個人開発の「失敗の本質」-自戒の念を込めて


はじめまして。個人でWebサービスの開発をしているさとうたです。

この記事は「個人開発の『失敗の本質』」と題して、僕が2ヶ月ほど前にリリースしたサービスが見事にスベった経験をもとに、それを反省して、個人開発で既に成功されている先人達の数々のエントリーを読み漁り、「自分の何が悪かったのか?」「何を改善すればいいのか?」を徹底的に洗い出してまとめてみたものです。

筆者プロフィール

開発歴は約4年。今ままでリリースしたサービスは4つ。最大アクセスは月1.5万程度。「失敗の本質」は未読。

絶賛爆死中のサービス

カムナビ-地図の上に好きな書き込みを残して、場所に関する様々な情報を共有する地図サービス。
要は、Googleマップにインスタみたいな投稿をするサービスです。
個人的には上手く作れた思い想い入れもあるサービスなので、未だに失敗なんて認めたくないものなのですが……リリースしてはや2ヶ月、身内以外の新規ユーザー獲得は、未だに0人……。
これはもう、素直に敗北を認めるしかないようですね…。
後の話にも関係してくるのですが、なにより自分自身が「これ以上活気の無いサービスと向き合うのが辛い」と思ってしまっていることが、敗北を宣言しているようなものなのです…。
しかし、くよくよしていたって始まりません!
さっそくこのカムナビという屍(サービス)をもとに、検死解剖(検証)をおこなって死因(改善案)を炙り出していこうじゃありませんか!
なお、今回の記事では技術的な側面については一切触れていません。精神論的な話が多めです。あしからず。

失敗の本質①アイディアドリブンの企画

自分が思い付いたアイディアを自分の好きなように形にできる、これは間違いなく個人開発をする上で最大かつ最高のメリットの一つでしょう。
しかし、そこに罠が潜んでいたのです。
確かにアイディアは必要だしどんどん出すべきなのですが、重要なのはその量でも質でもなくアイディアそのものの評価方法なのです。
自分の好きなことができる個人開発をしていると、どうしても「ワクワクする」アイディアに心惹かれてしまいがちです。
しかし、たとえ世界で自分一人しか思い付いていない前人未到・前代未聞のアイディアを持っていたとしても、それが「サービス」である限りは誰かの問題を解決するものでなくてはなりません。
「斬新かつユニークなアイディア」というのはそのまま「誰も思いつかないほど関心が低いアイディア」と言い換えることも可能です。
サービスというのは本質的に誰かの・何かの問題を解決するためのもの。世の中の誰も関心がない問題を解決したとしても、それでヒットは見込めませんよね?
なので、閃いた当初は熱に浮かれたアイディアであっても、まずは一旦冷静になって、そのアイディアがいったいどんな問題を解決しているか、その問題を解決したいと思っている人がいったいどの程度の規模でいるのか、しっかりじっくり評価検討することを必須のこととしましょう。

失敗の本質②ユーザーの顔が見えていない

前項と通ずる部分が多いのですが、よくある失敗が「とりあえず自分が欲しいモノを作ってみる」というものです。
それ自体が悪いわけではないのですが、そこにもやはり「どれくらいの利用者が見込めるか?」や「その利用者はどんな人達か?」などの検証が必要です。
ある程度利用者が見込めそうな企画を思い付いた、それだけで見切り発車してしまうのは早計です。
想定しているユーザーがどんなことを望んでいるのか、どんなモノを好んで使っているのか、類似サービスをしっかり調査してちゃんと把握する必要があります。
これを行うことによってその分野で「既にある程度解決済みの課題」と「まだ解決不十分な課題」の両方が見えてきます。
隣接サービスの良い点を徹底的にトレースしつつ、その上で自分なりの課題解決策を提示できる、そんな企画を練りましょう。

失敗の本質③システム至上主義

これも開発者なら共感必須かと思われますが、我々はどーーしてもシステム先行でものを考えてしまいがちです。
こんな仕組みがあったら面白いなあ(ワクワク)
こんな機能を付けたらどうなるだろう(ドキドキ)
しかし、ユーザー様はシステムになんぞクソほど興味がありません。システムなんか単純で簡単でわかりやすければなんだっていい、過不足なく不具合なく動いてくれればそれでいい、ていうかそれが出来てなきゃ失格、欠陥品なんです。(いや、言い過ぎかもしれませが「それぐらいの心持ちでいよう」ということです)
ユーザー様がサービスやアプリを利用してまず目に触れるのは「コンテンツ」です。コンテンツ無きサービスなんぞクソです。(自分の敗因がここにあると自覚しているので語気強めです)
コンテンツで価値提供できていないサービスになんか誰も寄り付きません。
それはたとえリリース当初の時期で「まだ開設したばっかりだからコンテンツが不足してるのはご愛嬌よ」と愛想振りまいたとしても同じです。
何度も言います。コンテンツによる価値提供をできていないサービスなんかにユーザーは寄り付きません。
ではどうすればよいか?
初めからコンテンツが見込める企画を考えましょう。
例えば、APIで引っ張ってきたデータを加工して載せるとか、無料コンテンツのまとめを作るとか。
もしくはツール系の企画で攻めましょう。
ツール系であればシステムそのものが価値提供に繋がるので、たとえ放置していたとしてもそこにニーズがあり機能がマッチしていれば利用者は自ずと増えます。
気を付けるべきは「ユーザー投稿型のサービスは難易度が高い」ということ。
なぜなら、リリース当初は自分一人でコンテンツを作り、営業とマーケティングも行い、その上サービスのメンテナンスも賄わわなければならないので、個人開発では正直無理ゲーです。
個人開発であるということを意識して、それに見合った企画を精査しましょう。

失敗の本質④金は後からついてくる

「金は後からついてくる」なんてよく言いますが、その言葉を鵜呑みにして思考停止してはいけません。
「金は後からついてくる」というのはつまり打算です。その打算もできていないのにマネタイズのことを後回しにしていたら、いつまで経っても収益化できません。
サービスそのものでマネタイズする方法は大きく分けると「広告」か「課金」の二つです。
広告は「クリック広告」「アフィリエイト」「スポンサー」に分けられます。
いずれにせよ、それなりの収益にするにはかなりのアクセス数が必要です。
課金は「販売」や「月額課金」や「手数料」などが挙げられます。
アクセス数に限らずニッチな層に深く刺さればまあまあの収益をなるんじゃないでしょうか。
どういった形にするかはその企画次第としかいいようがありません。
重要なのは企画段階でちゃんとマネタイズの方法を決められているかどうかです。

失敗の本質⑤職人気質、否、職人気取り

個人開発である以上どうしても「開発」にばかりその労力をかたむけがちです。
もちろんいいモノを作るために開発に注力することが悪いわけではないのですが、我々はあくまでも「個人」の開発者です。開発にばかり時間を割いていてはサービス提供にまつわるそのほかの側面、特に「営業」や「マーケティング」がどうしたっておざなりになります。
「ただひたすらにいいモノを作りそれを世に出せば後は自然とお客さんが集まってくる」
そんな都合のいい話はありませんよね。
個人開発をするからには「作る」ことと同等に、いや、それ以上に「届ける」作業に力を傾けなくてはなりません。
ただ純粋に作ることが好きな職人さんのままでは、いつまで経っても使われるサービスにはなりません。
では、集客の方法といって具体的に何をしたらよいか。これもやはり企画段階でしっかり考えておく必要があります。
良い企画が出来た、と思ったらまずは不特定多数の誰かにその企画をぶつけてみましょう。
不特定多数の誰かにぶつけるためにはまず、それが出来る状態にある必要があります。それは例えばTwitterのフォロワーでもいいですし、特定のコミュニティに所属するでも構いません。
重要なのはその企画に一定の需要があるかどうかを測ると同時に「こんなモノを作ろうとしているよ!」と周囲に自分とその企画を認知してもらうことです。
そうすることによってサービスの宣伝にもなりますし、企画の善し悪しを図る機会にも恵まれます。多くの賛同者がいればモチベーションも上がり生産性の向上に繋がるかもしれません。
なにより重要なのが、リリース当初にして既にユーザーが見込めるようになること。それによってリリースはゴールではなくスタートラインに立っただけなのだ、と身をもって体験することができます。
もちろんこの方法は「アイディアがパクられるんじゃないか」という不安が付きまといます。しかし、考えてみてください。サービスもアプリもすでに市場はレッドオーシャンです。生き馬の目を抜くような熾烈な生存競走のなか、すぐにパクられて一瞬でプライオリティがなくなってしまうような企画になんの価値があるでしょう?そんな企画なら初めから捨ててしまった方がマシです。むしろ開発にかかる手間を省けて得した思いましょう。
企画の問題設定がより本質的で、その解決方法が他を優位しているのなら、その企画はそうやすやすと真似できるようなものではないはずですし、真似されたとしても優位性を保てているはずです。なおかつ、その企画の完成を今か今かと待ち構えてくれている見込みユーザーがいるのなら、もう言うことはないでしょう。

失敗の本質⑥裏方でござい

これも前項と重なる部分があるのですが、モノを作ることが好きな人は往々にして自分が矢面に立つことを避ける傾向にあると思います。
あくまでも提供すべきはサービスなのであって自分ではない、その気持ちもわかるし確かにその通りなのですが、何度も言うように我々はあくまでも「個人」の開発者です。サービスの宣伝も自分ですれば、そのマスコットキャラクターも自分自身が引き受けなくてはならないのです。
企業が提供するサービスによくあるような公式のアカウントを作り、自分の個性というものを裏の方に引っ込めてしまうのは、個人開発ならではの強みをみすみすドブに捨ててるようなもの。
個人開発は「個人」であるがゆえの様々なハンデもあると思いますが、同時にそれは最大の強みでもあるのです。
提供するサービスと開発者が不可分な存在であればこそユーザーとの親密な関係を築けますし、開発者のキャラクターに共感すればこそ提供するサービスを使ってみようと思う人も増えるのです。
個人での開発において個性を押隠すことなど到底できません。であるならば、その個性を全面に打ち出してどんどん武器にしていくべきです。
例えば、開発に至る背景やその想い、問題意識などは、開発に乗り出す当初からどんどんアウトプットしていくべきです。
また、開発途中であっても「何に苦戦していて」「何に取り組み」「どう乗り越えたか」などそのプロセスを次々に共有していきましょう。
それは前項でも書いたように「自分はこんなことをやっているんだ」と周知してもらうことでサービスの宣伝にもつながりますし、それによって見込みユーザーを確保し、モチベーションと生産性を上げて成功確率を高めることにもつながるでしょう。

おわりに

さんざん偉そうに書いてきましたが、この記事はあくまでも個人開発に失敗してきた僕がその失敗を反省し、既に成果を上げている先人達の成功例を読み込み、彼らの人格を自らに憑依させることによって得た気付きをまとめたものに過ぎません。なので実践による検証もできてなく間違っているところも多々あると思いますし、まだまだ自分には見えていない領域も広くあると思います。しかし、こうしてまとめることで思考の整理にもなり、今後自分が個人開発をしていく上での指針にもなりました。今回はこれが僕と同じような悩みを抱えている個人開発者さんの一助になればと思い共有させていただいた次第です。
末筆ですが、皆様の個人開発のご健闘を祈って。
ご一読ありがとうございました。

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