闇雲に1pxの差異を大切にするWEBデザイナーって古くないですか?


まず、私は株式会社BitStarの唯一のデザイナーをしております菊地というものです。

オトル・アイヒャーの細部にまでこだわり尽くした美意識の尊さや偉大さに憧れ、デザイナーを目指した人間ですので、
細部へのこだわりの重要さは重々理解しておりますし、実践しております。

ですので、1pxとか細かすぎること気にするなよ的な話ではございません。

この記事は「WEBサービス開発」における1pxの差異、、、の必要性やその効果を最大限に発揮できるタイミングについて「WEBサービス開発」におけるデザインアプローチである「Lean UX」の流れを参考に提言しております。
畑の違う「広告」や完全納品型のWEBサイト制作においては触れておりません。

・なぜデザイナーが「1pxの差異」にこだわるのかについての理解
・ではWEBサービス開発で「1pxの差異」へのこだわりが必要なのか?
について考察してみました。

デザイナーの細部へのこだわりは継承されている教えであり戒め
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まず、デザイナーの持つ細部へのこだわり(1pxへのこだわり)の源流はどこにあるのか?

それは間違いなく先人の教えにあるかと思います。
先に挙げたオトル・アイヒャーもそうですが、芸術とデザインを分離させ、グリットデザインを生み出したりデザインを知識としてまとめたり
進めてきた先人達の経験やその作品の緻密さからくる美しさなど、デザイナーを志す人間であれば必ず感じる感覚というのが細部へのこだわりです。
また、デザイン学習を繰り返し失敗や後悔を繰り返すことで細かな部分の差異に敏感になり、こだわりを持つようになります。

プロとアマチュアを隔てるものの一つがこのこだわりといってもいいかもしれません。
それだけデザイナーにとっては重要な心がけであり技術です。

ただ、このこだわりってそのままWEBに当てはめていいのでしょうか?
そんなことを考えていきます。

WEBってそもそも変化する前提
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(1) 紙や雑誌・本と違いWEBサービスって入稿とかテスト出力・色校正ってないよね

そうです。WEBサービスにおいてデザイナーの仕事の終わりってないんです。
紙媒体のものであれば、それが10年20年残るとかってあり得ると思いますし、そういうアプローチの仕方もあるかと思いますが
WEBサイトがそのまま10年残るってことはまずないかと思います。(残ってたら絶対古いサイトだなーって感じるはず)

サービスのロゴについてはまた別の話です。ロゴについては媒体関係なくロゴデザインの歴史やセオリーがありますし、
ここでの「1pxの差異」へのこだわりについてデザインの知識や教養のない人がとやかく言う理由も必要もありません。
ただ、完成品がダサかったりトンチンカンなものを出してきたらガンガン意見してください。

(2) 参考としてLean UXとは

では、WEBサービスのデザインの流れってどうなのかと言うお話しですが
WEBサービスの特性を最大限に反映しているものとして「Lean UX」と言うユーザライクなデザインアプローチを参考にお話します。

「Lean」とは贅肉を削ぐ・削いだ状態を指します。無駄のないという意味でも使われるようです。
ここではデザインアプローチの参考としてあげさせていただきますので、細かな説明などは省きますが
Lean UXとは長期のWEBサービス開発においてデザインプロセスを短縮することで、迅速にフィードバックを得たり市場の変化に迅速に対応しリリースを繰り返す試みのことを言います。
Lean UXにおいて最重要なのは

・最初から完璧なものを求めない
・ユーザからの頻繁なフィードバックとその改善を迅速に行う

になります。

要は最初から完璧な製品を求めるのではなく、
最低限度実用に耐えられる製品をできるだけ早い段階でリリースし、市場からのフィードバックを得るという考え方です。

この辺りが紙や出版物とは全く異なります。

Lean UXについて詳しい内容について興味のある方はお調べになってください。

(3) 実際にWEBサービスリリース直後にユーザのフィードバックに「1pxの差異」があるか?

この時点で、ユーザのフィードバックに1pxの差異について書かれることはまずないかと思います。
もっと大きな使いずらさについて書かれることが多いでしょうし、それを優先すべきです。
それは全体のデザインについてかもしれませんし、画面遷移やボタンがわかりずらいなど
もっと粒度の大きな視点からくる不満です。
ですのでUI/UXの改善の優先度としてはそこが最重要課題になります。
後々変更されるかもしれない箇所に「1pxの差異」へのこだわりを持ち込んでも作業が遅くなるだけですし、迅速に改善を行うという前提から逸れていきます。

ですので、1pxの差異にこだわる時間はこの時点では存在しません。

(4) 「1pxの差異」へのこだわりは必要ないのか


サービスの成長期において、「1pxへの差異」へのこだわりに割く時間はないと書きましたが
であれば「1pxの差異」へのこだわりはWEBサービス開発に必要ないのか?について書いていきます。

まず「1pxの差異」へのこだわりをなぜデザイナーが持つかはすでに書いておりますが、
そもそも「1pxの差異」へのこだわりというものがどんな力を持っているのかをここで説明させていただきます。

まず「1pxへのこだわり」は一般のユーザにその違いを見ただけではわかりにくいものです。

例えば「BICフリント式ライター(約100円)」は何の変哲も無いただのライターです。別に珍しい機能も目新しい見た目もしていません。
このライターを持ったり見たりしただけでこれはすごく良いものだと思う人も少ないと思います。

ですが「BICフリント式ライター(約100円)」と「コンビニの100円ライター」を並べて使って比べた場合
大半の方が「BICのライター」の方が良いものだと答えるはずです。
その理由として、「BICフリント式ライター(100円)」は40年以上の歴史がありトップブランドとして誇りやこだわりを持ってライターを販売しており、
ライターに求められる最低限の機能(他のライターと同様で特に便利な機能がある訳でもない)を極めて真面目に追求しているからです。
要は「細部へのこだわり」です。
疑われる方は実際に比べてみてください。

ということは、「細部へのこだわり」というものは他の何か似たものと相対的に見比べた場合にその効果を発揮するものだと思われます。
なんとなく「かっこいい」「かわいい」「使いやすい」というすぐには説明が難しい「優劣」はこういった細部の差異によるものがその評価に繋がっています。

(4) 「1pxの差異」へのこだわりが最大限に効果を発揮するステージを考える


これをサービスに置き換えた場合、相対的に比べる対象は「類似・競合サービス」になります。

ユーザが他の「類似・競合サービス」と比較し意思決定を行うステージは
サービスの機能やユーザ数が安定する「安定期」そして、類似・他サービスから新規顧客を吸収し「再成長」を狙うステージになるのではないでしょうか。

「安定期」であるためチームとして優先度の高い作業が多くは存在せず、他に「再成長」を狙う施策がない場合、
デザイナーが先人たちから受け継いだ「細部へのこだわり」すなわち「1pxへの差異」へのこだわりが最大限に効果を発揮するチャンスなのではと私は考えております。

ですので、
このタイミングでデザイナーは「1pxの差異」へのこだわりを遺憾なく発揮し
エンジニアの皆さんもそのこだわりに乗ってみてはいかがでしょうか?

まとめ


早足で「1pxへのこだわり」について書かせていただきましたが、この記事を書かせてもらう背景として
昨今デザイン職以外の方が見るデザイナーについての記事で「1pxへ異常なこだわりがある」などちょっとネガティブな評価を見る機会が多くあり、
なんかデザイナーが偏屈そうに見えるなーと感じたので、なぜそんなこだわりを持ってるのかを書こうとしたのですが、
実際にただ自分のこだわりでチームの生産性を度外視で支持をだす人もいたりするので、
私なりに「1pxへのこだわり」の使い所と重要性を考察し書かせていただきました。

何かの参考になれば幸いです。

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