詳解 Nunjucks − Mozilla 謹製テンプレートエンジン


はじめに

Nunjucks(ナンジャックス)とは、ブロック継承、オートエスケープ、マクロ、非同期制御 などを備えた Mozilla 謹製 のテンプレートエンジン である。Python のテンプレートエンジンである Jinja(ジンジャ)に影響を受けている。有名かつ人気のあるテンプレートエンジンは、以下の通りである。

  • Pug(インデント構文)
  • EJS(HTML ベースの構文)

Nunjucks は EJS と同じ HTML ベースの構文 であり EJS より 強力な言語(筆者の主観)である。なお、サンプルコードは GitHub に公開している。

基本情報

拡張子は .njk である。エディタの言語サポート用プラグインは公式ドキュメントでいくつか紹介されている。変数の参照は、マスタッシュ記法 {{}} でおこなう。

開発環境の解説

gulp-nunjucks-render で HTML にコンパイルする。gulp-nunjucks-render は、標準でデータの参照渡しを搭載しているが、ファイルの現在位置を返す API を利用するため gulp-data を併用する。なお、gulp のバージョンは 3.9.1 で進めていく。

gulpfile.js
const gulp = require('gulp');
const nunjucksRender = require('gulp-nunjucks-render');
const data = require('gulp-data');

各オプションの解説
ルートパスの指定やデータ参照を標準搭載している。ルートパスの指定は、ルート相対パスでファイル参照できるため、階層の異なるテンプレートファイルに便利 である。データの参照は、メタ情報を JSON で管理する際に便利 である。

  • path:ルートパスの指定
  • data:データの参照
  • envOptions:Nunjucks の標準機能の変更
gulpfile.js
// 一部抜粋
.pipe(nunjucksRender({
  path: ['htdocs/_nunjucks/'],
  data: sitedata,
  envOptions: {
    autoescape: false
  }
}))

envOptions: { autoescape: false } は三項演算子を利用する上で便宜的に特殊文字のエスケープを回避している。envOptions の詳細は公式ドキュメントを参照ください。

const getDataForFile = file => {
  sitedata.path.relative = file.relative.replace(/\.njk/, '\.html').replace(/index\.html/, '');
  sitedata.path.absolute = sitedata.path.domain + sitedata.path.relative;
  return sitedata;
};

getDataForFile 関数は、gulp-data で絶対パスを返す関数である。メタ情報の URL の自動入力に便利である。sitedata は任意の JSON ファイルである。

独自記法の解説

Nunjucks は、タグの記法が特殊なため直感的に書き辛いケースがある。運用する上で迷いがちなケースをいくつか紹介する。詳しくは公式ドキュメントを参照ください。

変数の宣言
{% set %} で変数を宣言する。

{% set username = "joe" %}

独自タグとマスタッシュ記法の競合を避ける
他言語のマスタッシュ記法として使用する場合、 {% raw %} を使用する。

input
<div>{% raw %}{{ message }}{% endraw %}</div>
output
<div>{{ message }}</div>

三項演算子
JavaScript の三項演算子と同様に if をインライン式で使用できる。

{{ "true" if foo else "false" }}

JavaScript の三項演算子とは異なり、else はオプションである。

{{ "true" if foo }}

関数の宣言
関数は、{% macro %} で宣言する。引数にはデフォルトを指定することができ、デフォルト引数は順不同で指定できる。詳細は公式ドキュメントを参照ください。

input
<!-- 関数の宣言 -->
{% macro field(name, value, type='text') %}
<input type="{{ type }}" name="{{ name }}" value="{{ value }}">
{% endmacro %}

<!-- 関数の呼び出し -->
{{ field('user', 'pass') }}
{{ field('user', type='password', 'pass') }}
output
<input type="text" name="user" value="pass">
<input type="password" name="user" value="pass">

内蔵フィルター
Nunjucks は、フィルターを用意している。{% filter %}| のふたつの構文が用意されている。詳細は公式ドキュメントを参照ください。

フィルター
<div>{{ 'Xmas' | replace('Xmas', 'Christmas') }}</div>

Nunjucks で正規表現を使用する場合、正規表現リテラル // の接頭辞に r が必要である。詳細は公式ドキュメントを参照ください。

正規表現
<div>{{ 'Xmas'.replace(r/xmas/i, 'Christmas') }}</div>

運用パターン

他のテンプレートエンジンで利用される運用パターンを Nunjucks に 置き換えたパターン独自の運用パターン をいくつか紹介する。サンプルコードにある {%--%} 1 は不要な空白を制御する記述である。

ストラクチャのインクルード

include で別ファイルを読み込むことができる。以下、パンくずリストを例に運用パターンを説明する。なお、サンプルコードは MicrodataWAI-ARIA を一部使用している。

index.njk
{%- set breadcrumbs = [{item: '第二階層', href: '/example.html'}, {item: '第三階層'}]-%}
{%- include '_breadcrumb.njk' %}

インクルード先の _breadcrumb.njk に変数を渡すため、インクルード元 index.njk で変数 breadcrumbs を定義する。

_breadcrumb.njk
<nav aria-label="breadcrumb">
  <ol itemscope itemtype="http://schema.org/BreadcrumbList">
    <li itemprop="itemListElement" itemscope itemtype="http://schema.org/ListItem">
      <a href="/" itemprop="item">
        <span itemprop="name">HOME</span>
      </a>
      <meta itemprop="position" content="1" />
    </li>
    {%- for breadcrumb in breadcrumbs %}
    <li itemprop="itemListElement" itemscope itemtype="http://schema.org/ListItem"{{ ' aria-current="page"' if loop.last }}>
      {%- if loop.last %}
      <span itemprop="name">{{ breadcrumb.item }}</span>        
      <meta itemprop="position" content="{{ loop.index + 1 }}" />
      {%- else %}
      <a href="{{ breadcrumb.href }}" itemprop="item">
        <span itemprop="name">{{ breadcrumb.item }}</span>
      </a>
      <meta itemprop="position" content="{{ loop.index + 1 }}" />
      {%- endif %}
    </li>
    {%- endfor %}
  </ol>
</nav>

インクルード先の _breadcrumb.njk では、for 文if 文 ならびに 三項演算子 を使用している。for 文で変数 breadcrumbs に定義した配列をまわし、if 文と三項演算子で最後の反復に対する条件分岐をおこなう。for 文の反復処理内では、特殊変数 loop を利用できる。loop.last は、最後の反復処理を示すブール値を返す。loop.index は反復処理の現在のカウンタ(1 始まり)を返す。loop の詳細は公式ドキュメントを参照ください。生成された HTML は以下の通りである。

index.html
<nav aria-label="breadcrumb">
  <ol itemscope itemtype="http://schema.org/BreadcrumbList">
    <li itemprop="itemListElement" itemscope itemtype="http://schema.org/ListItem">
      <a href="/" itemprop="item">
        <span itemprop="name">HOME</span>
      </a>
      <meta itemprop="position" content="1" />
    </li>
    <li itemprop="itemListElement" itemscope itemtype="http://schema.org/ListItem">
      <a href="/example.html" itemprop="item">
        <span itemprop="name">第二階層</span>
      </a>
      <meta itemprop="position" content="2" />
    </li>
    <li itemprop="itemListElement" itemscope itemtype="http://schema.org/ListItem" aria-current="page">
      <span itemprop="name">第三階層</span>        
      <meta itemprop="position" content="3" />
    </li>
  </ol>
</nav>

テンプレート継承

テンプレート継承は、テンプレートの再利用を容易にする。 extends でテンプレートを継承し、テンプレート内にオーバーライドできる block を定義する。また、サブタイプ 2(子テンプレート)の block 内で super を呼ぶことでスーパータイプ 2(親テンプレート)を出力できる。

_base.njk
<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
{% include '_meta.njk' %}
{% block css -%}
<link rel="stylesheet" href="/css/main.css">
{%- endblock %}
</head>
<body>
{% block content %}
{% endblock %}
{% block js -%}
<script src="https://ajax.googleapis.com/ajax/libs/jquery/3.3.1/jquery.min.js"></script>
{%- endblock %}
</body>
</html>

テンプレートの _base.njk には、共通で読み込む CSS, JS を記述し、個別ページで読み込む CSS, JS は block で定義する。メタ情報は include で読み込ませ、個別ページの識別子を渡すことで各ページのメタ情報が出力される。

index.njk
{% extends "_base.njk" %}
{%- set pagename = top -%}

{% block css -%}
{{ super() }}
<link rel="stylesheet" href="/css/top.css">
{%- endblock %}

{% block content -%}
<main></main>
{%- endblock %}

{% block js -%}
{{ super() }}
<script src="/js/top.js"></script>
{%- endblock %}

extends_base.njk 継承する。変数 pagename は、個別ページの識別子である。block 内の super() は、_base.njk にある main.css, jquery.min.js を出力する。

_meta.njk
<!-- 一部抜粋 -->
<title>{{ pagename.title }}</title>
<meta name="description" content="{{ pagename.description }}">
<meta name="viewport" content="width=device-width, initial-scale=1">
<meta name="format-detection" content="telephone=no">
<meta property="og:title" content="{{ pagename.title }}">
<meta property="og:description" content="{{ pagename.description }}">
<meta property="og:type" content="{{ 'website' if pagename === top else 'article' }}">
<meta property="og:url" content="{{ path.absolute }}">
<meta property="og:image" content="{{ pagename.ogimage }}">

メタ情報は JSON で管理し、gulp で読み込ませる。og:type は三項演算子で websitearticle に分岐させ、og:urlpath.absolute は、絶対パスを出力するよう設定する。

共通モジュールの再利用

共通モジュールは、再利用可能なマクロに定義する。定義したマクロは import でアクセスできる。エクスポートされたマクロは変数にバインドされる。picture 要素のレスポンシブイメージを例に説明する。

_macro.njk
{% macro picture(src, alt='', className='', media='min-width: 768px') -%}
<picture{{ ' class="' + className + '"' if className }}>
  <source srcset="{{ src | replace('_sm.', '_lg.') }}" media="({{ media }})">
  <img src="{{ src }}" alt="{{ alt }}">
</picture>
{%- endmacro %}

alt, className, media は、順不同に対応できるデフォルト引数で定義する。srcset はフィルターで最適な画像名に置換する。

index.njk
{%- import '_macro.njk' as macro -%}
{{ macro.picture('example_sm.jpg', media='min-width: 640px') }}

import は、任意の名前空間からバインドされたマクロにアクセスできる。出力された HTML は以下の通りである。

index.html
<picture>
  <source srcset="example_lg.jpg" media="(min-width: 640px)">
  <img src="example_sm.jpg" alt="">
</picture>

まとめ

Nunjucks は、EJS と同じ HTML ベースの構文テンプレート継承 を標準搭載する強力な言語である。Mozilla 謹製 の信頼性と現在(2018/12/20 執筆時点)も開発がおこなわれているため、新たなテンプレートエンジンの切り替え、または技術選定の候補として挙げてみるのはいかがだろう。


  1. {%--%}- とは、テンプレートエンジンは変数宣言やタグブロックを空白としてそのまま出力するため、生成された HTML に不要な空白が含まれる。この不要な空白を制御するため {%--%} を使用する。詳しくは公式ドキュメントを参照ください。 

  2. スーパータイプとサブタイプは、オブジェクト指向における基底クラス/派生クラスに該当する。