自律的に動く組織とは何か ~ 経営者の本音から生まれる目的意識という視点から ~


先日参加してきた組織マネジメントについての座談会で思うところがあったので、レポートも兼ねて記事にします。

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記事の要約

  • 組織がうまく動くには明確な目標設定が必要。
  • そのためには組織の長が自分の本音と向き合い、本当にやりたいことを探すこと。
  • 明確な目標があると、メンバーは自身で考えて行動するための材料を得ることができる。
  • アウトプットは自分の考えを見てとれるようにするための重要な取り組み。

本文

参加動機

自分はサーバサイドプログラマとしてソフトウェア開発に従事しているが、高品質な開発をするにはIT技術の知識と同様に、エンジニアリング自体のマネジメントに対する姿勢を改善することが必要だと常々思っている。

今回の座談会は経営者向けに組織を健全に、かつ、自律的に成長させるためにどうしたらいいかについて議論するものであり、エンジニアリングマネジメントのヒントとなるものがあればと思い参加した。

イベントの形式と感想

主催者の方も、今回のような座談会形式のイベントを開催するのは初めてということで、おおまかな流れだけを決めてあとは都度柔軟に対応していくようだ。

参加メンバーは7名。
主催者側:参加者 = 2:5

流れとしては、自己紹介を各自行い、その後で主催者側が提供した課題改善の取り組みについてまとめた資料を主催者のガイダンスを交えながら閲覧しつつ、参加者全員が自由に意見を述べていくということになった。

やってみた結論からすると、有意義な意見交換となったのは間違いなく、主催者の方々にはとても感謝している。ただ、この形式では参加者同士の知見を互いに共有しあうには時間が足りなかった。座談会は大体90分くらいやったと思うが、今度は参加者がみんな主体的に参加できるワークショップ形式でやるとより良くなるかもしれない。

座談会の感想としては上記のような感じだ。あとは自分の意見を書いていこう。

あらためて感じる、目的意識の大切さ

組織、特にプロジェクトにおける組織(以下、プロジェクトチームと称す)については、ある目的を達成するために人工的に作られた組織であると自分は考えている。動物が生きていくために群れを成すのとはまったく異なるものであると。

そのため、「生きていくため、繁栄するため、子孫を残すため」というような本能に根差した強烈な目的意識が無いので、プロジェクトチームはその目的がぶれると崩壊しやすく、組織で動く必要性も曖昧になると考える。

よって、プロジェクトチームに必要なものは強烈な目的意識である。そして、それは組織の長が自身の本当の気持ちに向き合って初めて得られるものだというのが今回の座談会から得た気付きである。

目的意識を明確にすることのメリット

さて、強烈な目的意識を得たとして、それの一体何が良いのだろうか?強烈な目的意識があるなんて、単なる自己中心的な人物と見られて近寄りがたくなるだけではないだろうか?

自分もそう考えていたのだが、そうでもないということが分かった。強烈な目的意識があると、自分のやりたいことを明確にしやすくなり、自己主張がはっきりする。迷う人間によくありがちな「で、あなたは結局何がしたいんですか?」とメンバーに言われることが少なくなる。

主催者の方も、当初は自由な組織づくりをめざしていた。しかし、会社が安定してくるとメンバーそれぞれが責任のある事業を抱えたことで、互いに不可侵領域のようなものが出来てしまい言いたいことがいえなくなったという。非常に不自由を感じていたが周りとの衝突が嫌で何も出来なかったそうだ。しかし状況改善のために会社のコアメンバー10名ほどからあらゆる方面で意見をフィードバックしてもらい、自分の本当にやりたいことにそこで気付いてそれを会社の主要方針とした。

つまり、周りを大事に考えるあまり状況を曖昧にすることで逆にメンバーのストレスになったのだ。これは、個人の性格もあるので一般的ではないかもしれないが、ある程度本質を語っていると思う。

良かれ悪しかれ、メンバーは日々具体的に行動していかなければならない。動物である以上、動かないと気持ち悪いというのもあるかもしれない。そんなときに組織長の行動方針が明確でなければ、何をしていいのか分からないし、チームがどこに向かっているのか分からない。

対して、強烈な目的意識に支えられた明確な主義主張は、メンバーに明確なリアクションをもたらす。メンバーの好みに合うかどうかに関わらず、「この人はこう考えているんだな」と分かればどうリアクションしていいか分かるものだ。これは実際にメンバー側になると非常に納得できることだ。

これは実に個人的なことだと思うが、自分は雑談が非常に苦手で、「なにをすれば良いのか役割が明確な集まり」にいると割と初対面の方とでも話せるタイプだ。なにか突発的な案件にジョインしなければならなくなった場合でも、仕事が明確になってるチームは動きやすい。

ともかく、「結局なにがしたいんですか?」と言われないため、また、具体的な行動方針に落としやすいため、まずは組織の長が自分の内面と向き合い、自分はどう思っているのかであったり、どう感じてるのかであったりと、自分の感情に素直になって本音を引き出すことが大事なのだと思う。そうすると、自然に行動方針が生まれてくるように思えた。

行動方針から決めるのではなく、目的を決めることからスタートする。考えてみれば当たり前なことだが、普段の仕事に忙殺されているとなかなか思いがそこまで巡らない。

自律的組織に向けての取組み

目的を組織長が出せたら、それを行動方針に落としてメンバーに広める必要がある。そうしないと、何か問題が起きたときにイチイチ上に意見を求めないといけない。これは非常にストレスになる。

行動方針が決まっていると普段の業務をメンバー自身の判断で回せるし、問題が起きたら行動方針の上位概念に照らし合わせて自分の考えで動くことができる。

ここで「自発的」ではなく「自律的」というのがポイントで、「何か自己を律する対象があればその方針に従って行動できるし、周りと意思疎通ができる」ということである。なんでもかんでもただ動けばいいということではない。

上記を実現するため、主催者の組織では以下の取り組みを行った:

  • 会社の主要目的から、4つのコア概念を作り上げた。
  • 作ったコア概念は、なるべく行動に結び付けやすいものにした。
  • 月イチ程度のペースで、行動方針を浸透させるためのワークショップを社員全員に実施した。

ワークショップでは、組織でよくある状況に対して4つのコア概念と照らし合わせてどう動き、どう動かないかを決定する。これを社員全員、それぞれ5人程度のチームに分けて行っている。こうすることで組織のメンバーに会社の主要目的を浸透させ、達成のための行動をしてもらうという自律性を養っている。

ワークショップの内容を詳しくは書かないが、「仕事が忙しくて経費精算処理ができなかったメンバーに対してどう思い、どう行動するか?」など、そのお題はとても現実的なものだ。最終的にどう行動するか?どう行動しないか?の2つに分けて行動方針を作るところが上手い方法だなと思った。

まとめ

自分の考えに素直になることが、結果的に周りの行動を明確にすることにつながるという事例を見てきた。自身を振り返り、つねに物事を先送りにしてしまうクセを思い直して反省した。

自分自身は、「何のためにやるのか」を考えて行動することを常に自分の行動原理としていたが、考えるための材料は多いに越したことはない。自分と向き合うのは正直とても怖いが、やらないと何か自分にモヤモヤしたものが残りそうで、それはもっと嫌なことだ。自分の人生を充実させるためにも、まずは自分の考えを明確にし、見てわかるようにする状態に持っていこうと感じた。

そういう意味で、アウトプットは自分の考えを見て取れる状態にするという意味でとても重要であると感じた