AppleのATTのせいでソーシャルメディア企業に1兆円の損害が出た件


以下はApp Tracking Transparency has hit social media for $10 billion in lost revenue so farという記事のざっくり紹介です。

App Tracking Transparency has hit social media for $10 billion in lost revenue so far

Appleによるプライバシー保護の推進はソーシャルメディア企業に多大なダメージを与えています。
iOSのApp Tracking Transparency機能の影響により、Facebook、Twitter、Snap、YouTubeの広告収入は、2021年下半期には100億ドル近く減少する見込みです。

2021年4月に導入されたApp Tracking Transparencyは、オンラインでの追跡を許可するか、もしくはプライバシーを守るかをユーザが選択できる機能です。
半年経ったいま、このATTは大手ソーシャルメディアの収入に大きな影響を与えています。

広告テクノロジー企業であるLotameがFinancial Timesに語ったところによると、Facebook、Twitter、Snap、YouTubeの第三・第四四半期の広告収入は98億5000万ドルの減収になるということです。

4社のうち、Facebookが最も広告規模が大きいため被害も大きく、その損失は80億ドルを超える模様です。
またSnapはスマートフォンに注力しているため、割合として最も落ち込むことになりました。

収入の減少は、ATT導入直後の調査からずっと引き続いています。
7月にはiOSの広告の収益が15から20%減少したと伝えられています。

LotameのCOOであるMike Woosleyによると、広告主はiPhoneに広告を出してもほとんど成果が上がらないと感じており、その理由はほとんどのユーザがトラッキングを拒否しているからです。
例として男性向け下着ブランドを挙げると、これまでは5ドルで1000人の男性向けに広告を出し、一人の顧客を獲得していました。
「今後は1000人の男性に広告を見せるには、2000人に広告を出さなければなりません。誰が男性で誰が女性かわからなくなったからです。」
結果として、「広告コストは2倍になり、収率は半分になりました。」

トラッキングができなくなったため、企業は新たな広告システムを作り出さなければならなくなりました。
広告コンサルタントであるEric Seufertによると、新たなツールやフレームワークの開発には一年はかかるということです。
「新しいツールは、一般公開するまえに徹底的にテストする必要があります。」

FacebookのCFOであるDavid Wehnerは、ATTを「難題」「予想より少しだけ乱暴だ」と評しました。

Alphabetは自分だけで十分な個人情報を握っているため、ATTの影響をほとんど受けません。

いっぽうAppleは広告業績が改善され、前四半期の収益は183億ドルに成長しました。
この事実をもって、Appleの偽善を指摘する声もあります。

BlueConicのCOOであるCory Munchbachは「これは決して利他的な理由ではない。」と主張しています。
「Appleはプライバシーを広めるという良い仕事をしましたが、しかしお金にならなければこんなことはしないでしょう。」

コメント欄

「今日見た中で一番良いニュースだった。」
「タイトル間違ってる。正しくは『Appleのおかげで人々は無駄な出費を100億ドル節約できた』。」
「その『損失』が指数的に増加しますように。」
「収益の減少は単に収益の減少であり、損失ではない。」
「最初からトラッキングなんてするべきではなかった。」
「世界的にマイナーなOSのわりに相当な影響力がありますね。いずれAppleを刺す長ナイフが出てくるに違いない。」
「🥂🍾」

感想

この大変なご時世の中、久しぶりの明るいニュースですね。

とはいえFacebookの収入は四半期で300億ドルとかで、むしろここ数年増加し続けていたくらいなので、この程度ではかすり傷にしか過ぎません。

そこでATTのようなプライバシー保護をGoogleにも求めたいところなわけですが、Googleはむしろどんどんプライバシーを流出させろという姿勢なのでまあ絶望的ですね。