【便乗記事】エンジニアがデスマーチを生き抜くための知見をまとめてみた


Inspire the Next,

デスマサバイバルガイド
僕はもう長い事デスマーチに関わることなく生きられているが、徐々に忘れつつあるので、若いころに獲得したデスマーチを生き残る方法論について記録しておく。

良記事でござんした。
大変良い刺激を受けたので、私も一つインスパイア的な記事を書いてみる次第。

使用上のご注意

  • 当記事は炎上時の極限状態に対する対処療法集です
  • 主な対象者として炎上案件に放り込まれた末端メンバーを想定しています
    • 一部マネジメントの話題も含みます。鎮火を命じられたPMにとっても役立つ点がある筈
  • インスパイア元同様、当記事も経験則を多分に含みます。活用は自己責任でオナシャス
  • 目の前の炎上に貴方の人生を賭けて良いかどうか、よく考えた上でご利用ください
  • けっきょくもやさないのがいちばんだいじなんだよなあ みつを

まず頭に入れて欲しい残業の知識

Twitterや匿名掲示板等のネット世論では「残業辛いわー、弊社マジファックだわー」みたいな意見が主流なので誤解しがちなのだが、実は「残業はすればするほど仕事の満足度は上昇する(ただしメンタルはブッ壊れる)」という政策シンクタンクの研究がある。信じがたいことかも知れないが、そもそも人間は残業を「辛い」と感じるとは限らず、むしろ充足感を覚える場合が少なくない。

「ハッピーならいいじゃん」と思う人もいるだろうが、よく上記の文章を読んで欲しい。「(ただしメンタルはブッ壊れる)」のである。ハッピーだからといって健康被害が無くなる訳ではない。ワーカーホリックが無くならない原因がここにある。

要は何が言いたいのかと言うと、「まだ働けないほど辛くないから大丈夫」「仕事が楽しいから大丈夫」という主観的な感覚は全くアテにならないということである。大抵の人間は「おかしくなったら無理をやめる」という安直な戦略をとりがちだが、これは過労でおかしくなるルートの入り口である。長時間労働に晒された人間は、「おかしい」と感じてから行動するのではなく、予防措置を最優先にして立ち回らなければならない。1
「自分自身でダメだと気付いた時」には、もう手遅れなのだ。

  • 「まだ大丈夫」という自分の感覚を信用しない
  • 何事も予防的に行動する

まずはこの2点を行動原理として徹底的に叩き込んで欲しい。

この意識付けは自身を守るだけでなくプロジェクトの鎮火にも役立つ。大半のデスマーチは危機予測能力の不足により発生する為である。

守るべき優先順位

以上の前提を踏まえつつ、炎上下では以下2点の維持を最優先事項とする。

  • 理性的な判断を下せる健全な精神
  • 精神を支える正常な肉体

これもまた前段同様、自身の為だけではなく、

  • 極論・過激思想の発生
  • メンバー同士の感情的なコンクリフト
  • 計画能力の喪失と出口戦略の欠如
  • ケアレスミスの多発
  • 弱った組織を狙う「悪い人たち」の暗躍

等々、「残業が残業を増やす」ファクターを一網打尽に出来る故の措置である。綺麗事ではなく、「メンバー個人の健全性」は炎上そのものを食い止める為の第一歩であるということを意識しなければならない。

とは言うものの…

そもそも「健全性」を保証できる組織であればデスマーチなんて発生する訳もなく…。実際には、「健全ではない環境」において出来る限り精神と肉体を維持する為の生活設計を考案する必要性が出てくる。

というわけで、ここからは極限状態における生活手法についてTipsを記述する。繰り返しになるが、これらはあくまで対処療法に過ぎない。目の前の修羅場に人生を賭けるべきか否か、「正常」なうちに判断してから使うこと。

食生活について

  • 当たり前だが炎上時こそ真っ当な食事が大事
    • 疲労が蓄積した人間は行動が極端になりやすく、ラーメン等の高カロリー食や、逆に「二食抜き」等の超小食生活に走りやすい。過不足無く「意識的に」食品を摂取すること
  • 腸内フローラ超大事。腸に負担がないだけでストレス耐性が劇的に増加する。女子の様に気を使おう
    • やはり野菜は優秀。整腸作用のみならず、ビタミンその他においても優れた栄養素を持っている。せめて野菜ジュースでもよいので積極的に摂取する
    • 食物繊維はトクホ飲料やドラッグストアの怪しい健康食品(「イージーファイバー」「賢者の食卓」などの粉もの)でも摂取可能
    • というか、そうでもしないと必要量の摂取は難しい。コンビニサラダに含まれるキャベツの千切りは食物繊維が意外に少ないので注意

「そんな面倒なこと出来るか!」というアナタは…

  • どうしても真っ当な食事できない場合、液体の完全栄養食を活用する
    • エンジニア界隈だと「Soylent」「COMP」が有名だが、これらは職場近くの小売店で手に入らず、長時間労働下での調達が難しい。調達出来ない場合はコンビニやドラッグストアで流通している「メイバランス」「クリミール」を使う
    • これらは病院食・介護食に使われる商品。消化が良く、胃腸に負担をかけない。行動食として勧める登山家もいるくらいなので糧食としては優秀
    • ただし、上記商品はCOMP等と違って三食置き換えはできない。あくまで補助食品と割り切ること(それでも不摂生な食生活よりよほどマシだが…)
    • なお、各完全栄養食品の栄養バランスはこのサイトが詳しい
  • 菓子パンオンリー生活はNG。腹はふくれてもいずれあらゆる部分がイカれるのでやめよう。死ぬぞ

睡眠について

  • 家に帰ったら風呂入ってさっさと寝る。何もしないで寝る。とっとと寝る
  • 睡眠時間のプライオリティは非常に高い。寝るだけで高残業によるリスクは大部分回避できる。特に高残業下ではダラダラと単純作業を続ける癖がついてしまうので、意識的にブレーカーを落とそう
    • 寝る前のネットサーフィンはNG
    • ソシャゲもNG
    • 勉強もNG。調子こいてないでとっとと寝よう
  • 安眠の為にブルーライトは可能な限りカットする
    • iPhoneやMacはNightShiftをONにする
    • ルールが許すなら、職場PCにブルーライトカットのアプリを仕込むのも効果的
    • 単純に画面の明るさを落とすだけでも目疲れ・睡眠の質は改善できる
  • 完徹が求められる場合でも必ず仮眠を取る
    • 15分寝るだけでも業務の処理効率が全く違う

風呂について

  • インスパイア元の記事にも特記があるが、風呂にはなるべく入った方がよい(これは私自身も実感アリ)
    • ただし無理は禁物。風呂場で眠り込み、溺れ死ぬリスクだけには注意しよう
    • 科学的にはHSP(ヒートショックプロテイン)の作用が良い影響を与えるとか
    • 交互浴はより劇的な効果が出る可能性があるが、過労時にやると心臓発作で死ぬ可能性が高いのでオススメはしない…

業務について

  • 定期休憩重要。長時間労働が続く時はダラダラと無限に働き続けてしまう為、無理矢理休んでメリハリを付けること
    • 休憩は業務効率に寄与するとされるが、最も効果的なスパンは諸説ある
    • 結局は「定期的に休憩を取る」という仕組み作りが一番大切なので、色々試してしっくりするものを選ぶのが良い(最近は「ポモドーロ・テクニック」が流行ってるらしいよ!)
  • 休憩時はスマホを見ない。本も読まない。何もしない
    • 考えることもガマンする。飽きてもガマンする。すると…
    • 烈海王「奇跡が起こる」…もとい、尋常じゃなく回復する。騙されたと思って試してみよう!
  • 休憩時間が足りないときは「注意訓練」がリフレッシュにオススメ。疲労時特有のグルグル思考を止め、意識をキャリブレーションしてくれる
    • ハマれば効果は絶大で、効率性が上がる為に「時間の経過が遅くなる」ような錯覚を覚えることも…(ただし、「いつまで経っても一日が終わらない」という恐ろしい副作用も出るので注意)
    • 私個人はリンク先の「注意切り替え」→「注意分割」を仕事の合間に3分、というセットをよく使う
  • 障害対応等で休憩できる状況にない場合は「タスクシフト」を多用する。同じ仕事で精神が摩耗することだけは避けよう

計画について

  • このTipsはどちらかと言えばPM向けの話
  • 炎上の長期化が目に見えているなら、計画能力の復旧は最優先に行った方が良い
    • 「無計画な200時間/月」と「計画的な200時間/月」の労働では、同じ労働時間でも圧倒的に負担量が変わる
    • 「暗闇の中で手探りしながら目的地まで歩く」のと「明るい場所を目的地まで歩く」のでは、全く同じ距離でも疲弊感が違うのと一緒
    • 精度が低い杜撰な計画でも「自分の想定と実績にどれほど乖離があったのか」という事実を定量的に分析できるだけで鎮火速度はずっと早くなる。この軌道修正能力の獲得が、炎上時において最も大事
    • 計画は「守れている」時ではなく「守れなかった」際に最も効力を発揮する
    • 低品質の計画の提示が憚られる環境なら隠れてでもセルフ運用しよう

ひみつどうぐ(もとい、栄養ドリンク等について)

  • インスパイア元にもある通り、エナジードリンクは糖質とカフェインが多い
    • 前者は血糖値の上下によってパフォーマンスにムラが発生し、後者は中毒化の恐れがある。つまりオススメしかねる
  • これもまたインスパイア元と同様に、胃を壊しにくくカフェインが過剰でないお茶がオススメ
    • 特に緑茶はテアニンを含み、抗ストレスやパフォーマンスに良質な影響を与える
  • 同様に、カフェインと糖質が主体となる安い栄養ドリンクもオススメできない
    • リポD十本買うよりは「少し変かも」という時に1〜2本ちょい高めのドリンク or サプリを飲む方がオススメ(常飲はNG。1週間に1〜2本程度に留める)
    • なお、インスパイア元に「高いドリンクで鼻血云々」とあるが、それは服用上限を無視した or 別の病気が疑われるので、普通に医者行った方が良いかと…
  • コンビニだとアルミパウチの錠剤サプリがコスパ良し
  • リスクを乗りこなせれば、なんだかんだでカフェインは強力無比。中毒などの副作用に適切な注意を払える人は「エスタロンモカ」「トメルミン(絶対カフェイン中毒にするマン)」の使用を検討してもよいかもしれない
    • 上記をコーヒーやエナジードリンク等と併用するとあっという間に中毒化するのでやめよう
  • 少し入手難度が上がるが、ボディビルダーが使う「BCAA」「グルタミン」「アルギニン」も疲労回復に効く
  • 直接的な疲労回復ではないが、「グリシン」というアミノ酸は睡眠の質を上げるとされる(いわゆる眠剤ではないので不眠には余り効果が無いが…)
  • ガチ勢はアメリカから多種多様なサプリ(主にスマートドラッグと呼ばれるもの)を個人輸入する。…が、この世界は沼なのでオススメはできない
  • 所詮サプリ、されどサプリ。効果に過度な期待をせず、逆に副作用には敏感になるくらいがちょうど良い

最後に、忘れちゃいけない当たり前の話(特にPM)

長時間労働で健康や精神状態を害さない最善の方法は、そもそも炎上させないことである。
「それが一番難しい」と思考停止する人も少なくないが、ぶっちゃけ炎上を鎮火させるのだってめちゃくちゃに難しい。近眼的な業務態度を持つ人や重度のワーカーホリックを増やしてしまう「後遺症」を考えると、今後を含めたトータル難度でいえば「炎上させない業務設計」の方がよほどイージーモードだとさえ言える。

全て燃え尽きた後で案件を振り返ると、燃える前に面倒を嫌わなければ大成功を収めていたであろうケースも少なくない。結局は「先に面倒を抱えて成功するか」「遠くない未来、なし崩し的に面倒と付き合うか」という二択の選択ミスが大半の炎上を引き起こす原因である。この記事を読んだあなたは、くれぐれもこの二択について明確な意思を持ってチームの業務に取り組んで欲しい。例えあなたが末端構成員で、目の前の出来事に決定権が無いように思えても意思は必ず周囲に伝播する。(言うまでも無くPMならなおさらである)

もし正しい意思を通そうとして、それでも駄目ならどうするかって?
いざという時に「適切な道」を選び直す体力を残すために、この記事のノウハウがあるのでございますよ。グッドラック!


  1. なお、「メンバーの様子を客観的に観察する」という行為が本来ならPMの業務であることは言うまでもない。