ネットワークのソフトウェア化に関する各標準化団体での検討状況(2018/02/05セミナー報告)


ISOC-JP/TTC共催セミナーである「ネットワークのソフトウェア化に関する各標準化団体での検討状況」を受講してのレポートです。セミナーの内容そのものよりも、ネットワークのソフトウェア化という文脈に対する考察が多いです。
http://www.ttc.or.jp/j/info/topics/rep20180205/

※ISOC-JP:Internet Society (ISOC)の日本支部
※TTC:一般社団法人情報通信技術委員会

総評

セミナーでは5G通信のネタが多め。また要素技術の標準化に関する内容が多く実案件に直接繋がる話は少なめでした。

ネットワークのソフトウェア化について

懇親会での会話や各種勉強会を出ている中での自分なりの解釈からなぜネットワークのソフトウェア化が言われているのか?をまとめてみます。実際に下記の流れでNW構築がうまくいっている事例があるかは知りたいところ。

  • 市場環境や顧客ニーズなどの「素早い変化」に如何にして対応するかが重要視されており、ソフトウェア開発はアジャイルやリーン開発でその変化に対応している。SoE(System of Engagement。ジェフェリー・ムーアが2011年に言及)などの概念も出てきている。
  • インフラ開発でもInfrastructure as Codeといった形で、ソフトウェア開発の手法を取り入れてより早くインフラ環境を変化させる動きが出てきている。パブリッククラウドも、ハードウェア資産を持たなくてよいという他に、調達期間の削減というメリットにより受け入れられたという側面がある(※1)
  • ネットワークのソフトウェア化も、上記の素早い変化への対応という流れから起きている。またソフトウェア化により、大量のデータを取得して活用しようというデータドリブン志向もあると考えられる。

※1:パブリッククラウドの利点について、別のセミナーでカシオのIT部門の大熊部長と話したところ、「調達期間の劇的な短縮」「ハードウェアのイニシャル投資の削減」「勝手に進化するインフラ」があるとのこと。3番目の利点は、NW-JAWSのセミナーでSORACOMの人も言っていた。

懇親会で東大の中尾教授から聞いた話

  • 東大発ベンチャーで総務省と組んで無線基地局をほぼソフトウェアで作って、実際にパケットを流している。1ヶ月くらいで認可が降りたがこれは異例のスピード。
  • 無線基地局はほぼソフトウェア化してるので、様々なデータが取得できる。構想していたことの成功例としてSORACOMを挙げていた。
  • NWを用いた価値創出の方法の一つとして、ネットワークを通る大量のデータをもとにした機械学習での分析が挙げられる。CiscoDNAも機械学習を取り入れているのがポイントだったはず。「通信の秘密」の観点で大丈夫か気になるが。
  • 東大ではソフトウェア化/機械学習への対応としてPythonを大学の講義に追加した。
  • 5G通信ではよくスライスという表現がされるが、東大ではスライスではなくソフトウェア化という表現に変えている。

セミナーで面白かった点や気になった点

  • ITU(国際電気通信連合。国連の組織)ではNWの仮想化の実装方式だけでなく、NWのソフトウェア化後のビジネスモデルや運用についても検討されている
  • IETFでbess(bgp enabled services)という付加情報をBGPに載せるための手法が検討されている。BGP Flowspecと同じイメージ?※BGP関連ではNTT発OSSとしてGoBGPがあり、ソフトウェアによる制御を前提とした設計を採用している。GoBGPはコンテナ技術のDockerのNW制御で使えたりする。
  • 5G通信のスライスの実装はNFVで実現する模様。NW専用機器を高性能汎用サーバに置き換える思想。つまり、ベンダーロックインの回避を狙っている。※OpenFlowの二の舞いになるかも?
  • ヨーロッパでは国をまたいだスライスの運用管理も想定しており、標準化は要検討事項。
  • スライスはライフサイクルをどうするかが課題としてあり、AIと組み合わせることが検討されている。

  • ITUで、「5Gを含む将来網のための機械学習」を検討するFocusGroupが2017/11に設立。
    http://www.ttc.or.jp/maedablog/2017/2017-11-16/

上記のように、ネットワークにおいてもソフトウェア化の検討が進んでいます。