2020年にOSS界隈で話題になったニュース10選~日立社内SNSより~


この記事は、日立グループ OSS Advent Calendar 2020 の15日目の記事になります。

はじめに

こんにちは。日立グループの社内SNSで「OSS全般情報共有部屋」というグループを運営している森下と申します。本業はOSS利活用グループという部門でOSS全般に関するお仕事をしています(2020年現在)。
今回は2020年の終わりということで、この1年OSS界隈で話題になった出来事を10選としてまとめてみました。せっかく社内SNSで情報共有しているしアウトプットしてみよう!というモチベーションで、グループにUPされた話題を基にして10個のニュースを選びました。有名な話題から、少しコアな内容まで幅広く選んでみたつもりです。最後の方には番外編もあります。
それではお楽しみください!

前提

  • 対象はOSS全般のニュースに限ります。
  • 個々のOSS内で盛り上がった話題ではなく、OSS界隈全体で盛り上がった話題が選択対象です。

補足事項

  • 本記事は「2019年にOSS界隈で話題になったニュース10選〜日立社内SNSより〜」の2020年版となります。過去記事もどうぞご覧ください。
  • 本記事で取り上げるニュース/出来事においては、法的な事案、および社会的な思想に関する内容を一部含みます。各内容を紹介することは、各当事者の立場を肯定および否定することを意図しておらず、あくまで多くの議論を呼んだ"事実(fact)"の紹介として取り上げておりますので、その点ご承知おきください。

それでは行ってみましょう〜!

[3月] 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイトがOSSで公開

<概要>
新型コロナウイルス感染症に対する活動として東京都が対策サイトをOSSとして公開。@hal_sk さんが代表を務めるCode for Japanに所属するエンジニアやデザイナーが中心となり、オープンソースで開発されました。本サイトは小池百合子都知事や宮坂学副知事(元ヤフー社長)がTwitterで紹介して拡散し、GitHub上では台湾のデジタル担当大臣・唐鳳(オードリー・タン)氏が参加するなど話題を呼びました。

[3月] GitHub、JavaScriptパッケージ管理のnpmを買収

<概要>
GitHubがJavaScriptのパッケージ管理システムであるnpmの買収しました。npmが管理するパッケージ数は業界最大規模であり、この巨大なエコシステムの買収はOSS界隈で大きな話題となりました。npmは将来的にGitHubに統合されていく予定だそうです。

[5月] 経産省がIMIコンポーネントツールをnpmモジュールとして公開

<概要>
法人の住所や電話番号の正規化に使えるIMIコンポーネントツールが経済産業省から公開されました。電子政府に向けた情報共有基盤の構築を円滑に進めるための取り組みの1つとして、npmモジュールという開発者が利用しやすい形式で公開され話題となりました。

[6月] BLM運動によるプログラミング用語見直しの動き

<概要>
米国ミネアポリス警察によってジョージ・フロイド氏が殺害された事件による世界的な反人種差別運動(いわゆるBLM/Black Lives Matter)はIT業界、OSS業界にも大きな影響を与えました。多くの米国大手IT企業やOSSコミュニティが本活動に賛同を表明し、「master/slave」「whitelist/blacklist」といった用語に変更が加えられました。

[6月] 接触確認アプリCOCOAのベースとなったOSS「Covid19Radar」で激論

<概要>
スマートフォンアプリ「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」のいくつかの不具合や問題について、ベースとなったOSS「Covid19Radar」に対して厳しい批判が相次ぎました。一方で、タイトなリリーススケジュールや直前のAPI仕様の変更、また委託体制への問題に対する指摘など、多方面から多くの意見が上がる出来事となりました。なお現在はCOCOAの実体となるソースコードがGitHubに公開されています

[7月] Google、OSSプロジェクトの商標を管理する団体「Open Usage Commons」を設立

<概要>
GoogleがOSSの商標管理組織「Open Usage Commons(OUC)」を立ち上げました。まずAngular、Istio、Gerritの商標が移管されています。OSSプロジェクトにおいてコードのライセンスはOSSライセンスで管理されますが、商標についてはこれとは別の形で保護されなければならず、これの管理を支援、提供する団体として本組織は設立されました。一方でベンダニュートラルでないなどの指摘もあり、多方面から議論を呼んでいます。

[8月] Linux Foundation、「Open Source Security Foundation」を設立

<概要>
Linux Foundationが設立した「Open Source Security Foundation(OpenSSF)」は、GitHub、Google、IBM、Microsoft、OWASP、Red Hatなどが参加する業界横断的な組織です。OSSのセキュリティを向上させることを目的としており、OSSセキュリティに関するメトリクスやツール、ベストプラクティスの提供などを中心に活動を行うようです。GitHubリポジトリではすでにいくつかのプロジェクトが活動を開始しています。

[8月] Docker Hub、イメージ保管やPull制限に関する規約を変更(申請済OSSプロジェクトは適用外に)

<概要>
Docker Hubのイメージにおける保管やPullについて規約が変更されました。対応が必要になった方々も多かったと思いますが、11月の発表によると本制限措置はOSSコミュニティから申請されたイメージについては適用外になるとのことです。本件は今後も情報が更新される可能性があるため、随時最新情報を参照いただくようお気をつけください。

[10月] Hacktoberfestでスパムにあたるプルリクエストが横行

<概要>
「Hacktoberfest」はDigitalOceanが毎年10月に開催しているイベントで、GitHubにプルリクエスを送るとTシャツが貰えるというキャンペーンです。今回は一部インフルエンサーの影響もあってかスパムにあたるプルリクエストが横行し、主催者は謝罪とルール変更を行いました。opt-in方式に変更されたことで今後は今回のような大きな事態にはならなそうです。

[10月] GitHub、YouTube動画ダウンロードのOSS「youtube-dl」のリポジトリを削除(その後復活)

<概要>
動画ダウンロードの人気OSS「youtube-dl」のリポジトリが全米レコード協会(RIAA)からの要請を受けて削除されたことに対して多くのデベロッパー、非営利団体から抗議の声が寄せられました。正当な目的で利用できるツールの削除であるとしてGitHubには厳しい声も上がっており、その動向が注目されていました。現在GitHubは一転してRIAAからの要請を不当なクレームだとし、該当のリポジトリを復活。また不当なクレームからデベロッパーを守るための100万ドルの保護基金の設立を発表しています。

番外編

他にもたくさんのOSS関係のニュースがありました。個人的に掲載したかったものを番外編としていくつか載せておきます。色々ありましたねぇ。

まとめ

皆さんが期待したOSSニュースはありましたでしょうか?
他にも、こんな出来事も盛り上がってたよ〜等ありましたらコメントいただけると嬉しいです。
それではまた、来年もOSS界隈の盛り上がりに期待しましょう!
#来年も多分書く!