刷れる入稿データを作るときのポイント


はじめに

この記事は自分の覚書の意味合いが強いです。正直この記事だけで「きれいなデザインを作って、印刷する」というのは厳しいかもしれません。記事の最後のほうに参考書籍を挙げておいたのでそちらもご覧ください。

筆者はフリーランスでデザイナーの仕事をしていたこともあり、こういう知識が必要だったのですが、最近はPDF入稿などが当たり前となって一般の人でも入稿作業をするようになりました。そういったときにもきっと役立つフローだと思っています。

なおPDF入稿の場合には透明効果を保持できるPDF/X-4と、保持できないPDF/X-1aが存在します。必ずデータを書き出す前に印刷会社に指定のフォーマットを確認してください。印刷会社側では誤ったPDFを入稿されてもオペレータの方が編集できず突き返されてしまいます。

データフォーマットの調整

仕上がり色を決める

4Cで行くのか、1Cで行くのか、特色を使うのか決めましょう。いずれにせよカラーモードはCMYKを設定します。

多くの人はAdobe製品を使っていると思いますが、その場合にはBridgeなどを使用して「カラー設定」を共通化します。このあたりの設定がPhotoshopやIllustratorの間でちぐはぐだとCMYK分解など結果に影響します。

黒の設定

この辺りがWordやPowerpointなどのオフィス製品にはまったくない概念なので最初つまづきますが、商用印刷にはリッチブラック・オーバープリントとよばれる「赤の上に重ねた黒」とか「写真の上に重ねた黒タイトル」といった表現が存在します。その設定をするのがIndesignであれば「環境設定」→「黒の表示方法」です。スクリーンでの見た目とテスト印刷の見た目両方設定しておきましょう。

仕上がりサイズを決める

ページのサイズを決めましょう。A4の出版物で210mm×297mmだと安易に決めつけず、きちんと確認します。だいたい変形のことが多いので数十ミリずれてます。Aiを使っている場合には裁ち落とし(ドブ)の分は見込まずアートボードサイズを作ります。またタトウなどにする場合には必ず印刷会社の指定のフォーマットを先にもらってそれにあわせるようにします。

アウトラインの作成

入稿前にはアウトラインを取るというのは常識だと思いますが、実はPDF入稿の場合にはフォントがエンベッドされているのでアウトラインを取る必要がありません。ただし埋め込み禁止になっているフォントもあることにはあるので注意しましょう。

データの作成

ヘアラインの禁止

インク濃度が100%を切る場合に0.1mm以下の線を描こうとするとかすれます。この現象はプリンタで最小線幅に変換されてしまうため校正紙で確認が取れないことが多いです。注意しましょう。

インク総量の注意

インクの総量の目安は320から350%程度が上限値となります。それ以上は印刷トラブルとなりやすいので注意します。

特色の扱い

特色はスウォッチを作成する際に決まります。スポットカラーを利用する場合は新規スウォッチの設定でカラータイプ「特色」を選ぶようにしましょう。PANTONEやDICなどのインキメーカーの特色はカラーブックがAiの中に入っているのでそれを使うと確実です。ただし当然ですが仕上がりの色は自分の目で確認すること。特色は特に画面上で似ている色味でも異なる仕上がりになりやすいので注意が必要です。

オーバープリント

なかなか無い or 近年はオペレータの方がきちんと修正してくれるのであまり気にしなくても想像通りの仕上がりになっているかもしれませんがオーバープリントの設定には注意が必要です。例えば配置した写真の不要な部分に対して黒いオブジェクトを配置してトリミングしたつもりでも実際にはオーバープリントでリッチブラックとなってしまい間抜けなレイアウトになってしまうこともあります。そのためヌキする必要がある部分にはよく注意しましょう。

ブレンドモードのエラー

ブレンドのモードは乗算以外使わないほうがいいです。必要なものはPs側で処理をFixしてからレイアウトに載せたほうが事故が少なくてすみます。

データ入稿するときのマナーとして。。

運が良ければこのようなことをしなくてもきれいに刷ってくれるかもしれませんが、これくらいはちゃんとしておいたほうがゲラのやり取りも少なくて済みます。

必ず出力見本を添付する

必ず自分の想定している見栄えが相手と正しく共有できるように出力見本を添付して入稿するようにします。ただし一般のプリンタでは色の指定はもちろんできないのであくま図柄の確認にしか使えません。

不要なオブジェクトはすべて消す

いらないスウォッチや、オブジェクト・レイヤなどは極力削除したプレーンなファイルを入稿します。

画像は埋め込まず、パッケージ機能を使って確実に入稿

ひと昔前であればファイルに外部ファイルは埋め込んで入稿、すると1つのファイルが何ギガにもなるので業者さんに御社でどれくらいのファイルまで触ったことあります??なんて聞いてましたが最近のRIPはリンクファイルでも刷れるので埋め込みの必要がありません。
パッケージ機能でリンクファイルを自動収集して確実に入稿してください。

IllustratorのオブジェクトをコピペでIndesignに持ってこない

これが一番ずっこけ率が高い気がします。この2つのソフトの間で画面上ではオブジェクトをシームレスに移動できたように見えますが、内部的にはオブジェクトパスの形式が異なるため、再編集が制限されます。そのためIllustratorのファイルは「配置」を使ってデザイニングするように配慮します。

プリフライトで最終確認を。

どれだけ慎重にデータを作っても失敗はつきもの。プリフライト機能で確認しましょう。

参考書籍

エディトリアルデザインする上で役に立ちそうなものを少しだけ。。
(随時更新の予定です)

  • 『日本語組版入門: その構造とアルゴリズム』向井 裕一著:比較的中級者向け。組版について学問として体系だって展開されます。特にどんな字詰めや禁則処理がどのような印象を与えるのか例を示しながら紹介している部分は組版の重要性を改めて考えさせられます。巻末にはIndesignの設定もついているので例で学んだことを実際に自分でも再現できるところがいいですね。
  • 『Typographic Systems―美しい文字レイアウト、8つのシステム 』Kimberly Elam著:学生たちの作品を通してドラフトとなるサムネイルからタイポグラフィとその配置をどう構成していくかを学ぶことができます。デザイン初心者向け。グリッドが印刷されたトレーシングペーパーを重ねることでどういうレイアウトを構成しているのかを論理立てて学ぶことができます。