カイゼンを分解してみる(安全・集中・簡単)


まえおき

カイゼンについて、いったん大まかに意味や文脈を仮定するならば、「今よりもよりよい状態にすること」として、本記事を書いていきます。

この記事においては、「カイゼン」と「改善」はイコールで扱います。カタカナだから、漢字だからといって、細かい意味に言及するつもりはありません。

また、この記事ではプロダクトに関するカイゼンは記しません。人やチームのワークを対象としたカイゼンを書いています。

カイゼンを分解する

カイゼンを「今よりもよりよい状態にすること」だとした場合、では、その「よりよい状態」とはどういった状態なのかを見極めるところから考える必要があります。

それらは大きく3つに分けることができます。(個人的に優先順位が高いと思う順)

  1. 安全(作業が安全に行えるか、安全でないものは何か) ※心身の危険、インシデント発生リスク
  2. 集中(作業に専念できてるか、中断させるものは何か) ※情報ノイズ、同時タスク滞留
  3. 簡単(作業が簡単に行えるか、簡単でないものは何か) ※属人タスク、作業の複雑性

1. 安全(作業が安全に行えるか、安全でないものは何か)

  • 身体に危険が伴う作業を積極的にやりたがる人はあまりいません。
  • 物理的でなくても、自分のオペレーションのミス1つで、障害を招くと想定される作業も心理的負担は大きいです。
  • 作業内容だけでなく、作業環境や周囲の人間関係(信頼関係)などで不安に感じることもあります。(心理的安全性)

→ いかに安全と思えるような状況を作り出せるかがカイゼンのポイントとなります。
 (テスト環境の用意、ロールバック可能な作業スケジュールなど)

→ 絶対的な安全は突き詰めてもキリはありませんが、そこで「関わる人が安全だと思える状態」を尊重しましょう。
 (チーム内で互いの認識を聞くというだけでも、心理的負担が軽減することがあります)

2. 集中(作業に専念できてるか、中断させるものは何か)

  • マルチタスクは、思考の切り替えに負荷がかかります。また、抱えているタスク数が多くなると、消化したタスクよりも消化していないタスクに意識がおよびがちで、それ自体が本人にプレッシャーをもたらします。
  • ちょっとしたきっかけで集中力は途切れます。本人が自覚しないでも、日常で目にするあらゆることは意思決定力を奪っていきます。
    • 大量の未読メール(とりあえずで参加させられているメーリングリスト)
    • 傍聴者としてInviteされたSlackチャンネル(@channel@hereなどの広範囲通知)
    • 暗黙のローカルルール(あるようで実態のないドキュメント類)

→ まずは目の前にある1つのタスクに集中できる環境を育てていくためには、何がノイズになっているかを認識することがポイントとなります。
 (部屋の掃除など。ささいなことでも影響を受けるので、積極的に取り除いていきましょう)

→ タスクはやることを決めるよりも、(今は)やらないことを決めることが大切です。
 (メモに書き出して、いったん脳内から忘れるということでも十分効果は見込めます。Trello、JIRA、Redmineなども可)

→ 何かを生み出すことは選択肢を増やします。多すぎる選択肢は、過度な期待を招き、迷いの要因になります。できるなら、まずは選択肢を減らすことから始めましょう。
 (読まれていないドキュメントのアーカイブ。保守されていないシステムの凍結)

3. 簡単(作業が簡単に行えるか、簡単でないものは何か)

  • 丁寧であることは、必ずしも簡単であるとは限りません。事細かく書かれた手順書は、それらを全部読まなければならないという点で簡単ではない場合があります。
  • 作業として手数が少ないということは、覚えることが多いということです。覚えている誰かにとっての簡単さは、他の誰かにとっては簡単とは限りません。

→ 誰にでもできるようにするというのは、ただのおまじないです。本当に求められているのは、「対応する人にとって簡単だと思える状態」です。その人との「近さ」とも言えます。そして、その簡単さ(近さ)は時間や成熟とともに変容します。
 (誰かのために手順書を作るのではなく、作業者自身で手順書を作るほうが好ましいです。「新人でも分かるように〜」とベテランが噛み砕いてドキュメントを書くのは終わりにしましょう)

→ ツールを作って自動化することは簡単さをもたらしているように見えますが、そのツールをメンテナンスしていくことや万が一動かなくなった状況を見据えた上で、総合的に簡単になるのか再考が必要です。
 (野良○○とならないように、せめて個人での利用なのか、チームでの利用なのかは明確にしておきたいです)

なぜ分解したのか

分けて考えることで、カイゼンの視野を広げたかったからです。

カイゼンについて話し合う時、着手可否の判断や事後の効果検証などでBefore&Afterとして比較しなければならないことが多く、大半はそこで数値化が求められます。(工数削減、時短など)

しかし、数値にばかり目を向けてしまうと、本来どこを目指していたのかを見失いがちになります。

(自身の経験として、数値として比較できないから、実践させてもらえないことがありました。また、数値は変化したのに、状況が変わっていないのではないかと首をかしげることも多々ありました)

そこで、数値ではなく状態として、目指している方向性をしっかりと捉えるために、今回このように分解したという背景になります。

(長い間、自分の中でモヤっとしていたことについて、現時点までの気付きを記した次第です。未来の自分がこれを見て、また新たな気付きに進められればと思います)

カイゼンで心がけておきたいこと

最後に、自分がカイゼンを進めていくにあたって、これから心がけたい・実践したいと思っていることを記します。

  • 小さな改善から持続可能なペースで継続できるか。大物狙いで一気にやらない。
  • 「問題 vs 自分たち」になっているか。「誰か」を問題にはしない。
  • 対処療法は、問題の根源に関連できているか。「なにかやってる」という安心感は大きいが、モグラ叩き状態になっていないか。

参考情報