技術系Q&Aサイトのすゝめ


ここ最近は日本語圏でも技術系Q&Aサイトがいくつか登場していますが、これまで投稿したことがなければ使ってみるのも面白いですよというお話。

(※あくまでも個人の感想であり、サイト利用の効能を保証するものではありません。)

対象とするサイト

日本語圏の技術系Q&Aサイトとして、下記3サイトをとりあげます。

また、英語圏では最大級の技術系Q&AサイトStack Overflowもついでに紹介しておきます。上記の"スタック・オーバーフロー"は、このStack Overflow公式の日本語圏向け分家サイトです。

以降はそれぞれ、QA@IT、teratail、日本語SO、本家SO と呼びます。

技術系Q&Aサイトの特徴

本投稿での「技術系Q&Aサイト」とは、技術系の質問と回答をおこなうWebサイトであり、タグ付けによる対象分野の分類ができ、サイト利用者のスコアリングや実績システムを提供すること、としておきます。このため、老舗どころの Yahoo!知恵袋教えて!goo や、昔ながらの電子掲示板システム(BBS)、技術系メーリングリスト等は対象外です。

技術系Q&Aサイトの特徴として、以下の3つが挙げられます。

  1. 技術的課題の解決 [質問者インセンティブ]
    • Q&Aサイトの主目的です。質問者が抱える技術的課題に対して、詳しい回答者が答えを教えてくれます。(質問の"質が低い"場合は、必ずしも回答が得られないケースもあります。)
  2. ゲーミフィケーション [回答者インセンティブ]
    • 回答や質問を繰り返すことでサイト利用者にスコア/ポイントが与えられ、またゲームによくある実績(Achievement)が解除されていきます。このようにゲーム的な仕組みを用意することで、じゃぶじゃぶ回答させる回答行為にもインセンティブを提供します。こちらの記事が詳しいです。
  3. 集合知 [第三者メリット]
    • 技術的課題に関する質問と回答が一カ所に集まり、対象領域がタグ付けによって分類されることで、一種の集合知サイトとして機能します。解決済みの質問と回答は、似たような課題を抱えた誰かの役に立ちます。"集合知"についてはググってください。

(※繰り返しますが、あくまでも個人の感想であり、サイトの効能を保証するものではありません。)

どれがいいのよ?

QA@IT、teratail、日本語SO はどのサイトも前掲の特徴を備えますが、サイトが受け入れる質問の範囲や利用者コミュニティの文化は少しづつ異なります。

どのサイトが合う/合わないというのは個人差がありますから、「このQ&Aサイトがベスト!」という提示はできません。一度はそれぞれのサイトを訪れて、関心のある興味分野(タグ)で過去質問と回答を眺めてみて、自分に合いそうだと思ったサイトを利用すればよいと思います。大まかな傾向は下記の通りです。

  • 日本語SO は具体的な質問と回答に特化したサイトです。ご意見募集や"質が低い"質問は、すぐに反対投票(スコアダウン)されます。"心遣い"が欲しい人にはちょっとハードルが高いかもしれません。ただし、質が低い=初歩的な質問ではありあません。技術的に回答を付けにくい/付けられない質問を、"質が低い"としています。

  • teratail は現状、質問として何でもありなサイトになっています。ご意見募集の質問どころかお友達募集というものさえ見かけますし、技術系Q&Aサイトの枠をはみ出している部分もありますが、他サイトに比べて"ほのぼの"した文化圏のようです。回答者が興味をなくすという弊害が無いとも言えませんが、質問者には優しい雰囲気があります。

    追記: teratail公式より 推奨していない質問 が明確化され、プログラミングに関係のない質問は非推奨となったようです。また質問に対するマイナス評価も導入されたため、システム的には日本語SOとも大きな差異がなくなりました。

  • (QA@IT はアカウント登録だけして放置中なので、実態を知りません。ごめんなさい。雰囲気としては teratail と 日本語SO の中間のような印象を受けます。)

(※あくまでも個人の感想であり、サイトの性質を保証するものでは略)

なんだかいまいち?

いずれも日本語圏のサイトですから、英語圏のそれにくらべるとユーザ数は決して多くありません。そもそもの話として、英語/日本語話者数には大きな差異があります。

どうしても満足する回答が得られない場合や、回答に際して内容的に物足りないと感じるなら、本家SO を使ってみて下さい。英語のお勉強にもなります。圧倒的ユーザ数と質問流量に加えて言語の壁もあることから、日本語SO よりもさらにドライな印象はありますが、その道のエキスパート(開発者自身とか)から直接回答をもらえたりします。

また英語圏ユーザより早く回答するのはなかなか難しく、英語ライティングスキルも磨けるんじゃないでしょうか。質問内容にもよりますが、回答速度は重要なファクターだったりします。遅れて回答した丁寧で正確なものはちゃんと評価されますが、似たような内容ならば先着回答の方が高く評価されます。たまに冗談のような早さで正確かつ長文の回答が付いていたりします。謎です。

(※あくまでも個人の感想であり、略)

これから質問される方へ

  • 回答者は、あなたの心を読んでくれる超能力者ではありません。質問文中に、適切な日本語で、書いていない事を、知ることは出来ません。(まれにエスパーも居ます)
  • 回答者は、あなたの保護者(お母さん)ではありません。いつでも、優しく、根気強く、あなたの手助けをしてくれる、そんな保証はありません。(たまにはそういう方も居ます)

動かない!困った!とりあえず聞いてみよう! となる前に、質問には一定のプロトコルが要求されます。これを守らずに質問投稿しても、無視されて誰も答えてくれないか、欲しい回答には永遠にたどり着けません。

技術スキルと質問文(日本語のスキル)は関係ないでしょ、という向きもあるかと思います。それでも、適切な技術的質問を投げかけるスキル、つまり「分からない点/知りたいことを正確に相手に伝えるスキル」は確かに存在します。これがヘボいと、おそらく技術スキルにもつながりません。

じゃあどうすりゃいいのさ、という方は結城浩さんの 技術系メーリングリストで質問するときのパターン・ランゲージ を一読されることをおすすめします。技術Q&Aサイトにもあてはまる、普遍的な「質問スキル」の勘所が解説されています。

注意:メーリングリストとは異なりますので、技術系Q&Aサイトでは「自己紹介」「肩書き」は大抵不要です。あなたが何者かという情報は回答に際してはどうでもよく、結果的に単なるノイズにしかなりません。回答に必要となる前提条件は、あなたの自己紹介や肩書きからでなく、技術的用語を使って質問文中で説明してください。

また技術Q&Aサイト固有のルールも存在しますので、気になったサイトの下記ページだけでも目を通してください。

最後にもう一つだけ、質問投稿ボタンを押す前に、ご自身で書いた文書を、1度だけ読み返してみて下さい。中高生に見せても恥ずかしくない、日本語の文章になっていますよね?(日本語話者を想定しています。)

(※あくまで略)

これから回答される方へ

そのサイトのルールに則って、質問者や他回答者への敬意は忘れずに、多少の怪しい日本語は無視して、技術的に正しい回答をしてください。人格攻撃・個人攻撃はダメですが、技術的誤りの指摘は常に歓迎されます。

技術系Q&Aサイトにおける回答では、スコア稼ぎや実績解除をしていく一種の「ゲーム」と割り切る心が必要です。自身の技術解説スキルや文章作成術を磨くという考え方もアリです。こんな所で腹を立てても全く得をしませんし、嫌になったら放置すればよいのですから。

また、旧来型BBSやメーリングリストに比べた技術系Q&Aサイトのメリットとして、チケットシステムのように質問単位に独立していることが挙げられます。ある質問を無視したいと思ったら、その質問URLを開かなければよいだけです。他質問とのつながりも薄いですから、属人的なトラブル要因は生じにくいと思います。

なお回答にかこつけた人生訓を垂れたいのであれば、技術系Q&Aサイト以外のご利用をおすすめします。もっとふさわしい場があると思います。

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