ウィキペディアタウンの歩き方(1)


はじめに

ウィキペディアの利用者:Unimoiです。
ウィキペディアタウンのことについて書きます。
このプロジェクトを知ったのは2014年、初めて参加したのは2015年です。
以来、各地のウィキペディアタウンに参加しています。
このエントリはほぼ自分用のメモですが、これからウィキペディアタウンを開催したい人、参加してみたい人にとって一助になればいいなと思っています。

ウィキペディアタウンとは

あらためて「ウィキペディアタウン」について、おさらいしてみました。

ウィキペディアタウンの定義

「ウィキペディア日本語版」では、次のように説明されています。

ウィキペディアタウンとは、その地域にある文化財や観光名所などの情報をインターネット上の百科事典「ウィキペディア」に掲載し、さらに掲載記事へのアクセスの容易さを実現した街(町)のことである。

ウィキペディアタウン」 (『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年10月9日 (火) 21:27‎  UTC、URL: http://ja.wikipedia.org

ややこしいです。

つまり、ウィキペディアに記事として「まち」に関する項目があり、現地に実際にある「まちの文化財」や「観光名所」そのものを、ウィキペディアの記事へと誘導できるようになっている、そんなまちが「ウィキぺディアタウン」ということになります。
具体的に言えば、「まちの文化財」の看板にウィキペディア記事へのリンクが組み込まれたQRコードが貼られているなどです。

日本でのウィキペディアタウン

ところが、先のウィキペディアの説明にあるように、日本では、図書館や学校などを会場としたウィキペディアを編集するイベント(エディタソン)を「ウィキペディアタウン」と呼ぶことが定着してきています。また、それらのイベントは多くの場合、まち歩きや編集対象物の見学とを組み合わせたものとなっています。
ウィキペディアタウンの当初の意味は「まち」そのものを指すのですが、現在の日本では、まち歩き+ウィキペディア編集をベースにしたイベントのことを指しているといってよいでしょう。

ウィキペディア日本語版の中には、項目としてのウィキペディアタウンのページ以外に、プロジェクトとしてのウィキペディアタウンのページもあります。

街の名所や旧跡などをウィキペディア日本語版の記事にして、街をまるごとウィキペディアにしようというプロジェクトが各所で自発的に興っています。これを支援するプロジェクトです。

プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン」 (『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年12月12日 (水) 09:25‎  UTC、URL: http://ja.wikipedia.org

こちらのほうが説明としては分かりやすく感じます。
なお、上記のページには、今後開催される各地のウィキペディアタウンの予定の最新情報が載っています(と思いたい)。
過去の実施報告については、アーカイブとして残されています(と思いたい)。
主催や協力の団体、開催場所、当日のタイムスケジュールや参加者などが報告されていれば、自分で開催したいときに参考になります。
ウィキペディアタウンを主催したり運営に携わっていても、ウィキペディア上にある開催予定と報告のページのことは知らない人が多いと感じます。ウィキペディアタウンの開催情報について網羅的に見ることのできる唯一の場所だと思いますので、関係者の方にはぜひ開催内容について更新をお願いしたいです。

ウィキペディアタウンについて書かれたもの

ウィキペディアタウンは、参加して初めてその醍醐味が分かる取り組みではありますが、そうはいっても、どんなものかを事前につかみたいもの。そんなときに参考となる文章をご紹介します。特にインターネット上で公開されているものに絞りました。
なお、掲載の媒体に偏りが見られるのは、オープンデータやウィキペディアタウン推進のコミュニティに近い媒体ほど記録や公開に熱心であるということもあるかと思います。

「ウィキペディアを通じてわがまちを知る」小林巌生
(2015年5月7日 マガジン航)
 https://magazine-k.jp/2015/05/07/making-wikipediatown/

「ライブラリアンによるWikipedia Townへの支援」是住久美子
(2015年6月20日 カレントアウェアネス No.324)
 http://current.ndl.go.jp/ca1847

「ウィキペディアタウンをMLAの立場から考える」福島幸宏
(2017年7月11日 マガジン航)
 https://magazine-k.jp/2017/07/11/wikipediatown-for-mla/

「地域資料をアーカイブする手法としてのウィキペディアタウン、またはウィキペディアとウィキメディア・コモンズ」日下九八
(デジタルアーカイブ学会誌 2018年2巻2号)
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsda/2/2/2_120/_article/-char/ja/

「ウィキペディアキャンパスのはじめ方」川村路代
(ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG)612号 2016年10月24日)
 http://www.arg.ne.jp/node/8606

「福井ウィキペディアタウンを開催して」鷲山香織
(ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG)673号 2017年12月25日)
 http://www.arg.ne.jp/node/9178

「振り返ればロバがいる」by Asturio Cantabrio
(はてなブログ)
 http://ayc.hatenablog.com/

こうした論考や報告は、各地での開催実績が増えるにつれ、書き手もバラエティに富んできており、内容も日々ブラッシュアップされていると感じます。
SlideShareなどプレゼン資料の共有サイト等で検索すると、さまざまな講師の発表資料がヒットしますので、そちらも参考になると思います。

近々発売される雑誌の特集にもウィキペディアタウンが取り上げられるようです。どんな視点が示されるのか楽しみにしています。

ウィキペディアタウンの位置づけ

ウィキペディアタウンの開催回数を前出の「プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン/アーカイブ」で確認してみました。

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
3 12 34 36 66 73*

*(2018年12月15日現在の未実施も含む)

前年から急増したのは2015年、さらに2017年に飛躍的に回数が増えました。
その2017年に、「これからの図書館のあり方を示唆するような先進的な活動を行っている機関に対して、NPO法人 知的資源イニシアティブ(IRI)が毎年授与する賞」であるLibrary of the Year(以下LoY)において、優秀賞を受賞しました。
受賞理由は「地域情報資源を活用した公共情報資産の共創活動」です。この受賞により、図書館関係者に「ウィキペディアタウン」というプロジェクトがより知られるようになりました。以降、全国の図書館において、ウィキペディアタウンに注目するだけでなく、開催を企画したいという声も増えてきているようです。
回数にそれほど変化はないものの、各地で「同日複数開催」が多くなったのは2018年からだと感じています。それは、LoY2017の受賞に加え、運営側に講師としてのノウハウのある人材が育ったこと、ウィキペディアン(ウィキペディアの編集者)やリピーターの参加者が増えたということもあるのではないかと思っています。

まとめ

以上の論考・報告を見ても、ウィキペディアタウンには、多様な人々が参加しています。実際に参加してみると、特に下記の人たちがキーパーソンになっていると感じます。

  • 「まち」に暮らす人
  • 「まち」のことを集め、整理している人
  • 「まち」のことを知りたい人
  • 「まち」のことを発信したい人
  • 「まち」の記録を残し伝えたい人

ウィキぺディアタウンは、そんな人たちがまちで出会い、ともに「まち」を体験するアウトリーチ・プロジェクトである。自分としては、そんな風に定義しています。
実際には、ウィキペディアタウンのメソッドを用いたエディタソンや勉強会など、バリエーションも増えてきていますが、このエントリでは「まちあるき」を含むウィキペディアタウンの実践について考えていきます。

《続く》

※このエントリ内のウェブサイトは2018年12月15日に閲覧確認しています。