基板発注時の各種パラメーターについて


基板製造業者へ基板を発注する

電子基板製造には自分で部品を実装するPCBの製造と、部品の実装もまとめて依頼するPCBA(PCB Assembly)の2種類がある
最近は中国系の業者がPCBを5USD/10枚程度と非常に安価に製造してくれてうれしいのでよくお世話になっている
基板の発注には基板製造業者に製造にかかわるパラメーターを伝える必要があり、それらの決め方の参考となるよう備忘録としてここに書き残す
※間違いがあるかもしれないので見つけたら編集リクエストとか投げてもらえると助かります

基板発注時のパラメーター

Material(基板材質)

色々あるけど基本的にはFR-4を選べば問題ない
多層基板(4層以上)の場合は材質を変更したほうがいいこともある
高周波基板とか無線関係の場合はそれに適した素材を選ぶ
高発熱部品は実装する基板を分けてその部分だけアルミ基板で作ることがある

Layer(層数)

片面基板は1
両面基板は2
多層基板は2以上の任意の数

Dimensions(寸法)

基板外形寸法(単位は[mm])
最大寸法を指定(円形などの場合は直径を取る)

Quantity(製造枚数)

小ロットから大量生産まで自由に選択できる
無料で製造してくれるのは5か10まで

一般的な小ロット生産数

  • 5
  • 10
  • 15
  • 20
  • 25
  • 30
  • 50
  • 75
  • 100

Different PCB Design(異種面付けの種類数)

1枚の基板上にvカットで複数の基板を載せる場合の設定
1枚の基板を4分割して同じ基板を4つ乗せる場合は1
1枚の基板を2分割して違う基板を1つずつ乗せる場合は2
1枚の基板を4分割して違う基板を2つずつ乗せる場合は2
同様に種類が増えるごとに料金加算

Vカットは製造業者によってガーバーの指定や独自のルールがあるので要確認
基板に切れ目を入れず自分でカットする場合は1でok
※同種面付でも追加料金を取られる場合アリ

PCB Thickness(基板の板厚)

生基板・レジスト・シルクのすべてを含んだ基板の厚み
標準は1.6[mm]であるがメーカーによって0.6-2.5程度の範囲で任意に選択可能
選択肢は基板材質によって変わるので注意

PCB Color / Solder Mask(レジストの色)

基板表面に塗るレジストの色
レジストははんだを弾く働きと基板表面を保護する働きなどを持つ
昔は緑ばかりだったようだが最近では色が増えていて楽しい
仕上がりの安定性を取るのなら緑一択だが普段使う製品を見てみると黒のものや白のものも多く確認できる
PCのマザーボードやグラフィックボードのメイン基板は比較的(艶消しの)黒が多い印象

レジスト色一覧

  • なし(生基板)

これらとは別に艶消し加工を受けている業者もある(追加料金)
艶消しは一般的には黒や緑が多い
赤や青といった色は艶消し加工をやっていない業者が多い印象

Silkscreen(シルクの色)

レジストの上に印刷する文字や実装位置指示の色
レジスト同様に選択できる業者(ALLPCBとか)もあればレジストごとに決まっている業者(Elecrowとか)もある
レジストと同色にすると当然見えないのでなるべくレジストに対して目立つ色で指定する

Surface Finish(表面仕上げの種類)

ランドの仕上げ
色々種類があって用途によって使い分ける
一般的なものを下に挙げる(より詳しいものやマイナーなものはFusionのサイトが詳しい)

迷ったら...
SMD・狭小ピッチ部品・足無し部品がある?(VQFP, QSOP, BGA, QFN)
ENIG or OSP
それ以外
HASL

RoHS(wiki)と表記されているものはEUのRoHS指令に対応する
ここでは鉛フリーと同義と理解しておけば問題ない(はず)

表面処理 Bare Copper HASL ENIG Immersion Gold OSP
保管期間[月] ? 6 6 6 3
表面素材 はんだ 金メッキ 硬金 フラックス
リフロー回数 ? 4 4 4 2
加工料金

Bare Copper(裸銅)

ランドになにも加工しない
長期保存には向かずあまりメリットもない
特に目的もなくこれにするくらいならOSPかHASLにしておくのが無難

HASL(半田レベラー)

部品を手実装する際の一般的な加工法
ランド表面にはんだを塗って温風で余分なはんだを吹き飛ばす
表面にできる凹凸が大きく、BGAやQFNでは歩留まりが下がりやすい
小さい穴はこのはんだで表面が埋まってしまうこともあるので注意
穴の内側にはんだがつくので穴径は実際より小さくなることがある
使用するはんだによりRoHS準拠かどうかが変わる

メリット:

  • 低価格
  • 高信頼性
  • 長期保管期間
  • リフロー可能回数

デメリット:

  • 表面平滑度
  • 極小穴表面埋まり
  • 穴径減少

ENIG(無電解ニッケル・置換金メッキ)

Electroless Nickel Immersion Goldの略(フラッシュ金とも)
銅の上に保護用のニッケル(無電解ニッケルめっき)が載っていて、さらにその上に薄い金めっき(置換金めっき)が載る
パッド表面はほとんどがニッケルで金はニッケルの1/10以下の厚さ
表面の平滑度が非常に高く、かつはんだ濡れ性もよい
ニッケルと金の間にリンが蓄積し不良を引き起こすブラックパッドシンドロームが発生することがある
RoHS準拠

メリット:

  • 表面平滑度
  • 高信頼性
  • はんだ濡れ性
  • RoHS準拠

デメリット:

  • 中価格
  • 不良可能性
  • リフロー可能回数

Immersion Gold / Hard Gold(電解金めっき)

無電解金めっきの金を厚くしたもの
金が厚くなっているので耐久性と防錆性に優れ、端子などに向く
金が厚くなることに伴い加工費用も上がる
はんだ濡れ性はよくない
コネクタ部の金メッキ加工(Gold Fingers)に使われる
RoHS準拠

メリット:

  • 高信頼性
  • 保管期間
  • 表面耐久性
  • RoHS準拠

デメリット:

  • 高価格
  • はんだ濡れ性

OSP(水溶性プリフラックス)

表面にプリフラックス処理をする
パッドは銅の上に水溶性のフラックスが塗布された状態ではんだの載りがよい
スルーホールにはあまり適さない
RoHS準拠

メリット:

  • 表面平滑度
  • 低価格
  • はんだ濡れ性
  • RoHS準拠

デメリット:

  • リフロー可能回数
  • 保管期間

Copper Weight(銅箔厚)

銅箔の厚さを変更できる
一般的には最外層の銅箔厚を指定する
多層基板の場合は内層の銅箔厚は固定の場合と別に指定する場合がある
銅箔の厚さは単位面積$[\rm{ft^2}]$あたりに使用する銅の重量$[\rm{oz}]$で指定する($[\rm{oz/ft^2}]$)
この値を大きくとると銅箔が厚くなって同じ太さのパターンに流せる電流量が増える
銅厚ごとの電流許容量はこのサイトなどが参考になる

  • 1$[\rm{oz}]$
    • 35$[\rm{\mu m}]$
  • 2$[\rm{oz}]$
    • 70$[\rm{\mu m}]$
  • 3$[\rm{oz}]$
    • 105$[\rm{\mu m}]$

Castellated Holes(端面スルーホール)

外形戦によって切断された形のスルーホール
製造業者によっては有料オプションとなり別途指定が必要

Gold Fingers(コネクタ部の金メッキ加工)

基板端にある端子を金メッキで保護してパターンの剥がれを防止する
抜き差しによる端子摩耗への耐久性を向上させる
グラフィックボードのPCI-E端子のイメージ
加工箇所については別途指定する

その他

Stencil(メタルマスク)

リフローで実装する場合に基板表面にペーストはんだを印刷するためのマスク
基板と同時に注文すると送料が安くなる(または基板と同時にしか注文できない)
基板と同じガーバーを使うが発注前にマスク用のデータが入っているか確認しておくとよい
同時に注文する旨の指定と業者によっては枠の有無とサイズを聞いてくるので聞かれたら指定する
機械で印刷する場合は枠ありで機械が対応するサイズとする
手動印刷であれば基板(両面実装の場合は基板サイズの倍)より少し大きいサイズの枠なしで問題ない

発送方法

基板に直接は関係ないが、外国の業者に発注を行う場合は発送方法で到着までの時間と合計金額が大きく変わるので注意
業者によって指定できたりできなかったりする
Elecrowでは料金と時間のバランスが良いANA/OCSがおススメ
この辺はAliExpressとかで物を買うときと同じ感覚で最適なものを選択するとよい

基板製造業者

※補足情報は偏見が含まれており、事実と異なることがあります

大陸系

  • Elecrow
    • 言わずと知れた有名どころ
    • 納期は少し遅めだけど品質は問題ないレベルな印象
  • FusionPCB
    • Groveとかで有名なseeedのPCB部門(子会社かも?)
    • 一回だけ使ったけどシルクの品質があまり良くなかった
      • かすれと謎の跡が残ってたが実用上問題ないレベル
    • 日本語対応
    • オンラインガーバービュアーがあって発注前に確認できる
  • ALLPCB
    • 最近オタクたちがログインボーナスって言ってタダで基板貰ってるところ
    • 毎月5枚分基板を製造してもらえる無料クーポンがもらえる
    • 招待リンク
      • ここから登録すると10USDのクーポンがもらえるらしいのでぜひ
  • JLCPCB
    • 部品会社のLCSCのPCB部門
    • LCSCと連携したPCBAが非常に強力で安価
      • 納期が短い代わりにLCSCで扱いのない部品は実装できないらしい
  • PCBgogo
    • 最近よく見るところ
    • 日本語対応
  • PCBWay
    • 最近よく見るところ
    • 日本語対応?

国産業者

  • P板.com
    • 国産PCB業者
    • 質は高くサービスもいいけど値段が高い
    • 大陸系とは比にならないくらい高額な代わりに仕上がりの良さとサービスの良さはピカ一っぽい
    • 試作で使うのには向かないかも?

参考文献