することで、どの市場が最適かを見極めていきます。

1次調査では、潜在顧客と直接やり取りし、彼らの状況、悩み、ビジネスチャンス、市場に関する情報をできるだけ多く集めます。そのような1次情報をより多く取得して考察することで、課題の質/アイデアの質をあげることができます。

いかに潜在顧客と話すか

市場の1次調査で顧客と話をする際に気を付けるべき注意点が3つあります。

  1. 潜在顧客について、あるいは彼らのニーズについての「答え」を用意しない。
  2. 潜在顧客はあなたが求める「答え」を持っているわけではない。
  3. 潜在顧客と会うのは話を聞くためで、主張や売り込みをするためではない。彼らが言うことに耳を傾け、こちらから売り込みはしない。

上記の注意点に留意して話をすることで、より有意義な情報を集めることができます。
 
 

まとめ

アイデアの磨きこみフェイズで課題の質(顧客の痛みの理解度)を上げるには、やはりその業界のエキスパートになることが肝です。市場を絞り込み、その市場/業界の1次情報をできるだけ多く集めることが結果、新規事業開発の近道になりそうです。
 

参考文献

1) ダイヤモンド社 [2014], "ビジネス・クリエーション! ---アイデアや技術から新しい製品・サービスを創る24ステップ".
2) 日経BP社 [2017], "起業の科学 スタートアップサイエンス".